「伏線」という言葉を知っていますか。小説や漫画、ドラマなどストーリー的なものが存在するときに、「伏線が張られていた」「伏線の回収が美しい」という形で使われるため、一度は耳にしたことがある表現でしょう。
伏線は、ストーリーの結末に向けて準備しておくものです。企画を通す際や売り上げなどの展開を予想する場合、戦略的に使われる表現なので、ビジネスシーンでも使う機会があります。
この記事では、伏線の意味や使い方を解説しますので、ビジネスの場でも活かしましょう。
伏線の意味・読み方
「伏線(ふくせん)」は、ラストの展開に備えて関連した事柄を前の方でほのめかすこと、または、後の準備として用意しておくこと、という意味の言葉です。
「伏」は、伏せるという字であり、隠れる・潜むという意味があり、「線」は、道筋という意味があります。漢字の組み合わせからも、ストーリー上の道筋の中に隠す・潜ませる、という意味に通じていますね。
伏線の類語
伏線の類語には「布石」「示唆」「暗示」「手がかり」「前振り」といった言葉があります。それぞれ使いどころや意味が似ているようで違うものもあります。
同じような意味合いでも同様の言葉を使いすぎると、表現の幅を広げるためにも類語をしっかりと頭に入れておくといいでしょう。
伏線の類語とそれぞれのニュアンス、使い方を把握して、シーンに合わせて正しく使いましょう。
「布石」
「布石」とは、囲碁において序盤、要所に石を配置するという意味の言葉だったことから、未来のために前から整えておく準備、という意味があります。戦略が必要な場面で使われる機会が多いでしょう。
未来を考えて準備することから、後半を予兆させる「伏線」と似た意味を持ちます。違いは、「布石」には、遠回しに、それとなく、などの意味がないことです。「定年後の布石として、若いうちから投資運用を開始する」と言う使い方が可能です。
「示唆」
「示唆」とは、間接的にそれとなく手がかりを示すこと、という意味の言葉です。のちに続く話の行方について話す際に使われる点で「伏線」と似ています。
例えば、「あの時のやりとりは、後の別れを示唆するものであった」「彼の笑顔は、決定事項への同意を示唆していた」という使い方をします。「示唆」は「伏線」よりも、抽象的な言い方として使われるでしょう。
「暗示」
「暗示」は、物事の手がかり、または手がかりを与えてそれとなく知らせること、という意味の言葉です。話の展開について「示唆」される内容や「暗示」することこそ、伏線ともいえるでしょう。
ただ、「暗示」は、他人の言葉など明確な手がかりとなる情報のことを言うため、「示唆」よりも直接的な表現になります。例えば、「黒猫が横切ると不吉なことを暗示すると言われている」「首相の暗い表情は経済危機を暗示していた」という使い方が可能です。
「手がかり」
「手がかり」は、次に起こす行動のための具体的な拠り所、という意味の言葉です。問題解決へのヒントを指す時に、このヒントを「手がかり」と言い換えることが可能です。「手がかり」も「伏線」の一部です。
例文としては、「問題解決のための手がかりが何一つ無い」「見逃した手がかりは何だ」「犯人への手がかりへの伏線が随所に見受けられた」などがあります。
「前振り」
本題に入る前に述べることを意味する「前振り」は、先のことを考えて準備をしておくといった意味を持つ「伏線」や「布石」と似ている言葉ではありますが、意味としては明確に違いがあります。
「前振り」は「君の話は前振りが長すぎる」「ハッピーエンドになるかのような前振りがあったのに、この結末は残念だ」のように用いることができます。
伏線の対義語
伏線の対義語は、判断を誤らせる、人を欺く、相手に対して誤解を与える、という意味をもつ「ミスリード」が当てはまるでしょう。
「伏線」は結末に対して導く意味で用いられますが、「ミスリード」は思わぬ方向に展開する、または序盤でする予想を結末で裏切る際に使う言葉です。
例えば「このタイトルは明らかにミスリードだ」という使い方をします。伏線の対義語や使い方を知って、「伏線」とは逆のことを言いたい場合に活用しましょう。
伏線の英語表現
伏線の英語表現としては、「foreshadowing」「allude」があります。最近では外国人採用枠も増えているため英語でやり取りするシーンもあるでしょう。伏線の例文を交えた英語表現を学び、ビジネスに活かしましょう。
「foreshadowing」
「foreshadowing」は、前兆となる、あらかじめ示す、予示する、という意味を持つ単語です。これから起こる事柄をほのめかす意味を持つ「伏線」の英語訳として使用できるでしょう。
<例文>
- This turned out to be a foreshadowing of the incident.
(これは事件への伏線となった。)
「allude」
「allude」は、暗に示す、それとなく言う、という意味を持つ単語です。それとなく、これから起こる事柄をほのめかす意味を持つ「伏線」の英語訳として使用できるでしょう。
<例文>
- allude to something as a preliminary.
(伏線を張る。)
伏線の使い方と例文
伏線という言葉は、話の結末を予感させる一部であるため、サスペンスや推理などの小説や漫画で使われることが多い表現です。
伏線の使い方としては、「伏線だらけ」「伏線を張る」「伏線を敷く」「伏線の回収」などがあります。ここでは、伏線の使い方を例文で紹介します。
「伏線だらけ」
「伏線だらけ」は、ラストの展開に備えて関連した事柄だらけ、直接的にはネタバレしないがヒントになる事柄が多い状態、という意味で使用します。
<例文>
- 結末を知ると、前半から伏線だらけなことがわかった
「伏線を張る」「伏線を敷く」
「伏線を張る」「伏線を敷く」は、ラストの展開に備えて関連した事柄を用意しておくという意味で使われます。
<例文>
- 疑いを回避するため、先にアリバイにつながる内容を言い伏線を張る
- 行き当たりばったりで書いていくより伏線を張る手法を用いたい
- 話し合いが丸く収まらないことを予想して伏線を敷く
- 今日のプレゼンが却下されることを予想して伏線を敷く
「伏線の回収」
「伏線の回収」は、ラストの展開に備えて関連した事柄を拾い上げていくこと、という意味です。ストーリー上、事前にほのめかしていた部分が結末の内容に結びついていく時に使われます。
<例文>
- この作品は伏線の回収が華麗だった
- 打ち切りになったらしく、突然最終回を迎えたが、伏線の回収がなされていない部分が多く不満に感じた
伏線の意味や使い方を理解しよう
伏線は後半のストーリー展開への盛り上がり効果もあり、小説や漫画、ドラマなどで利用される手法です。伏線が用意されていることで、後半に向けて一層興味を引き付けられるでしょう。
後の展開のために、前にほのめかしておく方法は、政略的なビジネスでも利用される手法です。伏線の意味や使い方を知り仕事でも活用していきましょう。