モスバーガーを展開するモスフードサービスは、1972(昭和47)年の創業から今年で50周年を迎える。これにを記念し、東武鉄道とコラボレーションを実施。成増駅の駅名看板変更や記念ヘッドマーク掲出、記念乗車券の販売を4月3日まで行う。
3月8日に記者発表会が行われ、ヘッドマークを掲げた臨時列車が成増駅まで運行された。鉄道好き芸人として知られる中川家の礼二さんも登場した。
■50000型「東武東上線モス号」下板橋駅構内留置線でお披露目
当日、下板橋駅構内留置線に設けられた特設会場でモスバーガー50周年記念イベントが行われ、東武鉄道の制服を着用したモスフードサービス代表取締役社長の中村栄輔氏が挨拶した。モスバーガー1号店は、現在の成増店が立地する場所にあった八百屋の倉庫を借り受け、わずか2.8坪の広さでオープンしたという。創業当初の店舗に空調がなく、立食スタイルの店舗だったと中村氏は話す。当時、利用者の中心だった学生らがチラシ配りを手伝い、口コミでの周知など地元から暖かい支援を受けたことを振り返りつつ、地元や利用者からの応援に対する感謝を述べた。
50周年記念企画の実施にあたり、日頃の感謝を伝えるためになにかできないか検討したところ、板橋区や東武鉄道の協力を得ることができたと中村氏。創業の地である板橋区成増に改めてスポットを当て、地元の人々はもちろん、全国の利用者に「感謝、ワクワク感、変化をお届けする」とのこと。最後に中村社長は、「これからまた100年企業をめざし、『お店をもっと近くに・もっと愛されるお店に』をテーマとして、地域に根ざしたお店づくりを進めます」とコメントした。
続けて、企画に協力する東武鉄道の執行役員・鉄道事業本部副本部長、福原秀之氏が登壇。今回のコラボレーションに関して、東武東上線の成増駅がモスバーガー1号店(成増店)の最寄り駅であることから、「一緒に(モスバーガーの)50周年を盛り上げていただきたい」との声があったという。東武鉄道としても、沿線が活性化し、住み続けたい・訪れたい地域になることをめざし、モスフードサービスへの協力に応じたと説明した。地域を大切にするモスフードサービスに寄り添いつつ、話題を集め、板橋区の集客・PRにつながることを念頭に置き、調整を進めてきたと福原氏は話す。
鉄道会社だからこそできるしかけにより、モスバーガー50周年記念イベントを全力で応援すると福原氏。「ぜひ話題を呼んで、多くのお客様に届くとともに、板橋区あるいは成増の魅力発信につながれば」と述べた。
農林水産省の大臣官房審議官(農村振興局担当)、赤松忠幸氏も登壇。モスバーガー50周年記念の場に農林水産省が招かれた理由として、可能な限り農薬を使わない国産野菜を利用するモスフードサービスの取組みが同省の政策にマッチしていること、「モスライスバーガー」を通じて米の消費拡大に貢献していること、農林水産省と東武グループの連携という3つを挙げた。
赤松氏からは、生産者や産地を思い浮かべることを手がかりに、食を通して農業への関心を持つことにより、「ソフトな農村ファンになっていただきたい」との願いが出席者らに呼びかけられた。「ぜひ、モスを食べて産地を思い起こして、ソフトな農村ファンになってください」とのことだった。
板橋区長の坂本健氏も登壇。モスバーガー1号店が開業した1972年は、高島平団地への入居が始まり、第1回「板橋区民祭り」開催の年でもあったことから、同じ年にスタートしたモスバーガーの大きな節目を坂本氏もうれしく思っていた様子。坂本氏は成増の生まれであるため、モスバーガー1号店開業当時のこともよく覚えているという。モスフードサービスに対し、これまでの地域への愛情やスタッフのサービス・努力に感謝を述べつつ、モスバーガー50周年を祝福した。
