東京都交通局は、都営三田線に新型車両6500形を導入。5月14日から運行開始した。2000(平成12)年以来、22年ぶりという新型車両で、すでに東急目黒線への乗入れも開始している。従来の都営三田線の車両は6両編成だったが、新型車両6500形は8両編成で登場した点も特徴となる。

  • 都営三田線の新型車両6500形は8両編成。東急目黒線にも乗り入れる(筆者撮影)

運行開始してしばらく経った頃、筆者も都営三田線を訪れ、実際に乗車して新型車両を体感した。都営三田線の新型車両6500形は、窓周りと前面の外側にラインカラーのブルーをあしらったシンプルな外観。車体前面はブルーで縁取ったブラックフェイスとなっている。前照灯・尾灯とフルカラーLEDの種別・行先表示器は上部に配置された。

車体側面も、ラインカラーのブルーを窓周りに配したシンプルなデザインとなった。都営三田線は全駅にホームドアが設置されているため、ホームにいる利用者から車体側面の下半分は見にくくなる。一方、窓周りに配したブルーはホームドア越しに見ても十分目立ち、わかりやすく見えた。

  • 車体側面も窓周りにブルーを配色したシンプルな外観に(筆者撮影)

車内もブルーを基調とした空間に。床、乗降ドア、座席、吊り手に青色を配色しているが、遠目から見ると紺色に近いようにも見える。優先席は明るい緑色の座席となり、付近の吊り手とスタンションポールに黄色を配色。座席は1人あたりの幅が25mm広くなる一方で、ドア間の座席が6人掛けに変更された(車端部は変わらず3人掛け)。

着席可能な人数は既存の6300形より少ないが、左右に余裕ができた。座席に座れなかったとしても、全車両にフリースペースを設置し、乗降口脇のスペースを広く設計し、荷棚と一部の吊り手を低くするなど工夫が見られ、立席でも利用しやすい。その他、袖仕切りと貫通扉にガラスを使用。車内の抗ウイルスコーティングなども行った。

  • 6500形の車内。袖仕切りはガラスを使用し、大型化された(2022年2月の報道公開にて、編集部撮影)

既存の6300形が暖色系統の内装だったことを考えると、6500形は青色基調ということで、内装の雰囲気が大きく変わった。その上で、防犯カメラ、多言語対応の液晶モニター、無料Wi-Fiなど、セキュリティと情報提供も強化されている。照明にLEDを使用していることもあり、車内がより明るい印象に。既存車両と比べて配色の異なるシンプルな外観・内装ながら、快適性が向上した。

筆者が乗車した日の時点では、東急目黒線に乗り入れるとはいえ、6500形を見られる時間帯は朝夕に限られていた。高島平駅(朝夕に同駅止まり・同駅始発の列車がある)付近で列車を観察していたところ、16時20分頃、高島平駅始発の白金高輪行として、志村車両基地から出庫する6500形を見ることができた。列車は16時28分に高島平駅を発車した。

  • 志村車両基地を出庫した6500形。高島平駅から白金高輪行として運転された(筆者撮影)

この列車は白金高輪行として運転され、西高島平行となって折り返す。西高島平駅に到着した後、東急目黒線直通の日吉行(各駅停車)となり、再び白金高輪方面へ向かう。筆者は西台駅でこの列車を待ち、終点の日吉駅まで乗り通すことにした。6500形は18時22分、西台駅を発車した。

都営三田線は西高島平駅から志村坂上駅付近まで、地上の高架線を走行する。西高島平駅付近では、周辺に東京都中央卸売市場板橋市場やトラックターミナルなどが立地しているため、大通りを大小さまざまなトラックが往来する光景も珍しくない。西高島平駅から西台駅まで高島通りと並行し、高島平駅付近に大規模な高島平団地もある。

西台駅で乗車した時点では、あまり利用者は多くなかった。そんな中、近くのドアから乗り込んだ学生たちの間で、この電車が新型車両であることを察するような話し声が耳に入った。実際、既存の6300形とは見た目が大きく異なる上に、8両編成になっているため、鉄道に詳しくない人でも新型車両と気づきやすかったかもしれない。

