クルマの電動化について聞くことが多くなってきたが、街を歩いてみるとほとんど電気自動車(EV)は走っていない。乗用車の電動化が進まないのには価格が高いことであったり、充電インフラが少ないことであったりと、さまざまな理由がありそうだ。この分だと、商用車(トラックやバス)の方が電動化が早いのでは。EVのトラックを発売予定のEVモーターズ・ジャパン(福岡県)はこう考えている。
EV化のメリットと価格の問題
EVモーターズ・ジャパンがジャパントラックショー2022で展示したのは、2022年度中のリリースを予定する中型EVトラックの「F8 series8-S2 GVW 6ton e物流車」。114kWhのバッテリーを搭載しており、フル充電で230km(40km/h、65%負荷時、エアコンオフ)を走行可能だという。「ラストワンマイル」の物流を担うことを想定した車両だ。
同社のブースで話を聞いたスタッフさんによると、商用車は乗用車よりもEVが普及させやすい領域だという。乗用車だとネックになる充電インフラも、物流事業者であれば敷地内に充電器を据え付けられるし、事業所の屋根などにソーラーパネルを取り付け、自家発電した電気を蓄電池に溜めておくなどのエネルギーマネジメントもやりやすい。
大きなバッテリーを積む商用EVは、動く蓄電池としての潜在能力も高い。災害時の非常用電源としてトラックやバスを使うことができれば、地域にとってもプラスだ。
EVは航続距離が気になる乗り物だが、物流、特にラストワンマイルに使うトラックであれば決まったルートを走ることが多いはずなので、無理なルート設定さえしなければ、航続距離に対する不安も払しょくできる。EVモーターズ・ジャパンでは車両にカーボンファイバーを使って軽量化を図るなど、航続距離を延ばす工夫をしているそうだ。
ただ、物流事業者にとってクルマ選びはビジネスの収益に直結する部分なので、コスト意識は高いはず。EVの良さは理解していても、高ければ買えないということになる。高価なバッテリーを使うEVはどうしてもイニシャルコストが上がりがちなので、価格が普及の妨げになりそうだ。
この点についてEVモーターズ・ジャパンとしては、EV商用車の価格をエンジン車に比べ1.5倍以内に抑えていきたいという考え。イニシャルコストの差はランニングコストで取り返せるというのが同社の見立てだ。ガソリンや軽油に比べれば電気代は安いし、EVトラックはエンジン車に比べ簡素な構造なので整備費も安く抑えられる。オイル交換は不要で、回生ブレーキが使えるEVならブレーキパッドの交換頻度も少なくなる。数年でバッテリー交換が必要にはなるものの、それでも長く使えば元は取れるとのことだ。
EVモーターズ・ジャパンは現在、設計・開発を国内で行い、車両は中国で生産して輸入する形を取っているが、来年には国内に最終組み立ての工場が完成する予定。この先は中型トラックのみならず、小型、大型、トラクターヘッドなどのEVも検討中だという。乗用車の世界では、自動車業界にとって新規プレイヤーであるテスラが破竹の勢いだ。商用車の世界でも、EVはベンチャーにとってかなりチャンスの大きい分野なのかもしれない。