「祈念する」は相手のことを思いやり願う意味のあるすてきな言葉ですが、利用シーンは限られており、いざ使おうとすると正しい使い方がわからないという方も一定数いるでしょう。

本記事では「祈念する」の詳しい意味やシーン別の使い方、アクセントや「祈願」との違いなどを紹介します。催しの締めの挨拶や、上司宛ての年賀状などでぜひ活用してみましょう

  • 「祈念する」の意味や使い方を解説します

    「祈念する」の意味や使い方を解説します

「祈念する」の意味と読み方とは

「祈念する」とは主にビジネスシーンにおいて、相手の健康や繁栄を願う際に使う言葉です。

『広辞苑 第六版』によると、意味は以下の通りです。

「祈り念ずること。いのり。祈願。」
(『広辞苑 第六版』P.695より引用)

英語で言うところの「pray」に近いことがわかるのではないでしょうか。

「祈念する」の読み方と、口頭で使う際の発音の注意点

「祈念する」の読み方は「きねんする」です。

「祈念する」という言葉を口頭で述べる上で気を付けたいのが発音の位置です。「祈念」は、「きねん」の「き」にアクセントを置くのが正しい読み方です。

「きねん」の「ね」にアクセントを置くと、思い出に残すという意味の「記念」と受け取り間違いしてしまします。

「記念」と「祈念」では意味も違うだけでなく、場合によっては相手にあらぬ誤解を与えてしまいかねません。挨拶の言葉を述べる際は、正しいアクセントの位置に注意しましょう。

「祈念する」の方が「祈る」「お祈りする」よりも堅め

手紙の結びの文言として「皆様のご健勝(けんしょう)をお祈りします」といった表現を用いることがありますよね。

こちらは、「みなさまのご健勝を祈念いたします」などと言い換えることができます。

「祈念」は「祈る」のより堅い言い回しだと言えるため、覚えておくと便利です。

「祈念する」の使い方と例文

「祈念する」という言葉は日常会話ではあまり使われることはありませんが、ビジネスシーンでは定型のフレーズとして、催しの締めの挨拶や、書面での挨拶フレーズなどとしてよく使われます。

ここでは、敬語にしたいときはどうすればいいかや、シーン別の使い方と例文を見ていきましょう。

敬語表現は「祈念します」「祈念しております」「祈念いたします」など

「祈念する」自体に敬語の意味合いはないので、丁寧に表現したい場合は「祈念します」「祈念しております」「祈念いたします」などといった表現を使用しましょう。

また「◯◯をお祈りして」と言いたい場合は、「◯◯を祈念しまして」「◯◯を祈念いたしまして」などと言い換えるといいでしょう。

催しでの締めの挨拶の場合

「祈念する」は、会社で行われるような祝賀会、部署全体の新年会・忘年会など、フォーマルな会における締めの挨拶としてよく使われます。

宴もたけなわではございますが、そろそろ終了のお時間となりました。
ご指名にあずかりました○○と申します。
僭越ながら締めのご挨拶をさせていただきます。

本日はお忙しい中、祝勝会にご参加いただき、誠にありがとうございました。

それでは、お集まりいただきました皆様のご健康と今後ますますのご活躍を祈念いたしまして、一本締めで締めさせていただきます。

(一本締め)

ありがとうございました!

口頭で「祈念する」と述べる際は、前述のようにアクセントの位置に注意が必要です。「きねん」の「き」にアクセントを置くようにしましょう。

また「祈念する」は表現としては堅い部類になりますので、仲よしグループの普段の飲み会などで使われることは少ないでしょう。

年賀状に用いる場合

年始のご挨拶状である年賀状でも、「祈念する」という定形フレーズがよく使われます。

謹んで新春のご祝詞を申し上げます。
昨年中は格別のご厚情にあずかり、誠にありがとうございました。

貴社のますますのご発展を祈念しますとともに、本年もなおいっそうのお引き立てを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

お断りの連絡をする場合

角が立たないようにお断りを入れる際も、文章を柔らかくする効果を期待して「祈念する」を使用することができます。

例えば営業を受けた製品・サービスの契約を見送る際や、就職希望者への不採用通知などでよく用いられています。

この度は貴社の製品についてご提案いただき、誠にありがとうございます。
弊社で検討した結果、○○(理由)のため、大変恐縮ではございますが今回は辞退させていただきます。
大変申し訳ございませんが、何卒ご了承いただけますようお願い申し上げます。
今回はこのような結果となりましたが、また機会がございましたらぜひよろしくお願いいたします。
貴社の益々のご発展を心よりご祈念申し上げます

退職者などへのメッセージの場合

転職などで退職する人へ送る言葉、また異動する人への言葉としても、「祈念する」を使用することができます。

長い間、本当にお世話になりました。
新しい環境での◯◯さんの益々のご活躍を、心より祈念しております

  • 「祈念する」はビジネスシーンでもよく使われる表現です

    「祈念する」はビジネスシーンでもよく使われる表現です

類語「祈願」とのビジネスシーンにおける細かな違い

ここで、「祈念」の意味について、前述の『広辞苑 第六版』をもう一度見てみましょう。

「祈り念ずること。いのり。祈願。」
(『広辞苑 第六版』P.695より引用)

上記の通り、似たような言葉に「祈願(きがん)」があることがわかります。違いが分かりにくいですよね。

「祈念」も「祈願」も、本来は神様や仏様に対して願って念ずることを意味する言葉なので、基本的な意味は同じだと言えます。

現在ではビジネス上において「祈念」を使うと、「相手の成功や活躍・健康など」を祈って念じるという意味に捉えられます。

ビジネスシーンにおける「祈願」については、現在でも寺社仏閣にいる神様や仏様に対して祈って願うことを意味するため、本来の意味と大きく変わらないと言えます。

  • 例文を参考に、「祈念する」を正しく使いこなしましょう

    「祈念する」を正しく使いこなしましょう

ビジネスシーンで「祈念する」を使いこなせるようになろう

「祈念する」という言葉は、日常生活では使用する機会がほぼないため、意味や使い方を知らない人も多いでしょう。

しかし文面に取り入れることで、一気にかしこまった表現になり、全体が今よりグッと締まる効果がありますよ。

特に取引先への書面や挨拶文、年賀状の作成などを頼まれた場合には、「祈念する」を覚えておくときっと役立つでしょう。

この記事を参考に、「祈念する」という言葉をスマートに使えるようになりましょう。