芸歴10年以上、大河ドラマに3度出演、帝国劇場の舞台にも立ち、話題の映画やドラマに毎年複数本出演……こんなキャリアを積んだ高校1年生はなかなかいないのではないだろうか。池田優斗、16歳。テレビ朝日系ドラマ『愛しい嘘~優しい闇~』では林遣都演じるキーパーソン・中野幸の中学時代を任され、台本になかった“涙あふれる熱演”で大きな反響を呼んだ。

そんな池田が「こんな役者になりたい」と確固たる目標を抱くきっかけになったのは、二宮和也の芝居だったという。今回のインタビューでは二宮の作品の素晴らしさを熱弁する“役者としての池田”と、文化祭でBTSを踊ったものの「壊滅的にモテない(笑)」という“高校生としての池田”を届ける。

  • 俳優の池田優斗 撮影:宮田浩史

    俳優の池田優斗 撮影:宮田浩史

■台詞を覚えるほど見返した『フリーター、家を買う。』

――5歳で役者を始めた池田さんですが、自分の思い描く役者像に影響を与えた人や作品はありますか。

中学校1年生の頃にドラマ『フリーター、家を買う。』(10年)に出会って、二宮和也さんのお芝居を大好きになり、ずっと尊敬しています。就職先を探している二宮さんが、大事な二次試験の前にうつ病のお母さんから「薬が見つからない」と電話がかかってきて、心配になった二宮さんが面接を蹴って家に戻ったものの、お母さんはちゃんと薬を飲んでいたというシーンがあって。その後仲間と飲みに行ったときに、珍しくベロベロに酔っ払った二宮さんが、皆に母親がうつ病だということを打ち明けて「もし本当におふくろがいなくなったら、俺は多分ホッとすると思う」と涙を流すんです。

振り回されたくないという苛立ちや、お母さんがいなくなってもいいと言ってしまった自分への罪悪感や後悔、つらさ、悔しさ、悲しみ……二宮さんは笑ってるのに喜怒哀楽すべてが詰まっている表情をしていて、すごい。涙する芝居は、泣きすぎてしまうと台詞が聞こえにくくなるという難しさがあるのですが、二宮さんは泣いているのにちゃんと台詞が視聴者に届いていて、そこもすごい。この回を保存しているくらい好きで、ここでこの台詞を言うとか、ここで泣くとか、もう全部覚えているんですけど、何度見ても初めて見たように心に刺さるシーンです。

二宮さんのお芝居は「この役者さん上手だな」を超えて、「もし自分がこのキャラクターと同じ状況になったらどうするだろう」と、物語や役に没頭させられるところがすごいと思っています。自分も将来、役者としての僕ではなく、作品の中で演じた役を「本当にこの人怖いな」とか、身近に感じてもらえるようなお芝居をしたいと目標を持つきっかけになりました。

■いつか自分の芝居を見てもらえるように

――二宮さんに影響されて「リアリティのあるお芝居」が目標になった、と。

『流星の絆』(08年)や、また違うジャンルの『GANTZ』(11年)での姿も印象的でしたし、悪役やちょっと変わった役も魅力的ですが、普通の会社員や普通の青年、尖っていない平均的な役どころを演じる二宮さんが一番好き。「実際にこういう人いるな」と本気で思わされるんです。日常生活で出会った人に対して「二宮さんが演じていたあの人に似てるな」と感じることもあります。

――逆転現象が起こっていますね(笑)。二宮さん本人に直接思いを伝えたことはありますか。

まだお会いしたことがないので、もし共演させて頂く機会があれば、二宮さんのこの作品を見ていましたという思いを伝えて、二宮さんにも僕のお芝居を見て頂けるように頑張りたいです。二宮さんだけではなく、いろんな役者さん、世間の方々に「役者・池田優斗」を認めてもらえるような存在になりたいです。

――お芝居に対して熱く語っている姿を見ると、高校1年生として過ごしている姿が想像できません。どんな高校生活を送っていますか。

こういう活動をしているから特別な高校生活を送っている、ということは全くありません。飾らずに友達とふざけたり、体育祭や合唱祭にも参加しています。役者という視点でも、友達と遊ぶ時間はたくさんの作品を見て学ぶことと同じくらい……いや、それ以上に大事。プライベートで経験したこと、学校生活で感じたことから得たことが役に活きてくるんです。役作りの際に友達の癖をヒントにすることもあります。今はコロナ禍なので電車に乗って遠くへ出かけるのは難しいですが、仕事のない週末は友達と公園で遊んだり集まってバスケをしたりして、いいリフレッシュにもなっています。