元K-1戦士・平本蓮(ルーファスポーツ)は総合格闘家転向後、『RIZIN』のリングで2連敗。結果を残せずファイターとしての評価は芳しくない。それでも独自のキャラクター、歯に衣着せぬ大胆な発言で人気は絶大だ。

  • 人気先行の平本蓮が「覚醒の刻」を迎えるか? 7・2沖縄『RIZIN.36』鈴木博昭戦を占う─。

    RIZIN3戦目、平本蓮は得意の打撃でファンを魅了することができるのか?(写真:RIZIN FF)

そんな彼は7月2日、沖縄アリーナ『RIZIN.36』でMMA(総合格闘技)3戦目に挑む。対戦相手は、元シュートボクシング世界スーパー・ライト級王者の鈴木博昭(BELLWOOD FIGHT TEAM)。平本蓮は今度こそ弾けた闘いができるのか? 初勝利を掴めるのか?

■「打撃だけで勝負する!」

「今回は打撃だけでいきます。必ず勝つ!」
6月25日、東京・恵比寿のスタジオでメディアの取材に応じた平本蓮は、自信に満ちた表情でそう話した。
『RIZIN.36』のメインエベントは前RIZINバンタム級王者・朝倉海(トライフォース赤坂)vs.ヤン・ジヨン(韓国)。その一つ前の試合(セミファイナル)で平本は、"怪物くん"こと鈴木博昭と闘う。

両者はともに3月6日、都内シークレットスペースで開催された『RIZIN LANDMARK vol.2』に参戦。平本は鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺/KNOCK OUT-BLACK スーパー・ライト級王者)に判定で敗れたが、鈴木は昇侍(KIBAマーシャルアーツクラブ/トイカツ道場)に1ラウンドTKO勝利を収めている。
総合格闘技戦績は、平本2戦2敗に対し鈴木は2勝1敗。また二人はともにRIZINのリングで萩原京平(SMOKER GYM)と対戦し敗れている。

立ち技打撃格闘技では実績のある者同士だが、MMAでのキャリアともに浅い。
戦績こそ違えど、実力はほぼイーブンだろう。互いに打撃は強いが寝技の技術は発展途上。ただ、人気・注目度に関しては平本が上回る。そのため、この試合のテーマを「平本がRIZIN初勝利をあげられるのか?」に置く向きが多い。

  • 6月1日に沖縄アリーナで開かれた対戦発表記者会見後のツーショット。鈴木博昭(左)と平本蓮(写真:RIZIN FF)

それにしても、平本の前戦はいただけなかった。
勝敗だけの問題ではない。試合前半に両拳を傷め、スタミナも切らした対戦相手の鈴木千裕は苦し紛れの組みつき作戦に出た。これに平本は対処できずに時間を流されそのままタイムアップ。積極性で劣り判定で敗れた。闘い方に迷ったのか、何がしたかったのかが解らない試合内容。平本は長所をまったく出せなかった。

■勝敗よりも長所を前面に

そんな平本は最近、練習環境を変えている。
3月の鈴木千裕戦の前は『CAVE』に通い、石渡伸太郎から指導を受けていたが、いまは別の場所で練習している。それは、前戦と今回の試合では闘い方を異にするからだろう。

彼は言う。
「この前の試合では、組みも考えていましたが今回はシンプルに打撃で行きます。相手がタックルを仕掛けてくることも想定していますが、その時は切ればいい。倒されても、すぐに立ち上がればいい。
僕があまり経験していない戦術で来るのかな、とも思っています。(鈴木博昭の)動きがトリッキーなので、そこはよく見ていきます。シュートボクシング特有の立ち関節と見せかけてテイクダウンを狙ってくる、首相撲に見せかけてテイクダウンに来るかもしれません。でも何が来ても大丈夫。準備はできています。
ここでは、それ以上は話しません。試合を楽しみにしていて下さい」

  • 6月25日夜、東京・渋谷区にあるスタジオでメディアからの質問に答える平本蓮。「絶対に勝つ!」と自信を漂わせた(写真:RIZIN FF)

面白い展開になりそうだ。
対戦相手の鈴木も打撃には自信を持っている、元シュートボクシング王者としての意地もある。彼もまた、打撃に特化して闘うのではないか。互いが長所をぶつけ合あってのKO決着の予感あり、凡戦にはならないように思う。

勝敗予想は難しい。いずれが勝者となっても不思議ではない。
ただ、平本に期待するのは「弾けた闘い」。勝敗はともかく、忘れていることを思い起こして本人も観る者も納得のいく闘いをして欲しい。

彼のK-1での活躍は印象深い。
小学生時にキックボクシングを始めた後、2014年11月、新生K-1旗揚げ戦(国立競技場代々木第2体育館)にて行われた『K-1甲子園2014』65キロ級で優勝。この時、高校1年生。そして3年時の2017年2月には『K-1 WORLD GP 初代ライト級王座決定トーナメント』に出場し準優勝。準決勝ではムエタイの強豪ゴンナパー・ウィラサクレックを僅か74秒KOで葬っている。

つまりは得意の打撃で攻める本来のスタイルで魅せて欲しい。平本はまだ24歳、いまはトータルファイターになることを過度に意識しなくてもいいだろう。まずは長所を前面に押し出す闘いをすべきだ。それができれば、自ずと先が見えて来よう。
ここまでは人気先行だった平本蓮が「覚醒の刻」を沖縄で迎えるか─。期待したい。

  • <『RIZIN.36』全対戦カード>(提供:RIZIN FF)

文/近藤隆夫