メインダンサー&バックボーカルグループ「超特急」が、10日に3年ぶりとなる新作アルバム『Dance Dance Dance』をリリースした。カッコ良さや完璧さが正義とされていた既存のダンス&ボーカルグループの常識を次々と打ち崩し、日本武道館公演なども成功させながら今年結成10周年を迎える彼らが放つ新作は、“世代や国を超えてみんなが踊れる作品”となっている。

これまで面白さや独特なセンスの楽曲を発信してきた彼らだが、今回は韓国・ブラジル・ロシアなど多様な国のサウンドや言語などを取り入れつつ、超特急らしいダンスサウンドへと昇華させた楽曲を今回のアルバムには詰め込んでいる。

久々となるアルバムでなぜ今回このような挑戦を選んだのか。併せてデビュー10周年を迎えるにあたっての今の心境や今後についてから、昨今大きな盛り上がりを見せているダンス&ボーカルグループシーンについてもどのように見ているのか聞いてきた。

  • アルバム『Dance Dance Dance』をリリースする超特急

    左からカイ、リョウガ、タクヤ、ユーキ、タカシ 撮影:宮田浩史

■コロナ禍で思うように動けない今、超特急のやり方で世界を元気に

――まず今回のアルバム『Dance Dance Dance』がどのようなアルバムになっているか教えてください。

タカシ:超特急としては3年ぶりのアルバムとなるので、色々と挑戦的な取り組みを行いました。まず今回のアルバムは、ここ1~2年コロナ禍で思うように動けない世の中となってしまった中、聴いてくださる皆さん、そして日本、世界を、超特急の楽曲やパフォーマンスで元気にしたいという思いを込めて作りました。そのためサウンドや歌詞の中にも「世界」をキーワードに、様々な国の要素を取り入れています。

ユーキ:実は色々な国の音に触れる中、僕自身も初めて知ったサウンドもあったりなど、色々な発見もあったんです。今回は僕たちもいつも以上に楽しみながら取り組ませてもらったアルバムでもあります。

タクヤ:色々なサウンドを聴いているだけで、世界旅行をしているような気分も味わえると思います。あと本当はコロナ禍でなければ、アルバム発売は去年(2020年)のはずでした。そうなっていたら、恐らくテーマもコンセプトも楽曲も、全く別物の作品になっていたと思います。

カイ:今みたいな世の中の状況だからこそ「世界をパフォーマンスで元気に」っていうテーマも生まれたもんね。

リョウガ:あと超特急といえば、元気でギャイギャイしたイメージを持っていると思いますが、今回は皆さんがイメージされている「超特急」というよりは「カッコ良さ」強めでお届けさせてもらっています。もちろん元々持っている"超特急らしさも”それぞれの楽曲にスパイスとしては入っていますが、全体的にはスタイリッシュで、キメている楽曲が多いのでそうした絶妙な塩梅も気持ちいい仕上がりになっていると思います。

――今回のアルバムで皆さんが特に“挑戦”だったと感じている部分をお聞かせください。

カイ:僕は楽曲の9割が新曲で構成されていることですかね……。14曲中、新曲13曲と知った時は、最初とても驚きました。でも今の時代は多くの方がサブスクリプションを利用して気軽に音楽に触れることができるので、シングル曲とは別にアルバムをほぼ新曲で構成するのは今の時代に合っているとも思いましたし、こうしたサービスが浸透したからこそ挑戦できるのだとも思いました。

それと新曲が増えることは、僕たちにとってもレパートリーやパフォーマンスの幅、いつもユーキを中心に作ってくれているライブの選択肢も広がることになるので、嬉しくもあるんです。ただこの後ライブが控えているので、ダンスの振り入れがすごく大変そうかな……というのが少し心配でもあります(笑)。

タクヤ:ダンスパフォーマンスは今まさに作り込み中ですが、楽曲の世界観に合わせた色々な国のステップやダンスはもちろん、敢えてその中に流行のステップを取り入れてみたり、振り切って超特急らしくやっていくのも面白そうとか、色々と試行錯誤をしている所です。また振付師の方も韓国でも活躍されている日本人ダンサー・YUMEKIさんをはじめ、初めてご一緒するダンサーさんたちもいらっしゃるので、表現などにも新たな広がりが出るのではと思っています。

これからどういうものになっていくのか僕たち自身も楽しみであるのと同時に、カイがさっき言っていたように、振り入れが大変になるとは思うのですが……ここはなんとか乗り切りましょう!

