東京・新宿歌舞伎町にあった映画館「新宿ミラノ座」の跡地で建設が進められている超高層複合施設「東急歌舞伎町タワー」の開業が2023年4月になることが、記者発表会の場で明らかになった。

  • 超高層複合施設「東急歌舞伎町タワー」

東急歌舞伎町タワーは、地上48階、地下5階、塔屋1階、約255メートル。敷地面積は4,603.74平方メートル、建築面積は約3,600平方メートル、延床面積は約87,400平方メートルとなっており、ホテル、劇場、映画館のほかライブホールなどが入る、大規模施設となる。

  • 「東急歌舞伎町タワー」記者発表会に登壇した(左から)TSTエンタテイメント 運営事業本部長 萩原要氏、東急 新宿プロジェクト企画開発室室長 兼 TSTエンタテイメント代表取締役社長 木村知郎氏、東急レクリエーション取締役常務執行役員 映像事業部長 久保正則氏、東急ホテルズ 常務執行役員 新宿エリア統括 宮島芳明氏

記者発表会では、施設概要やコンセプトなどがメディアに向けて発表された。

歌舞伎町を世界からの観光客を迎える観光拠点に

宿場町として栄えた新宿は、戦後に道義的繁華街を目指し、官民一体となって歌舞伎町の復興計画が立てられ、以後文化の発信地として発展してきた。東急グループでは、新宿ミラノ座を半世紀にわたり運営してきたが、2014年に閉業。その跡地に「東急歌舞伎町タワー」は建設されており、2019年に着工した。

  • 「東急歌舞伎町タワー」概要

建物の建築デザインは永山祐子氏が手掛け、地域の歴史的文脈である水を概観モチーフ「噴水」として継承。建物各所で、水を意味する文様「青海波」を導入する。

歌舞伎町一丁目地区は2018年には国家戦略特区に認定されており、道路整備や空港リムジンバスの乗降場など観光インフラの整備が進められている。加えて、映画館、劇場、ライブホール、ホテルなどの観光機能を一体として整備することで、世界有数の繁華街である歌舞伎町を都市観光拠点へとアップデートさせる狙いだ。

  • イベント開催イメージ

コンセプトは「"好きを極める場"の創出」。近年はコロナ禍により、外出などもままならない状況が続いているが、"好きなもの"への消費は落ちていないのではないかと考え、好きなものを極める方法というのは多岐に渡るものとなっている。劇場やライブだけでなく、レストランでのコラボメニューやホテルのコラボルーム、限定商品など、ここにいるだけであらゆる形で"好きを極める"ことができる場所を目指していくという。

  • シネシティ広場と連動したイベントイメージ

このプロジェクトの代表を務める、東急 新宿プロジェクト企画開発室室長 兼 TSTエンタテイメント代表取締役社長の木村知郎氏は「江戸時代から歌舞伎町に流れている、庶民発の大衆文化の流れをしっかりと受け止めながら、それを未来に向けて輝かしく進めていきたい」と語った。

エンタメ施設が集結、新ブランドも続々

東急歌舞伎町タワー各用途の事業責任者が各施設の概要について説明。まず、TSTエンタテイメント運営事業本部長の萩原要氏から、ライブホールと劇場について詳細が明らかにされた。

ライブホールの名称は「Zepp Shinjuku(TOKYO)」。B1~B4に位置し、東京のみならず、地方や海外からも来客を見込んでおり、名称に世界一のターミナル駅である「新宿」を採用。JR新宿駅から徒歩7分の好立地となっており、キャパシティはスタンディングで1,500名。360度LEDビジョンなど多彩な演出への対応が可能な設備を導入している。

  • ライブホール「Zepp Shinjuku(TOKYO)」

Zeppはこれまで、コンサートホールのスケール感とライブハウスの一体感の双方の利点を取り込んだライブホールを国内8館、海外開業予定を含め2館を展開。それぞれの場所で同仕様、同規格の設備を配置することにより、ライブツアーが開催しやすくなっている。

