メインダンサー&バックボーカルグループ・超特急が23日、埼玉県・埼玉 川口総合文化センター・リリアでワンマンライブ『BULLET TRAIN 10th Anniversary Tour 2022「Progress」』の初日を迎え、定番の人気曲から新曲まで、アンコールを含め全22曲を披露した。

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今回のライブは遊園地をイメージしたステージセットが用意され、ライブスタート直後は変顔や癖のあるダンスなど“超特急の原点”とも言える面白さ、シュールさを楽しめる楽曲が次々と登場する。しかしそれまでの流れを遮断するように、正統系の激しさや艶っぽさで観客を魅了するダンスヴォーカル曲が始まったかと思えば、突然ポップチューンが織り込まれるなど、メンバー自身も「怒涛の展開」語る通り、様々な世界観の楽曲がジェットコースターのように次々と繰り出される。

10年間アーティスト活動で培われたパフォーマンス力や音楽性の幅に加え、俳優活動などで得た表現力も活かし、オリジナリティ溢れるライブを重ねてきた超特急だが、今回のツアーにおいても進化を重ね、パワフルかつ新鮮な驚きのあるステージを作り上げている。

感情豊かで伸びやかなタカシのヴォーカルは超特急のパフォーマンスのベースとなっているが、メインボーカルは1名なので、ライブの間はほぼノンストップで歌い続けなければならない。しかしライブ終盤になっても疲れや勢いの衰えを全く感じさせる事なく、終始パワフルに歌い続ける姿からは、末っ子ながら超特急の屋台骨として抜群の安定感を見せる。

そしてカイ・リョウガ・タクヤ・ユーキは、絶妙なチームワークから作り上げられる鮮やかなダンスの中に、演劇的手法や椅子を使ったパフォーマンスなど、舞台アートの要素も加えながら、繊細な表情による感情表現や、指先など細やかな所まで意識を行き届かせる仕草で楽曲の世界観を丁寧に表していく。毎回様々なパフォーマンスへの挑戦も行っているが、今回はプロジェクションマッピングにパントマイム、ダンス、アクロバットなど個々が持つ強みを掛け合わせたパフォーマンスを披露。新たな表現への挑戦だけではなく、過去に実施をした手法も取り入れ、今表現できる最高のパフォーマンスを形にした。超特急のステージは音楽アーティストのライブステージであると同時に、ストイックに進化を続けるパフォーマンスステージという側面も持ち合わせており、毎回新鮮な驚きと楽しみを与えてくれるので、目を離す事ができない。

これだけ動いている中、公演中はほとんど休みがなく、圧倒されてしまった客席からは、声出し禁止にもかかわらず、時折感嘆するような声や「すごい」などの言葉が思わず漏れ出てしまう場面も見られた。

MCコーナーでは和気あいあいとリラックスした雰囲気でトークを展開していく。タカシが髪の色を8号車(超特急のファンの総称)のカラーであるピンクに変えたが「(僕は)8号車推しなので、ピンクに染めたんです」と話すと、客席にも笑顔がこぼれる。タクヤが前髪を編み込みにした話題では「前髪が邪魔だと、ちゃんと8号車が見えないからね」とメンバーが口にすると、タクヤが照れるような表情を見せた。

ライブ終盤のMCの際には、リョウガが「突然ですが、大事なお知らせがあります」と切り出し、「新メンバーオーディション」の解禁を知らせる映像が流された。

会場が思わず驚きの声を上げる中、リョウガが「超特急は10周年を迎える事ができましたが、メンバーと話し合った結果、更なる進化が必要であると、これまで以上に強く思う事があり、オーディションを開催させて頂く運びとなりました。突然のことで(8号車の皆さんの中には)『なるほど』と(納得に)ならない方もいらっしゃると思いますので、まずはメンバーの気持ちをお伝えさせてください」と切り出す。

そして「僕が先陣きりましょうか」と柔らかな笑顔でタクヤが口を開き、言葉を続ける。「色々な感情があると思いますが、とりあえずメンバーの話を、まずは聞いて欲しいです。10年やってきて色々な事がありましたが、更に進化をしたいですし、一緒にみなさんと東京ドームに立ちたいです。僕たち5人では力不足という事は思ってはいませんが、さらに上に、何歩も上に走って行きたいと思うんです。色々な覚悟を持って発表しましたし、想いはそれぞれだと思います。でも着いてきて欲しいな、と素直に思います。この景色(ライブ会場)をみるために僕たちは10年やり続けています。その先も、もっと先も、僕たち超特急にこの景色を見せてください。よろしくお願いします」とまっすぐ客席を見据えながら、1つ1つの言葉を丁寧に口にした。