  • 西高島平駅から志村坂上駅の手前まで地上区間を走る(筆者撮影)

その後、筆者はあえてモーターが搭載されている車両に移動し、座席に座りながらモーター音も聞いた。SiC素子を用いたVVVFインバーター制御ということもあり、聞こえる音は静かだ。座席も、6人掛けになった代わりに1席あたりの幅が広く取られ、ゆったり座れる。ガラスを用いた袖仕切りは大型化され、端の座席に座っていても、ドア横に立つ人との接触を防ぐことができた。

夕方以降の帰宅時間帯にさしかかり、筆者が乗った列車も次第に乗客数が増え、志村坂上駅のあたりから早くも立席の乗客が見られるようになった。都営三田線の沿線には高校・大学などが多くあり、学生街として知られる白山駅で多くの学生が乗り込んできた。乗車する際、さりげなくスマホで車番を撮る人も。都営大江戸線などと乗り換えられる春日駅、都営新宿線・東京メトロ半蔵門線と乗り換えられる神保町駅でも、乗客の入れ替わる様子を見ることができた。

大手町駅には18時51分に到着。さらに多くの乗客が6500形の車内に入ってきたが、たしかに混んでいるとはいえ、満員と呼べるほどには混雑していない。車内空間も若干の余裕があるように見える。白金高輪駅で同駅止まりの東京メトロ南北線の列車と接続し、6500形の日吉行に乗り換える乗客が多かったものの、それでもコロナ禍前のような密度の高い混雑ではなかったように思えた。

都営三田線と東京メトロ南北線、埼玉高速鉄道(埼玉スタジアム線)、東急目黒線は今後、車両の8両編成化を順次進める予定。都営三田線では、8両編成の6500形を投入したことにより、1編成あたりの定員が1,172人に増加(既存の6両編成は862人)した。今回の乗車を通じて、早速その効果が表れたように感じられた。今後も6500形の導入および車両の8両編成化が進むので、時間帯にもよるが6両編成のときより乗りやすくなるのではないかと思う。

  • 都営三田線で活躍してきた6300形。新型車両6500形の投入にともない置き換えられる予定

  • 東急目黒線をはじめ、相互直通運転を行う都営三田線や東京メトロ南北線などで車両の8両編成化が進む

目黒駅には19時9分に到着。ここから先は東急目黒線となり、ドア上の案内表示も東急電鉄の画面に切り替わった。不動前駅の手前で地上に上がるが、日が延びたとはいえ、辺りはすっかり暗くなっている。東急目黒線では、目黒駅以外に多くの人が乗り込むような駅は少なく、混雑していた車内も次第に空いてきた。奥沢駅を発車し、左に大きくカーブすると、地下から割り込むように東急東横線と合流し、田園調布駅に到着した。

田園調布駅から先は東急東横線・目黒線が並走する区間となる。6500形の各駅停車は19時34分、終点の日吉駅に到着した。全員の降車を確認すると、すぐに扉が閉まり、6500形は回送列車となって引上げ線へ。その後、6500形は後から来た電車が日吉駅で折り返すまで待ち、日吉駅を19時56分に発車する西高島平行の急行となって、目黒方面へ折り返していった。発車までの間、ホームでは6500形を見に来た親子や学生の姿も見られ、新型車両に対する注目度の高さがうかがえた。

  • 2022年3月末、相鉄・東急直通線開業に向けた鉄道ネットワーク7社局の車両撮影会を実施。6500形も展示された(筆者撮影)

2023年3月には、相鉄・東急直通線が開業する予定。詳細な運転計画は未定だが、都営三田線からも相鉄線へ乗入れが予定されている。都内北部の住宅地から新横浜駅を経由し、神奈川県内の海老名駅または湘南台駅まで、ダイレクトに結ばれることになる。新型車両6500形が相鉄・東急直通線にどのように関わっていくか、気になるところだ。