「見識」は、ビジネスシーンでも聞く機会の多い言葉です。しかし、正しい意味や使い方について聞かれると、答えに困ってしまうという人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、「見識」の意味や類語、英語表現などについて、詳しく解説していきます。表現力や語彙(ごい)力を高めるためにも、しっかりとマスターしておきましょう。

  • 見識の意味や類語、使い方などについて、詳しく解説していきます

    見識の意味や類語、使い方などについて、詳しく解説していきます

見識とは

まずは見識について、基本的な意味を解説していきます。

見識の意味

「見識」には2つの意味があります。

  1. 物事を深く見通して、本質をとらえる優れた判断力
    優れた判断で、周囲の人が納得するような意見や結論に導く力が「見識」です。また、その意見自体のことも指します。「あの人には相当の見識がある」のように使います。

  2. 気位(きぐらい)、見栄
    「見識」には、自分をよく見せようとしたり、品位を保とうとしたりする気位や見栄、つまりプライドという意味もあります。一般的には1.の意味で使われることが多いですが、こちらの意味も覚えておくと活用の幅が広がるでしょう。

見識と知識の違い

「見識」と「知識」という言葉は似ていますが、単に「知っている内容」のことを指す「知識」に対して、「見識」は「知識に基づいた判断力や考え」という意味があります。語感が似ていてもニュアンスは異なるので、混同しないようにしましょう。

  • 見識には「物事を深く見通して本質をとらえる優れた判断力」と、「気位や見栄」という2つの意味があります

    見識には「物事を深く見通して本質をとらえる優れた判断力」と、「気位や見栄」という2つの意味があります

見識の使い方と例文

ここからは、「見識」の使い方と例文を紹介していきます。「見識」は「ある・ない」の他にも、「広い・狭い」「深い・浅い」などさまざまな言い方をするので、それぞれの用法と例文をしっかりチェックしておきましょう。

見識が広い・見識が狭い

見識の程度は「広い」「狭い」で表現します。

  • あの人は見識が広い人だ
  • それはあまりにも見識が狭い

見識が深い・見識が浅い

見識の程度は「深い」「浅い」でも表現されます。意味は「広い」「狭い」と同じです。

  • 彼は若いのに見識が深い
  • あの人は見識が浅いから頼りにならない

見識が高い・見識が低い

見識の程度は「高い」「低い」で表現することもあります。

  • 彼は高い見識のある人だ

ただし、「見識が高い」という使い方をする場合は、「彼は気位が高い」という意味で批判的な表現にもなるので注意が必要です。

  • 彼はいやに見識が高いので、人から嫌われやすい

見識を深める・見識を広める

見識は「深める」「広める」というように、自らの能力を高めるという意味合いの使い方をすることもあります。

  • 違う業界の人と交流して見識を広める
  • 書物を読んで見識を深める

見識を疑う

「見識を疑う」は、相手を非難するときなどに使われる表現です。

  • あんなことをいうなんて、彼の見識を疑う
  • 見識を疑われるようなことはしない方がいい

見識を持つ

経験や知識に基づいた判断力を身に付けることを「見識を持つ」と表現します。

  • 社会人なのだから正しい見識を持つべきだ
  • この仕事は高い見識を持つ人物に依頼したいと思う

見識を備える

 「見識」は「備える」という言い方をすることもあるので、例文をしっかりチェックしておきましょう。

  • 彼は見識を備えた人だから、安心して仕事を任せられる
  • 彼女ほど見識を備えた人物はいない
  • 見識の例文を確認しておけば、シーンに合わせて使い分けられるようになります

    見識の例文を確認しておけば、シーンに合わせて使い分けられるようになります

見識の類語

見識には多くの類語があります。語彙力を高めるためにも、それぞれの意味を確認しておきましょう。

知見

「知見(ちけん)」は、「物事についてよく知り、よく理解すること。またその知識」という意味の言葉です。一般的には、実際に自分が見たり聞いたりして得た知識のことを指します

  • 世界一周旅行に出掛けて知見を広めたい
  • 今後も専門分野に関する知見を深めたい

見解

「見解(けんかい)」は、「物事についての評価や意見・価値判断」という意味の言葉です。主に公的な場や文書などで使われます。

  • 国は環境問題に関する見解を述べた
  • 政治的な議題に対して見解を示せるほどの知識や経験はありません

識見

「識見(しきけん・しっけん)」は、「物事を正しく見分ける能力。優れた意見」という意味の言葉です。

  • 彼女は識見の高い人だ
  • あの人の識見はたいしたことがない

一見識

「一見識(いちけんしき)」は、「人並み外れた優れた物の見方」や「しっかりした考え」という意味の言葉です。「人並み外れた見識」という意味合いがあるため、「見識」よりも能力が高いことを表します。

  • 彼は演劇について一見識を持っている

卓識

「卓識(たくしき)」は「優れた判断力や考え」という意味の言葉です。

  • 卓識を持っていても、この問題を解決するのは難しいだろう
  • 伯父は博学卓識だ

卓見

「卓見(たっけん)」は「物事を正しく見通す優れた意見」という意味の言葉です。「他より優れた」というニュアンスがあります。

  • 彼女は専門家の名に恥じない卓見を披露した
  • 彼は卓見に満ちた論文を発表した

眼識

「眼識(がんしき)」は、「物の良しあしや真偽を見分ける能力」という意味の言葉です。

  • 彼は眼識のある人だ

理解力

「理解力」は「物事の状況や仕組みを正しく判断する能力」という意味の言葉です。

  • 彼は若いのに大変な理解力を持っている
  • 今年の新人は理解力が低い

洞察力

「洞察力(どうさつりょく)」は、「物事の原因や性質を見極めたり推察したりする能力」という意味の言葉です。

  • 彼は洞察力のある批評家として知られている

有識

「有識」は、学問や知識が広く、優れた判断力があるという意味があります。「有識者(ゆうしきしゃ)」は、「高い見識を持つ人」という意味の言葉です。

  • 貧困問題に関する有識者会議が開かれた
  • この問題に関しては、有識者の間でも意見が分かれた
  • 見識の類語には「知見」や「見解」「識見」「卓識」などがあります

    見識の類語には「知見」や「見解」「識見」「卓識」などがあります

見識の英語表現

「見識」の英語表現は、「物事の本質を見抜くこと」や「洞察」などの意味がある「insight」です。

・She has a deep insight into the problem.
(彼女はその問題に関する見識が深い)

なお、「a man of insight」で「見識のある人」という意味になります。

・He is a man of insight.
(彼は見識のある人だ)

  • 見識の英語表現は「insight」、「見識のある人」は「a man of insight」です

    見識の英語表現は「insight」、「見識のある人」は「a man of insight」です

見識にはさまざまな表現方法がある

「見識」は「物事を深く見通して本質をとらえる、優れた判断力」という意味の言葉です。なお、「見識」には「気位」や「見栄」という意味もあるので、あわせて覚えておきましょう。

例文を覚えておけば、シーンに合わせて使い分けられるようになります。類語と英語表現も確認して、語彙力を高めましょう。