加えて、「Zepp Shinjuku(TOKYO)」では既存の会場のように、単にここでライブをやるだけではなく、同タイミングで上層階ホテルでのコラボルーム、飲食街でのコラボメニュー、映画館での関連映像の上映など、タワー内で連携することを想定している。

6~8Fは劇場「THEATER MILANO-Za」となる。半世紀にわたり歌舞伎町の発展に寄与した新宿ミラノ座の名を継承するライブエンターテインメントシアターで、演劇や音楽、映画をはじめとした映像作品など多種多様なエンターテインメントコンテンツを発信する劇場となる。総客席数は約900席。舞台最前から1階席最後列までは約19mとかなり近い距離感を実現しており、演者と観客の一体感を堪能できるという。

  • 劇場「THEATER MILANO-Za」

また、舞台が一部取り外しできるようになっているほか、1階席の客席は1席単位で取り外しが可能となっており、張り出し舞台や花道なども設置できる。さらにフライングや多量の水を使った演出も可能で、多彩な演出プランにも対応できるようになっている。また、客席壁面にはフルカラーLEDが埋め込まれており、作品のテーマカラーなどに変更することで開演前から作品世界に没入することができるという。

「可能であれば、この劇場では1か月2か月といったロングランの公演を上演していきたい。規模感は違うが上のホテルと連携して、ラスベガスで行われているような長期公演にも挑戦していきたい」(萩原氏)

続いて、東急レクリエーション取締役常務執行役員 映像事業部長の久保正則氏から映画事業について概要が話された。

東急レクリエーションではシネコンチェーン「109シネマズ」を全国に展開している。かつて歌舞伎町で新宿ミラノ座を運営していたこともあり、「この地で映画館を復活させることは悲願」(久保氏)でもあったという。

今回、同タワーの9~10Fに設置される映画館「109シネマズプレミアム新宿」は、109シネマズの中でも新しいブランドとして展開。8スクリーンに総席数752席で、全席がプレミアムシートとなっており、同社の通常よりも半数以下の座席とゆったりとした座席となっているため、かなり贅沢な空間で映画を満喫できる。

  • 全席プレミアムシートの映画館「109シネマズプレミアム新宿」

また、映画館鑑賞者専用のラウンジなど、プレミアムなスペースを確保。三面ワイドビューシアター「ScreenX」も導入されており、迫力ある音楽ライブの映像なども届けることができるという。

  • 三面ワイドビューシアター「ScreenX」

最後に、東急ホテルズ 常務執行役員 新宿エリア統括 宮島芳明氏よりホテル事業について説明が実施された。

東急ホテルズとしては、新宿への展開は初。同タワーに「HOTEL GROOVE SHINJUKU(ホテル グルーヴ 新宿)」、「BELLUSTAR TOKYO(ベルスター 東京)」といった、2つのこれまでにない新しいカテゴリ、グレードのホテルを誕生させる。

18~38Fの「ホテル グルーヴ 新宿」は、各エンターテインメント施設での余韻に浸るとともに、歌舞伎町の歴史やこの地で生まれ続けるアート・音楽などのグルーヴ感を感じられる滞在時間を用意。

  • 「HOTEL GROOVE SHINJUKU(ホテル グルーヴ 新宿)」

39~47Fの「ベルスター 東京」は、7mのワイドビューの窓がある客室などで東京の夜景を堪能できるほか、3層吹き抜けで圧倒的な眺望のレストランやスパなども提供されるという。

  • 「BELLUSTAR TOKYO(ベルスター 東京)」© CGworks Inc.

また、17Fには街の社交場としてレストラン、テラスを展開。オープンエアのテラスにはDJブースなどもあり、開放感のあるエンターテインメント空間を形成するほか、パーティールームも複数用意しており、次世代を担うアーティストたちの舞台となることも想定する。宮島氏は「さまざまな国、ジェンダー、ジェネレーションが、新宿で羽を伸ばしていただける空間にしてきたい」と展望を語った。

東急歌舞伎町タワーは2023年1月11日に竣工、2023年4月に開業を予定している。