社会人になると見聞きするようになる言葉に「翻意」があります。「翻」という文字は日常生活であまり見聞きしないため、意味を正しく理解できていない人もいるかもしれません。
本記事では「翻意」の意味や使い方・例文をご紹介します。また、同じ読み方の「本意」との違いや熟語の構成についても解説します。さらに「翻意」の類語・対義語・英語表現をご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
「翻意」の意味とは? 「本意」との違いって?
「翻意」は「ほんい」と読む言葉です。ここでは、「翻意」の意味や同じ読み方の「本意」との違いについて解説します。
「翻意」の意味
「翻意」を辞書で調べたときの意味をみてみましょう。「翻意」は以下のような意味を持っています。
意味: 決意をひるがえすこと。一度決心したことを変えること。
「翻」と「意」、それぞれの意味もご紹介します。
意味1: ひるがえる。ひらひらする。
意味2: ほかを意のままに動かす。
意味3: 急に変える。裏返しにする。
意味4: 対応するものと入れ替える。
意味1: 心の中の思い・気持ち・考え。
意味2: 言葉や物事に含まれている内容。
意味3: 思う。
「翻意」は「翻」の意味である「ひるがえる・急に変える・裏返しにする」と「意」の意味である「心の中の思い・気持ち・考え」が組み合わさってできています。
上記により「翻意」は、一度決断・決心したことを変えるときに使う言葉となりました。
「翻意」と「本意」の違い
「翻意」と同じ読み方の言葉に「本意(ほんい)」があります。「本意」の意味は次の通りです。
意味1: 本来の考え。
意味2: 本当の気持ち。
意味3: 和歌・連歌・俳諧における、物の本質・在り方。
「本意」は人間が本当に思っている気持ち・考え・意見のことです。「翻意」とは同音異義語になるため、意味の違いをきちんと理解して使用しましょう。また、スマホやパソコンで文章を打つときも「翻意」と「本意」の選び間違いに気をつけてください。
「翻意を促す」とは
「翻意を促す」の「促す」には「ある行為をするように仕向ける」や「物事を早くするように急(せ)き立てる」という意味があります。
そのため、「翻意を促す」は「一度決心したことを変えるように仕向ける・急き立てる」という意味になります。相手の考えや決意を変えるように説得する場面で使う言葉です。
「翻意」の熟語の構成は?
「翻意」は2字の単語が組み合わさった熟語に分類されます。熟語によって構成の仕方が異なります。
【熟語の構成内容の一例】
熟語の構成内容の一例をみてみましょう。
- 似た意味の単語を重ねたもの
- 反対の意味を持つ単語を重ねたもの
- 上の字が下の字を修飾※しているもの
- 上の字が下の字の意味を打ち消しているもの
- 下の字が上の字の目的語・補語になっているもの
※他の単語の意味を限定したり詳しく説明したりすること
「翻意」は「下の字が上の字の目的語・補語になっているもの」という熟語の構成に当てはまる言葉です。「翻意」とは「意を翻す」という意味なので、下の字(意)が上の字(翻)の目的語になっていますね。
「翻意」の使い方・例文
ここでは、「翻意」の使い方をご紹介します。次の例文を参考にしてください。
- 彼女は顧客を翻意させる巧みな話術を持っている
- 期限ギリギリで翻意したAさんに驚きを隠せない
- 私は課長に翻意を促されたことで退職を止めました
- 何度も説得をされたが、今さら翻意することはない
- 1年かけたプロジェクトが〇〇社の翻意によって打ち切りになり、彼の落ち込みようは半端ではない
- 欧州ナンバーワンのチームを率いた監督は、チームのエースである〇〇の退団を翻意させるために交渉した
「翻意」の類語・言い換え
ここでは、「翻意」の類語・言い換えをご紹介します。「翻意」の類語・言い換えは以下の通りです。例文もあわせてご紹介するので、使い方の参考にしてください。
■心変わり(こころがわり)
意味1: 心が他に移ること。変心。
意味2: 心が正常な状態でなくなること。乱心。
例文:彼の心変わりの早さに周囲は唖然とした。
■変心(へんしん)
意味: 心変わり。考えが変わること。
例文:高額報酬を提示されたことで彼女は変心した。
■気が移る(きがうつる)
意味:気持ちが変わること。ほかのことに関心が移ること。
例文:母は気が移りやすいので、家族会議では最後に意見を聞くことにしている。
■手のひらを返す(てのひらをかえす)
意味: それまでと態度や言葉がガラリと変わること。手の裏を返す。
例文:本音で話し合って以降、Aさんの私への接し方が手のひらを返すように違う。
■転向(てんこう)
意味1: それまでの好みや方針、方向、職業などを変えること。
意味2: 思想や政治的立場を変えること。弾圧によって思想を放棄すること。
例文:Bさんの夫は会社員から画家に転向して大成功を収めた。
「翻意」の対義語
対義語もあわせて覚えておきましょう。
「翻意」の対義語は「決断(けつだん)」です。「決断」は次のような意味を持っています。「決断」は考えや気持ち、意思を迷うことなく決めるというニュアンスを含んでいます。
■決断(けつだん)
意味1: 意思をはっきり決定すること。
意味2: 正しいことやよこしまなことを判断・裁決すること。
例文:あのときのCさんの決断は、間違っていなかったことが判明した。
「翻意」の英語表現
ここでは、「翻意」の英語表現を解説します。次の英文を参考にしてください。
change one's mind
change one's mindには「気が変わる」「翻意する」等の意味があります。
意味: 私は「その美術館には行かない」と言っていたのですが翻意しました。
reconsider
reconsiderには「決定したことを再考する」「見つめなおす」等の意味があります。
意味: 私はあなたに翻意を促しているわけではありません。
「翻意」の意味と使い方を理解しましょう
「翻意」は「決意をひるがえすこと」や「一度決心したことを変えること」という意味を持つ言葉です。熟語の構成では「下の字が上の字の目的語・補語になっているもの」に該当します。
「翻意を促す」の意味は「一度決心したことを変えるように仕向ける・急き立てる」です。同音異義語である「本意」との違いもあわせて覚えておきましょう。
「翻意」の類語や言い換えは複数あります。また、対義語や英語表現を確認して「翻意」について理解を深めてくださいね。「翻意」の意味を把握したあとは、例文を参考にして「翻意」を正しく使えるようになりましょう。