西武鉄道「ラビュー」と秩父鉄道「SLパレオエクスプレス」の汽笛吹鳴コラボが5月7日に行われた。西武秩父駅に停車中の「ラビュー」の横を「SLパレオエクスプレス」が汽笛を鳴らしながら通過。「ラビュー」も汽笛を鳴らして見送った。

  • 西武秩父駅にて、通過する「SLパレオエクスプレス」を「ラビュー」が見守る。大音量の汽笛が空にこだました

西武鉄道は2022年5月7日、創業110周年の節目を迎えた。同社の前身である武蔵野鉄道が1912(明治45)年に創業して以来、都心と埼玉県西部を結ぶ大手私鉄として、現在も発展を続けている。今年は1872(明治5)年に新橋~横浜間で鉄道が開業してから150年の節目でもあり、西武鉄道も創業記念日の5月7日以降、さまざまなキャンペーンを企画しているとのこと。節目の1年のスタートともいえるイベントとして、今回の汽笛吹鳴コラボが実現した。

西武秩父駅に集まった報道関係者は、担当者に案内され、駅と秩父鉄道の線路に挟まれた撮影場所へ移動。ホーム上では、一般の利用者や鉄道ファンらが「ラビュー」と「SLパレオエクスプレス」を待っていた。

  • 西武秩父駅の3番線ホームで発車を待つ「ちちぶ26号」と4000系の普通電車。ホームの端に一般の利用者や鉄道ファンらが集まった

11時47分頃、「ラビュー」を使用した特急列車「ちちぶ11号」が西武秩父駅に到着。「ラビュー」は通常、特急専用ホームである1番線に停車するが、今回の汽笛吹鳴コラボに備え、秩父鉄道の線路に隣接した3番線に入線した。「ラビュー」はその後、折返しの西武秩父駅12時24分発「ちちぶ26号」になるため、清掃作業などを開始する。

2・3番線ホームの先端はテープで囲われ、創立110周年と鉄道開業150周年をアピールするエンブレムを着用した駅員らが待機していた。一般の利用者や鉄道ファンらが徐々に増え、ホームがにぎわう様子がうかがえた。

「SLパレオエクスプレス」が通過するまでの間、「ラビュー」は前照灯を使ったパフォーマンスを披露。通常のハイビームから笑顔のようなヘッドライト二重丸模様など、さまざまな表情を見せた。最終的にはスマイル模様のテールライトで落ち着き、「SLパレオエクスプレス」を待つ。ライトの性能に驚いたことはもちろんだが、見事な曲線を描く「ラビュー」のフロントガラスに映った青空の美しさにも心を奪われた。

  • 西武秩父駅付近を通過する秩父鉄道5000系と「ラビュー」。青空の下、5000系は三峰口駅へ向けて走り去った

  • デキ500形牽引の貨物列車。デキ500形は豊富なカラーバリエーションが特徴の電気機関車

  • 12時20分頃、「SLパレオエクスプレス」が西武秩父駅付近を通過。その直後、「ラビュー」も汽笛で応えた

秩父鉄道の線路上に目を移すと、かつて東急電鉄や都営三田線で活躍した電車たち、電気機関車デキ500形牽引の貨物列車など、バラエティに富んだ列車たちが通過していく。貨物列車が通過する際、貨車の両数を数えてしまう癖があるのは、筆者や鉄道ファンだけではないだろう。

12時19分、「SLパレオエクスプレス」が御花畑駅に到着。発車後、ゆっくりと加速し、上り勾配にさしかかった。近づいてきた際、牽引する蒸気機関車C58形363号機を確認してみると、ヘッドマークは装着されていなかった。

12時20分頃、「SLパレオエクスプレス」が「ラビュー」の4号車あたりまで近づいたところで、C58形363号機の汽笛吹鳴が始まった。西武秩父駅を通過するまで、力強い汽笛の音が鳴り響く。それに呼応するように、「ラビュー」も汽笛を鳴らす。軽やかな音で、「SLパレオエクスプレス」に返事していた。「SLパレオエクスプレス」の乗客たちは客車の窓を開け、西武秩父駅の駅員や鉄道ファンらに手を振っている。西武秩父駅のホームでは、駅員らが「SLパレオエクスプレス」に向かって敬礼し、最後は乗客に手を振って列車を見送った。

当日は風が強く、煙が流れてしまったものの、「SLパレオエクスプレス」の堂々とした走りは多くの人々を魅了した様子。昭和から走り続けてきた蒸気機関車と、最新型の特急車両「ラビュー」のコラボは、鉄道ファンだけでなく一般の利用者にとっても感慨深い瞬間だったと言えるだろう。

  • 定刻で発車した「ちちぶ26号」。駅員らが敬礼で見送った

「SLパレオエクスプレス」を見送った後、「ラビュー」は「ちちぶ26号」として、西武秩父駅を12時24分に発車。秩父観光を終えた観光客らを乗せ、駅員らが敬礼する中、汽笛を高らかに鳴らし、池袋駅へ向かった。銀色の車体は太陽に照らされて輝き、大きな窓からは乗客たちの笑顔も見られた。

ゴールデンウィーク期間中の西武秩父駅周辺は観光客が戻り、活気にあふれた様子だった。行動制限がない大型連休は3年ぶり。満喫した人も多いのではないだろうか。5月初旬にしては暑く感じる晴天の中、駅の各所でツバメが巣を作り、にぎやかな鳴き声が聞こえてきた。

西武鉄道は今後も創業110周年と鉄道開業150周年を盛り上げるため、さまざまなキャンペーンを実施する予定とのこと。通勤通学だけでなく、秩父・川越観光などで西武鉄道を利用する際には、ぜひ注目してほしい。