ビジネス書やニュースなどで見聞きする「イデオロギー」という言葉について、その意味をわかりやすく解説します。
由来や語源、また例文や類義語、対義語などもご紹介するので、ぜひ目を通してみてください。
「イデオロギー」の意味とは
まずここでは、「イデオロギー」の基本的な意味を解説します。
「イデオロギー」の意味をわかりやすくいうと「物事に対する考え方」のこと
まずは「イデオロギー」の基本的な言葉の意味を見てみましょう。
意味1: 政治・道徳・哲学・芸術・宗教などにおいて、社会的立場や歴史的立場に制約された考え方。観念形態
意味2: 特に、政治や社会思想における思想の傾向
もう少しかみ砕くと、「イデオロギー」とは「思想や考え、信念などをまとめたもの」のことを指す言葉です。
「イデオロギー」はどのような経緯で使われるようになったのか
ここでは、「イデオロギー」という言葉がどのように浸透するにいたったか、その由来・語源について解説します。
「イデオロギー」の初登場はフランス
「イデオロギー」という言葉は、フランスの哲学者デステュット・ド・トラシーが使用したことが始まりとされています。哲学者トラシーは、観念の起源や本質を研究しており、その学問を「イデオロジー」と呼んでいました。
また、当時政権を握っていたナポレオンは、政敵であった彼ら哲学者グループのことを「イデオローグ(空論家)」と軽蔑的な意味を込めてののしったとされています。
広く認識されたきっかけはマルクスとエンゲルスの著書
ドイツの共産主義思想家であったマルクスとその同士のエンゲルスが共同で執筆した『ドイツ・イデオロギー』の中で、階級社会に関する「イデオロギー」が分析されました。同著によってイデオロギー論が確立され、「イデオロギー」という言葉が広く認識されるようになりました。
「イデオロギー」の語源はギリシャ語
「イデオロギー」の語源は、ギリシャ語で観念という意味の「イデア(idea)」と、言語という意味の「ロゴス(logos)」の組み合わせとされています。
- 日本語: イデオロギー
- ドイツ語: イデオロギー(ideologie)
- 英語: アイデオロジー(ideology)
「イデオロギー」は、国によって表記や発音の仕方が異なります。日本では「イデオロギー」という言葉がマルクス主義とともに入ってきた影響で、ドイツ語の「イデオロギー(ideologie)」が使用されています。英語では「アイデオロジー」と発音するので注意しましょう。
「イデオロギー」の使い方
ここでは、「イデオロギー」の使い方をご紹介します。
政治の分野で使われることが多い
「イデオロギー」は『ドイツ・イデオロギー』(マルクス/エンゲルス著)の著者が確立したマルクス主義の影響で、政治的思想という意味でとらえられることが多くなりました。なお、マルクス主義に対する批判や、前述のナポレオンによる蔑称の件もあってか、比喩的に「空論」という意味合いも持つことがあります。
現在は政治のほか、歴史、思想、宗教、ジャーナリズムといった多くの分野で使用される言葉で、「観念形態」「世界観」「信条」「行動」「価値」など幅広い意味で使われています。ただし、哲学や社会学などで専門用語として登場するときは、限定的な意味で使用されることがあるので注意してください。
「イデオロギー」の例文
・〇〇政権の方針をイデオロギーの観点から分析してみましょう
・1980年代、アメリカでは新自由主義イデオロギーが台頭した
・イデオロギー対立がエスカレートしたため、話し合いは平行線をたどっている
・近代経済学の父といわれるアダム・スミスは、経済学や社会におけるイデオロギー的論争の中心人物とされることがある
・思想や信条に乖離(かいり)があると、イデオロギー闘争に発展しかねない
・現代の世界経済は、主に資本主義イデオロギーの下に成り立っているが、貧富の差も生まれやすい
上記の例文を参考に、「イデオロギー」の理解を深めましょう。
「イデオロギー」の類義語・言い換え
ここでは、「イデオロギー」の類義語・言い換えをご紹介します。
理論体系(りろんたいけい)
意味: 「理論」とは、ある物事について原理・法則を基に筋道を立てて考えられた知識。「体系」は多様なものをまとめたもの。つまり、その人が信じる論理的な考え方のまとまりのこと。
思想(しそう)
意味1: 心に浮かべること、考えること。または考え
意味2: 人生や社会におけるまとまった考え・意見。主に社会的や政治的な見解
意味3: 哲学にて、考えることで得られた、体系的なまとまった意識の内容
「政治思想」という言葉も政治の分野で「イデオロギー」を使うときの類義語です。政治について抱えている考え方・理論という意味になります
主義(しゅぎ)
意味1: その人が持ち続けている方針、考え、態度
意味2: 思想や学説、芸術理論における一定の立場
意味3: 特定の原理に基づく社会制度や体制のこと
ドグマ
意味1: 宗教や宗派独自の教理・教義
意味2: 独断、教条
空論(くうろん)
前述のように、「イデオロギー」を比喩的にとらえる場合は、「空論」を類語とすることもできるでしょう。
意味: 現実からかけ離れた、役に立たない議論や理論、理屈
「イデオロギー」の対義語
「イデオロギー」には明確な対義語がありません。しかし、反対の意味に近い言葉はあるため確認しておきましょう。
アイデンティティ
意味: 英語「identity」の日本語読み。自己が時間や環境の変化に流されず、統一性・連続性・独自性があること
「イデオロギー」という言葉は、政党や国、宗派などの団体におけるまとまった思想を表す時に用いるため、そういった意味では「自分独自の個性」を表す「アイデンティティ」は反対の言葉といえるでしょう。
個人主義(こじんしゅぎ)
意味: 社会や国家の権威に対して、個人の価値や意義を重視し、その権利と自由をアピールする立場・理論のこと
ノンポリ
意味: 英語「nonpolitical」を略したもの。政治や学生運動に無関心であること。またはその人を指す
「イデオロギー」の英語表現
ここでは、「イデオロギー」の英語表現とともに、英文をご紹介します。「イデオロギー」の英語表現は「ideology」です。
英文: While the capitalist ideology that is currently mainstream has the potential to make money for everyone, it also tends to create a gap between the rich and the poor.
意味: 現在主流となっている資本主義思想は、誰もがもうかる可能性を持っている反面、貧富の差を生みやすい
「イデオロギー」の意味と使い方を理解しましょう
「イデオロギー」とは簡単にいうと「思想や考え、信念などをまとめたもの」のことを指します。フランスの哲学者デステュット・ド・トラシーが、自身が研究していた学問のことを「イデオロジー」と呼んだことに由来しています。
その後、ドイツの経済学者であったマルクスやエンゲルスが著書『ドイツ・イデオロギー』を発表したことで、「イデオロギー」という言葉が広く知られるようになりました。日本には、マルクスとエンゲルスが確立したマルクス主義思想とともに、「イデオロギー」という言葉が入ってきています。
「イデオロギー」の類義語・言い換えや反対の意味の言葉は複数あります。この機会に覚えておくといいでしょう。また、「イデオロギー」の英語表現、例文も参考にして使い方をマスターしてください。