帝国データバンクは5月11日、「回転すし」業界の現状と今後の見通しに関する調査・分析結果を発表した。

今後は「1皿100円」で食べられなくなる可能性も

  • 回転すし市場・期末時点店舗数 推移

大手を中心とした2021年度の国内回転すし市場(事業者売上高ベース)は、前年度比8.3%(約600億円)増の7,400億円規模と予測。10年前の2011年度(4,636億円)と比べて1.6倍に拡大し、過去最高を更新する見込みだ。これは、テイクアウト需要が売り上げを下支えしたほか、帰省による「ごちそう需要」や観光客向けの需要が復調傾向にあることが影響したという。

さらに積極的な店舗展開も業績上昇の要因となった。大手5社の店舗数は2022年2月末時点では約2,200店と、コロナ禍前の2019年度比で150店増、10年前比では800店増と、10年で約1.6倍に拡大した。

1世帯当たりの年間消費額は同約1,000円増の1万2,624円(2月まで)。過去最高だったコロナ禍前の2019年度に迫ると同時に、10年前(8,560円)の約1.5倍に上昇した。前年度より店内飲食が回復し、サイドメニューをはじめとした高額商品が「ファミリー層を中心に売り上げが好調」だったことも影響したという。

同調査は今後について、「ロシアのウクライナ侵攻にともなうロシア産水産品の禁輸や物流網の制限などで、メインとなる水産品で世界的に価格が高騰している点」が課題となると指摘。品薄や魚価の高騰により、イクラやサーモンなど人気の定番商品では既に値上げを実施したチェーンもあるほか、「高級ネタを割安に提供する販促キャンペーンが打ち出しにくい」など、原材料高による影響が既に出始めているという。

その上で「もともと、5割に迫るとされる高原価率の回転すしチェーンでは、折からの急激な円安も重なって今後も大幅なコスト上昇が避けられない。過去1年で値上げを実施した外食企業は3割に達するなか、これまでのように『1皿100円』で食べられなくなる可能性」もあるとしている。