• (左から)小山テリハ氏、木月洋介氏、大森時生氏

――おふたりの世代は、テレビ以外にも多くのエンタメがありますし、周りの友達に家にテレビがないという人も多いと思うのですが、テレビ業界を志望したのはどういう経緯なのですか?

小山:私は、ものづくりができれば何でもいいと思ってて、大学生のときはスマホゲームが好きでその制作側に行こうと思ってたんです。就活っていうイベントがすごく苦手だと思って、自分に自信もなかったので、早く終わらせたい一心でベンチャー企業とか、サイバーエージェントさんのゲーム部門とか、Cygamesさんとかにエントリーして、インターンとかして、終わったらオタ活に費やそうと思っていて。そしたらある日、大学の友達が隣でテレ朝のエントリーシートを書いていて、その質問の1つに「自分を○○芸人に例えると何芸人ですか?」って『アメトーーク!』に則ったお題があったんです。いわゆる“日本のTHE就活”のイメージと質問が全然違って、もうほぼ大喜利じゃないですか。そのエントリーシートが面白そうで、本当にギリギリになってノリで申し込んだんです。選考でも、大学では大したことしてなくて、地下アイドルの活動なんて誰も興味なくてけちょんけちょんにされると思ったんですけど、誰もバカにせず真面目に聞いてくれる方が多くて、「お客さんどれくらい呼んだの?」って聞かれて、本当に恥ずかしい数字だったんですけど「へぇ~すごいね」と言ってくれたので、「この会社、いい人が多いなあ」と思って決めました。

――そうすると、キー局をみんな受けたわけじゃないんですね。

小山:そうですそうです、テレ朝だけです。でも、もともと『ロンハー(ロンドンハーツ)』も『アメトーーク!』も見ていて、浪人時代は毎週『アメトーーク!』を見てご飯を食べる時間だけは自分を勉強から解放してあげるのを許そうと思ってたんで、その番組に自分が関わるなんて、人生って面白いなと思いました。

――大森さんはいかがですか?

大森:僕もテレ東しか受けてないんです。就活が嫌で嫌でしょうがなくて後回しにしてたら、キー局は締切が早いのでテレ東しか残ってなくて受けたというのもあるんですけど、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』の影響があるかもしれないですね。あれはそんなに間口の広いコンテンツではないじゃないですか。ドキュメンタリーという狭いものなのに、多くの人に広がって話題になっていろんな人に刺さるっていうのは、テレビじゃないとなかなか難しいと思うんです。「Netflixですごいドキュメンタリーがあります」って言われても、ドキュメンタリーにリテラシーがある人はそこにたどり着くけど、そこまで広がらない印象があるので、変わっているけど自分か好きだと思うものを詰めて作ったものをテレビで放送することによって、いろんな人に届けるチャンスがあるのかな?と思ってテレビ局に入りたい…ということを面接で言っていた気がします。

木月:実際にテレビ局に入って良かったなと思うことって何ですか?

小山:良かったことはいっぱいありますね。私は飽き性だから、そのときに興味のあることしか頑張れないと思ってたので、銀行員とかは無理だろうなあと思ってたんですけど、『アメトーーク!』って毎週テーマが変わるじゃないですか。担当ADに就くとそれについて全部自分でしっかりリサーチしなきゃいけないので、5年間、毎回違うことをやらせていただいて、競馬も知って『スター・ウォーズ』も全部見て、同じ番組にいるけど常に違う知識が入るのが良かったです。つらかったんですけど純粋にそれが楽しかったというのと、非日常の割合がすごく多くて。日常の中で仕事をしてるときが常に非日常っていう不思議な感覚が味わえるのも、この仕事の楽しいところだなと思います。

大森:テレビ局ってインプットが大事みたいな空気感が結構あるじゃないですか。僕は入ってからそれを意識的にするようになっていて、世界が広がる感じがありますね。大学の頃には暇なときでも見ていなかっただろう映画とか展示会とか、忙しい中でもそういうのにあえて行くようにしているのは、生き方としていい形になっている感じがしています。あと、テレ東は嫌な人があんまりいないので、すごく働きやすいなと思います(笑)。高校とか大学の友達と飲んだりすると、だいたい「上司に嫌な思いさせられた」みたいな話を聞くんですけど、そういう思いをそんなにしていないので、それも思わぬ副産物として良かったなと思います(笑)

■“化け物”加地EP、“100%ホームラン”上出D

――ご自身の師匠に当たる人というのは、どなたになりますか?

小山:やっぱり加地(倫三、『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』エグゼクティブプロデューサー)さんですね。入社1年目のADのときから今もずっとお世話になっているんですけど、すごいと思うのは、あのキャリアで今も自分で企画やキャスティングを考えるし、会議も自分で主導してるし、オフライン(仮編集)も自らチェックするしっていう、本当に知れば知るほど化け物だと思います(笑)。芸人さんのことを本当に考えて企画をやられてるので、そこの信頼のすごさを感じます。

大森:僕はずっといっしょにやらせてもらってるわけじゃないんですけど、上出(遼平、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』演出)さんはずっと尊敬と畏怖の念がありますね。作り方とか思想とか、共鳴するところや見習いたいと思うところが多いです。

木月:イノマーさんのドキュメンタリー(※)もすごかったですよね。

(※)…『家、ついて行ってイイですか?』のスペシャルで、ミュージシャン・イノマーさんの闘病生活から最期の瞬間まで密着。2021年1月度ギャラクシー賞月間賞。

大森:視聴者の方に向けて強烈なものを作る力とか見せ方を考え抜いてるなと思います。そんなに多くない打席で100%ホームランを打つというすごさがあるんですよね。『ハイパー』や『蓋』など、僕たちが常識だと思っていることとかをひっくり返すような、価値観を変えてしまうような「面白い」コンテンツをつくっているところは尊敬してやまないです。

  • (左から)加地倫三氏(左)と上出遼平氏

次回予告…~若手制作者編~<4> 「ゴールデンでレギュラー番組」の意識は…

●小山テリハ
2016年にテレビ朝日入社。『アメトーーク!』のADを務めながら『妄萌がーる。』『出川とWHYガール』などを企画。現在は『ホリケンのみんなともだち』『イワクラと吉住の番組』『ロンドンハーツ』『霜降りバラエティX』、『にゅーあのちゃんねる』(CS・テレ朝チャンネル1)などを担当する。

●大森時生
1995年生まれ、東京都出身。一橋大学卒業後、19年にテレビ東京入社。『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』を経て『ありえへん∞世界』でディレクターに。『RaikenNipponHair』で「テレ東若手映像グランプリ2022」優勝、その記念特番『島崎和歌子の悩みにカンパイ』のほか、『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』(BSテレ東)も手がける。

●木月洋介
1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』『AKB48選抜総選挙』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『あしたの内村!!』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『バチくるオードリー』などを担当する。