名古屋将棋対局場での初戦に勝利

渡辺明名人への挑戦権を争う第81期順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、6月22日にA級1回戦の藤井聡太竜王―佐藤康光九段戦が行われました。結果は101手で藤井竜王が勝ち、A級の初戦を白星で飾りました。

第81期A級順位戦のリーグ表

第81期A級順位戦のリーグ表

■互いに堅陣を構築

本局は後手番の佐藤九段が向かい飛車を採用しました。玉形は藤井竜王がトーチカ、佐藤九段が穴熊と、互いに堅陣を構築します。特に藤井竜王のトーチカ囲いは金銀4枚が密集して目がくらむほどの堅さです。長丁場の順位戦、そして名古屋将棋対局場での初めての対局、絶対に負けたくないという気持ちが表れたような堅陣でした。

中盤で先手が金二枚、後手が角香を得るという交換が行われました。その過程で後手は馬を作ったのですが、穴熊の金を二枚はがされたのも痛く、形勢は藤井竜王がリードします。

藤井竜王はチャンスと見て▲9五歩と端に手を付けました。△同歩と取らせてから歩を補充し、本格的な端攻めに入ろうというプロらしい呼吸の一手です。

■剛腕発揮の放り込み

しかしそれに対して佐藤九段は△同歩と取らず、△9六香とタダのところに放り込んだのが強烈な返し技でした。▲同香と取られてしまいますが、△9五歩と取った手を香当たりにする意味があります。この手によって佐藤九段に攻めのターンが回ってきます。佐藤九段が持ち前の剛腕を発揮した瞬間でした。

以降、戦況は9筋をめぐる攻防戦に移ります。佐藤九段は手に乗って飛車を9筋に大転回し、その飛車を切り飛ばして、あの堅かった藤井陣はバラバラに。そして先手玉頭に△8七銀と重しが乗せられて、ついに詰めろが掛かります。

■攻めを余し、矢のような反撃

しかし先ほど手にしていた金を生かす、87手目▲8八金が後手の攻め足を止める強靭な受けでした。後手は△9六銀不成と金を補充しますが、ここで▲9三歩と反撃に回りついに攻守逆転。猛攻の反作用で薄くなっていた佐藤九段の穴熊に、飛車・桂・香・金と攻め駒を配置して、藤井竜王はあっという間に後手玉を攻略。名古屋将棋対局場での記念すべき初勝利を藤井竜王が飾りました。

次戦のA級順位戦は7月8日に▲稲葉陽八段―△永瀬拓矢王座戦が行われます。両者はともに1回戦を勝っていますが、まずは連勝スタートを決めたいところでしょう。勝利の女神が微笑むのはどちらでしょうか。

相崎修司(将棋情報局)

終局後、感想戦を行う藤井竜王(左)と佐藤九段(提供:日本将棋連盟)
終局後、感想戦を行う藤井竜王(左)と佐藤九段(提供:日本将棋連盟)