3月の東京モーターサイクルショーでは、前回(2019年)と明らかに違うところがあった。電動バイクの出展が大幅に増えていたのだ。自動車の電動化とは少しアプローチが違うものの、バイクの電化も着々と進んでいる様子。各社の最新モデルをチェックしてきた。

  • ヤマハ「E01」

    電気のバイクが増えている? 「第49回 東京モーターサイクルショー」(東京ビッグサイトにて3月25~27日に開催)で現状を確認してきた

交換式バッテリーを推進するホンダ

まずは四輪車でも電動化の推進を宣言しているホンダ。今回同社が展示した電動バイクはすでに法人向け販売を始めている「ベンリィe:」「ジャイロe:」「ジャイロキャノピーe:」の3台で、全てバッテリー交換式だ。

ジャイロe:およびジャイロキャノピーe:は原付免許で乗れる原付一種(50cc以下)規格のみ。ベンリィe:のみ原付二種規格を選べる。ベンリィe:の価格はどちらも36.3万円。原付一種タイプの航続距離は30km/h定地走行モードで87kmとなっている。

  • ホンダの電動バイク

    ホンダが展示した交換式バッテリー搭載の電動バイク3台

デザインはすべて同名のエンジン車に似ており、シート下にバッテリーを備える。特徴は取り外して充電するタイプのバッテリーは同一規格で、今回のショーでは開発中のバッテリー交換ステーションも見ることができた。

このバッテリーはコマツの電動マイクロショベルも採用しており、インドでは電動三輪タクシー向けのバッテリーシェアリングサービス事業を始める予定だという。

ショー閉幕後の3月30日には、国内二輪車4メーカーとENEOSホールディングスが共同で、この交換式バッテリーを使ったシェアリングサービスおよびインフラ整備を目的とした新会社Gachaco(ガチャコ)の設立を発表。日本はプラットフォームづくりが不得意といわれているが、スクーターを含めたマイクロモビリティ向けバッテリーでは、ホンダが提案した方式が世界標準を目指して動き始めているのだ。

ヤマハは実証実験で「E01」を導入

以前から電動スクーター「E-Vino」などを販売してきたヤマハ発動機は、電動バイクをショーの主役の1台に位置付けた。小型限定普通二輪免許で乗れる原付二種(51~125cc)クラスの新型車「E01」だ。

  • ヤマハの電動バイク「E01」

    ヤマハの電動バイク「E01」

E01で特筆すべきは、一般ユーザーを対象とした実証実験で導入すること。5月9日~22日に参加者を募集し、7月から3カ月間、100台を月額2万円でリースするという。

60km/h定地走行モードで100km以上走れる大容量バッテリーをステップ部分に格納し、通常のスクーターではヘッドランプがある位置に充電口を置くというデザインも特徴だ。90%までの充電時間は急速タイプで90%まで約60分、車両の脇に置かれていたポータブル型で約14時間だ。

ヤマハはさらに、2018年に発表した電動トライアル競技用バイク「TY-E」の進化形である「TY-E2.0」も出展した。今年からトライアル世界選手権へのスポット参戦を計画しているという。

前衛的デザインのBMW

BMWモトラッドは新型車「CE04」をブース中央に展示。ブリーフィングで最初に紹介するという主役的扱いだった。

  • BMWモトラッドの電動バイク「CE04」

    BMWモトラッドの電動バイク「CE04」

BMWにとっては「Cエボリューション」に続く電動スクーターの第2弾となる。650cc級の車格でありながら、日本では車検のない軽二輪カテゴリー(126~250cc)であることはCエボリューションと共通だが、デザインはまったく違う。

CエボリューションはBMWが少し前まで販売していたエンジンスクーター「C650シリーズ」に近いのに対し、CE04はアニメから飛び出してきたようなアヴァンギャルドなフォルム。これだけで欲しくなる人が出てきそうだ。

満充電での航続距離はカタログ値で130kmと電動バイクの中では長め。オプションの充電装置を使えば1時間で80%の充電ができる。161万円という価格は、実はCエボリューションの約5万円高だ。

3つのブランドを見ると、法人向けから普及を進めるホンダに対し、ヤマハとBMWは個人向けの展開であり、ホンダは原付一種、ヤマハは原付二種、BMWは軽二輪であることを含め、戦略に違いがあって興味深い。

新興ブランドも続々!

今回のショーでは新興ブランドの電動バイクも目立っていた。中でも存在感を放っていたのはXeam(ジーム)のブースで、米国ゼロモーターサイクル、中国niuなど6ブランドの20車種を展示していた。

  • Xeamのブース

    Xeamのブース

コハクジャパンが輸入するSur-ron(サーロン)はオフロード走行に特化した電動バイクのブランド。国内でワンメイクレースを開催する一方、公道走行可能な車種も販売している。

  • Sur-ronの電動バイク

    Sur-ronの電動バイク

エンジン車のスポーツバイクに近いデザインで目を引いたのは、エスターがインポーターとなるEnergica(エネルジカ)だ。細いパイプを溶接で組み上げたトレリスフレームがイタリア的。「MotoE」と呼ばれる電動バイクの世界選手権レースでマシンを供給してきたブランドでもあり、実力も高そうだ。

電動車とエンジン車のブランドが同居するブースもいくつかあった。ドミノピザやDHLなどが配送用に導入している電動3輪スクーターを販売する日本のブランドaidea(アイディア)は、レトロなデザインのプジョーのエンジンスクーターも並べていた。

  • アイディアのコンセプトモデル「AA-1」

    アイディアのコンセプトモデル「AA-1」

イタリアのファンティックやランブレッタ、台湾のSYMを輸入するモータリストは、スペイン生まれの競技専用電動キッズバイクTORROT(トロット)に加えて、オリジナルブランドの電動オフロードバイクも出展していた。

  • TORROTの電動キッズバイク

    TORROTの電動キッズバイク

会場を見て感じたのは、カーボンニュートラルなどの環境面を念頭に置いた車種は少数で、多くは電動ならではのデザインや走りをアピールしていたことだ。クルマに比べると趣味的な要素が強いためもあると思うが、電動化に興味を示す人を増やすには、このように乗り物そのものの魅力をストレートに訴えるのが効果的なのではないかと思った。