リョウガ:それ今、メンバーに向けて語りかけてる?(笑)

ユーキ:僕は「Добрый день(ドーブリジェン)」かなと思います。ダンサー4人だけで歌・パフォーマンスを表現したことが挑戦だったと思っています。サウンドもロシアンサウンドがベースになっていますが、これまでの超特急はもちろん、J-popでもあまり用いられなかったジャンルなので目新しさがあると思います。

音もすごくカッコ良いんですよ。一方で歌詞にはロシア語、英語が使われていますが「スパシーバ」など1度は耳にしたことがある挨拶などの言葉が中心になっていて親しみやすさを感じてもらえると思いますし、色々な意味で新鮮味のある1曲に仕上がっています。

リョウガ:僕は今回のような色々な要素を取り入れたアルバムを出せるのも、10年間色々なジャンルの楽曲をタカシが歌ってきたからこそ、作れたんじゃないかなと思っているんです。

タカシ:うーん……。確かにデビュー当初の自分に今回の試みをやってみてと言ったら難しかったかもしれないけど……。今回のアルバムは、色々な世界をテーマにしていて、今の自分の最大限を出してはいますが、その世界観に100%入れているかというと、そうではない部分もあるとは正直思っているんです。行ったことがない国もありますし、言葉も教えて頂いた訳ではなく、自分で勉強をして、消化をさせて落とし込んでいます。

だから「この国のイメージはこういう感じかな」と自分なりに噛み砕いて、今の僕が持っているものを最高の所まで振り切って出していますが、もしかしたら解釈が間違っているものもあるかもしれません。でも超特急として、超特急なりに、今回様々な国をテーマに曲を作るとこうなるよ、というのを最大限表現したつもりです。

■大きな目標を見据えつつ、まずは今そして少し先の未来へ向かって全力で

――2021年、超特急として10周年を迎えます。改めて今のお気持ちや、今後のビジョンなどについてお聞かせください。

カイ:僕個人的には「もう10年も経ってたんだ」という気持ちです。思い返すとこの10年間は、常に今を、そして少し先のライブや新曲などを見据えて、前だけを向いて進み続けてきました。その間に様々な体験や経験も経たことで、楽曲やパフォーマンスの引き出しを増やして"超特急としての強み”も積み上げられた10年間でもあったと思います。だからこそ今回のような新しいことづくしのアルバムにも取り組むことができたり、初期曲にも今の僕たちでできるようになった表現を加えて、より洗練させることもできるようになったと思っています。

今後についてですが、ずっと目標として公言しているドーム公演やスタジアム公演を目標とするものは変わりませんし、次の節目である15周年はさらに大きなステージに立ちたいとも思っています。でも今この瞬間の僕たちの気持ちは、今回のアルバムやこの後に控えているライブに対して向いています。これまでも、これからも、まずは常に今の自分と、少し未来の自分を見据えつつ、前を向きながら進んでいけたらと思います。

ユーキ:10周年という節目は迎えましたが、気持ちは変わっていないです。前を向いて、グループを常に前進させていくだけです。

タクヤ:実は今回のアルバム発売日が2021年11月10日なんですが、全部足すと8号車(超特急のファンの総称)の"8”なんです (※注釈:2+0+2+1+1+1+1+0=8)

さらにアルバム発売日の11月10日は"10周年イヤー”の10、配信シングル「カチ カジャ(※ハングル表記)」の発売日は9月15日でさっきカイが話した"15周年”の15。今回のアルバムやシングルは、みんなが話してくれた15周年、そしてその先の未来に向けて超特急を飛躍させるような作品になると思っています! ……この話を信じるか、信じないかは、あなた次第!(笑)。

リョウガ:都市伝説なの!?

ユーキ:そういえば発売日、全部関連性がある数字だね、初めて気づいた!

タクヤ:実はついさっき、たまたま気づきました(笑)

リョウガ:多分偶然が重なっただけだと思うけど……。

タクヤ:いや、ここは自分たちのエピソードとしてこれからそういうことにしていこうよ(笑)

一同:(笑)。そうしよう!

■超特急は噛めば噛むほど「スルメ」みたいなグループ!

――最後に昨今、国内外問わずダンス&ボーカルグループがエンターテインメント業界において大きな勢いを見せています。シーンとしては大きな盛り上がりも見せており、ダンス&ボーカルグループのオーディエンス自体も増えてきているように感じます。超特急の皆さんとしてはこうした状況をどのように見ていらっしゃるのでしょうか。

カイ:ダンス&ボーカルグループはそれぞれのグループで各自の色があるので、それらを活かしつつ、ダンスボーカルシーン、そしてエンタメ業界自体がどんどん盛り上がっていくのはとても良いことだと思いますし、僕たちにとっても嬉しいです。盛り上がれば盛り上がるほど音楽性も多様化していきますし「色んな音楽があって、どのグループも良いね」という流れも生まれてくると思うんです。

そうした中、さらに「超特急、良いよね」って言ってもらえることが理想だと思っています。僕たちは今と変わらず自分たちの色を出し続けながら、自分たちらしさを突き詰めていけたらと思っています。

ユーキ:僕らは僕らにしか出せない色があるので、それを常に発信していきたいよね。

タクヤ:超特急は噛めば噛むほど味わいが出てくる、スルメみたいなグループだからね(笑)。

リョウガ:噛めば噛むほど病みつきになるっていうね(笑)。とはいえ、8号車が流れていっちゃうじゃないかと、ちょっと心配です……。でもシーンが盛り上がれば、逆に新たな8号車も乗車してくれるかもしれないもんね!