――『ゲキレンジャー』は拳法がテーマになっているだけに、アクションも多く、ほかの作品とはまた違った苦労があったのではないでしょうか。

荒木: JAEの方たちがすごく乗り気で、こういう拳法もあるよ、こういう動きもあるよと、ノリノリで提案してくれるんです。素面で動けると、変身後にできる動きの幅も広がるからって。当時はちょっと怖いかもなと思うアクションでも、どんどん挑戦していました。

鈴木: 現場では、どれだけ吹き替えに頼らないかを競っているところがありました。普通は吹き替えるものらしいんですよ。でも、バカなふりして「やらしてくださいよ」みたいな感じでした。もちろん、それはアクションチームの方たちを蔑ろにするという意味ではありません。やっぱり”カンフー戦隊”としてやっているからには自分たちもやりたいですという思いは伝えさせていただいていました。

塚田: 真面目に練習していましたからね。熱心すぎるあまり、鈴木くんはマイヌンチャクをカバンに忍ばせていて空港で止められた、なんてこともありました。

鈴木: よく覚えてますね(笑)。

塚田: 印象的だったんですよ。「なんだこれ?」「……ヌンチャクです」って。

鈴木: 空港のセキュリティーで止められたんです。その時、宇崎ラン/ゲキイエロー役の福井未菜ちゃんと二人でトークショーのための移動だったんですけれど、あやうく「福井未菜ソロトークショー」になるところでした。「ゲキレッド役の鈴木裕樹は諸事情により出演を見合わせます」となっていたかもしれません(笑)。

塚田: 未菜ちゃんはロングバトン入れてなかったんだね。

鈴木: バトンはさすがに入れてないでしょう(笑)。でも当時はトランポリンとか本当によくやっていましたね。

荒木: やってたね。現場で、撮影の合間に教えてくださるんです。僕らの時は、変身前も録音がなくてオールアフレコだったんです。音が出ても問題なかったから、撮影の合間をぬって稽古もつけてもらえる恵まれた環境で、いっぱい動いていましたね。

塚田: 『ゲキレンジャー』は構造もちょっと特殊でした。戦隊のメンバーが3人いて、それに対する悪のメンバーがいるところに、のちに戦隊にゲキバイオレットとゲキチョッパー、悪側にはロンが加わる、チーム戦の番組だと捉えていました。戦隊だけが主人公じゃなくて、悪も含めた上での物語を意識していて、そこが特殊だなとは思います。

荒木: 試みとしてすごい挑戦でしたよね。

塚田: そうですね。挑戦でした。良くも悪くも(笑)。

荒木: まさにそうだと思います。だって、ヌンチャクとトンファーとロングバトンって、こんなの子どもが持って安全なわけないじゃんって当時思っていました(笑)。

塚田: 昨日復習のために1・2話を観ていたんだけれど、反省しながら観ていました(笑)。横で観ていたカミさんから「今だったらここはこうするとかあるの?」って聞かれて、「まずはここをこうするかな」とかそんな会話で盛り上がっちゃった(笑)。明日取材があるから、うっかり口をすべらせないように気をつけなきゃいけないって。

荒木: 少なくとも、翌年以降の作品作りに影響したかもしれませんね。こういうことはやっちゃいけないとか。

塚田: それだけチャレンジをいっぱいした作品でしたね。

荒木: でも、だからこそ愛着があるんです。ほかと違うという自信もあります。

鈴木: それはすごいあるね。

荒木: だからこそ、大人になってからもう一度見てほしいんです。

鈴木: スペシャルだよね。昔の自分だからとか、まだ若くて拙いからだとか、そういうこととは違う次元にある作品という感じがしていて、あの瞬間の僕たちじゃなければできなかった作品。塚田さんが当時打ち上げで言ってくださった言葉が強く印象に残っているんです。「ゲキレンジャーという作品は色あせないものだ」って。本当にそう思います。