続くタカシは「ずっと何回もメンバーやスタッフさんとも話し合ってきてきました。何が正解か悩みながらも、僕たちはもっといろんな景色を観たいし、8号車の皆さんにも色々な景色を見せられるようになりたい。だから新メンバーを募集して、さらにパワーアップできるグループにしたいと心の底から思いました。これから先も、ずーっと長く続けていくには、力がもっと必要です。もっと上を目指したい。僕たちは前を向いて走りながらも、8号車の皆さんも誰1人置いて行きたくないですし、後悔をさせない事を証明したい。これからも温かく見守っていただけると嬉しいです」と続ける。

カイは「僕は……ぶっちゃけると、賛成でも反対でもない。でもこのオーディションを行う事で、面白い出会いがあると良いな……という想いで発表をしました。色々な感情が入り混じっていると思いますが、どんな人が超特急に興味を持っているのかとか、楽しみでもあります。このオーディションはこれから先の10年に向かうためでもある。僕たち5人で……という事もありますが、より早く上の段階に進むため、新メンバーを募集して前進をして行きたいと思っています。色々な気持ちはあると思いますが、僕たち超特急を、僕の言葉を信じてついてきて欲しいです。今までの10年、僕自身は8号車の皆さんに嘘をついた事はありません。僕の想いを言葉や文字で伝え続けてきました。こんな僕を信じて、超特急についてきて欲しいと思います」と素直な言葉で気持ちを口にした。

ユーキは強い覚悟と決意を滲ませた表情で「正直なところ10年活動をしてきた中、このオーディションを開催するのは上を目指す以外の何物でもない選択です。8号車の皆さんと夢をかなえたい。8号車のみんなと作り上げてきた超特急なので、これは変化ではなく、進化するためのものとして前向きに考えています。8号車のみんなを誰1人置いていく事なく、一緒に作り上げたいと思っています。実はメンバーが7人から減った時から僕自身は(こうした取り組みを)考えていました。僕らもタカシのボーカルの声を聴いて踊っている中、タカシが100%の力を出せないライブは正直違うと思っています。バックボーカルというコンセプトで始まった僕たちだから、それは崩したくない。ワクワクできるような、明るい未来の為にこのオーディションを開催します。それぞれの人生がある中、僕たちは超特急にかけています。夢の場所を必ず叶えたいので、前向きについてきてもらえたら嬉しいです」と終始客席をまっすぐに見つめながら語りかけた。

最後にリョウガは「否定的な考えを持ったメンバーはいなかったことをまずは知っていただきたいです。募集する方の具体像はこれから決めていきますが、未知なる出会いや化学反応を求めて探して行きたいと思っています。今の形から変わってしまう事に対して、色々な気持ちになる方もいらっしゃると思います。それに対して『うるせえ! ついてこい』……という気持ちは一切無く、僕の気持ちとしては7人の時代から10年以上、色々な道のりを走ってきた全てを無駄にしないためにも、これからも超特急と一緒にいて欲しいと心から思っています。正直僕たちもこれから壁にぶつかるかもしれません。でもそんな時に支えてくれるのが、今まで僕たちの軌跡を知っている皆さんだと思っています。どうかこれを聞いてくださった皆さんは一緒に見守ってくださる事はもちろん、一緒に更なる進化を求めて、新しい超特急の未来を目指して、一緒に走っていただけたらと思います。これからもよろしくお願いします」とリョウガらしい言い回しを交えながらも、真摯に前を見据え8号車へ呼びかけた。

そして「色々な壁にぶつかったり、山あり谷ありかの時もあるかと思いますが、僕たちは常に前を向いて進んで行きたいと心から思っていますし、僕たち超特急を信じて欲しいなと思っています。これからもこの先の新しい、明るい空に向かって走って行きましょう」とライブはラストスパートへ。

アンコール曲には今後の明るい未来を感じさせる楽曲を選び、「これからも僕たち超特急と明るい未来に向かっていきしょう」「超特急と青春しましょう」と観客へ呼びかけ、観客も手に持つペンライトを大きく振ったり拍手をしたりと、声にならならい力強いエールをメンバーへと送り続けていた。

撮影:深野輝美