近畿日本鉄道は23日、夢洲から近鉄沿線各地を直通で結ぶ列車に必要な「可動式第三軌条用集電装置」の試作品が完成したと発表した。直通列車の実現により、「夢洲から沿線各地に誘客を図ることで、沿線地域の観光振興に貢献したい」と説明している。
夢洲では統合型リゾート(IR)の整備が計画されており、MICE施設やホテル、エンターテインメント施設など、国内外から多くの利用が想定されるという。大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)が地下鉄中央線を夢洲へ延伸する工事を進めており、近鉄は地下鉄中央線と相互直通運転を行う近鉄けいはんな線から近鉄奈良線を経て、同社沿線各地へ直通で結ぶ列車を計画している。
ただし、地下鉄中央線・近鉄けいはんな線は第三軌条方式(台車の集電靴から集電)、近鉄奈良線は架空電車線方式(屋根上のパンタグラフから集電)で集電方式が異なるため、直通列車は両方の集電方式に対応する必要があった。
新たに開発する可動式第三軌条用集電装置は、集電装置を台車枠下に配置し、第三軌条方式の区間では収納機構を展開して集電靴から集電を行う。架空電車線方式の区間では、走行に支障する集電靴を折り畳み、収納する機能を備える。
可動式第三軌条用集電装置の開発にあたり、近畿日本鉄道と近畿車輛、Schunk Transit Systems GmbH、シュンク・カーボン・テクノロジー・ジャパン、ニシヤマが参画。このほど完成した試作品を用い、各種試験に着手する予定となった。なお、5月25~27日にインテックス大阪で開催される「鉄道技術展・大阪」の近鉄ブースにて、可動式第三軌条用集電装置のパネル展示を行う。