モスバーガー50周年にあたり、新コーポレートキャラクター「リルモス(LilMos)」も導入された。創業当時のキャラクター「モス坊や」(1974~1987年)のイメージを受け継ぎ、現代風にアレンジしたキャラクターで、3月12日から4月3日まで販売される「モスバーガー50周年記念乗車券」にも「リルモス」が描かれている。これらも含め、今回のキャンぺーンの概要が、モスフードサービスの執行役員兼会長・社長室長の金田泰明氏により説明された。
記念イベントでは、鉄道好き芸人として知られる中川家の礼二さんもゲストで登場した。礼二さんが挨拶した後、停車中の50000型(51003編成)の前で記念撮影。モスバーガーと東武鉄道のコラボレーションにちなみ、50000型の前面に記念ヘッドマークが掲出された。編成は「東武東上線モス号」と名づけられ、池袋~小川町間で4月3日まで運行予定となっている。
■臨時列車が「なりもす駅」へ - 礼二さんの車内アナウンスも
撮影後、「東武東上線モス号」に乗車。臨時列車として成増駅へ向かうこととなった。臨時列車は10時59分に下板橋駅留置線を出発。運用上の都合により、いったん池袋駅へ向かい、20分ほど停車した後に折り返して成増駅へ。11時23分、「東武東上線モス号」の臨時列車は池袋駅を発車した。
「東武東上線モス号」は、前面に記念ヘッドマークが掲出されたこと以外、外観上の変化はないが、車内はモスバーガーの広告で統一されている。中吊り広告や荷棚の上の広告欄には、創業期からのロングセラー商品であるモスバーガーとテリヤキバーガーの写真とともに、「『なりもす』へ行こう!」と大きく掲げられたフラッグが交互に並んでいる。このフラッグは4月3日までの期間中、池袋駅1階南口改札にも掲示される。
一方、乗降ドア上部の広告には、創業から現在に至るまで販売されてきたロングセラー商品が左上から順に並べられていた。農林水産省の赤松氏による挨拶でも話題に上った「モスライスバーガー」は、1987(昭和62)年12月から販売されており、広告で見ると右から2列目の上段に掲載されている。現在、店舗で見かける定番メニューも、振り返ってみると意外に新しいものもあれば、歴史の古いものもあるようだった。
「東武東上線モス号」の臨時列車は、一般の営業列車の合間を縫って走行したため、中板橋駅、上板橋駅で営業列車の通過待ちを行った。上板橋駅に停車している間、10号車にいる礼二さんが車内放送のパフォーマンスを行う。本来の駅名は「成増(なります)」だが、今回のコラボレーションで「なりもす駅」となっていることを踏まえ、礼二さんの放送も「なりもす」でアレンジ。「本日は『東武東上線モス号』にご乗車いただきましてありがとうございます。間もなく、なりもす、なりもすです」と特別な車内放送を披露した。
途中の大山駅と上板橋駅では、この列車を目的に訪れたと思われる鉄道ファンらの姿も見かけた。「東武東上線モス号」が上板橋駅に停車している間、ホームの10号車付近を通りかかった鉄道ファンに礼二さんが笑顔で手を振る場面も見られた。
11時48分、「東武東上線モス号」の臨時列車は「なりもす駅」(成増駅)に到着。降車後、4月3日まで「なりもす駅」に変更される駅名標もお披露目された。駅名標にはモスバーガーのロゴと商品の写真、50周年記念マークもあしらわれている。成増駅南口の出入口には、「成増駅南口」と表示された上に緑色の背景と白い文字で描かれた「なりもす駅」の装飾も追加された。なお、一般営業の車内放送では、通常通り「成増駅」として案内するとのこと。
■「なりもす・ダブルバーガー」大いに食べごたえあり
取材の最後には、成増駅南口付近にある「モスバーガーなりもす店」(成増店)にて、50周年記念商品「なりもす・ダブルバーガー」の試食も行われた。「なりもす・ダブルバーガー」は、1990(平成2)年まで販売していた「モス・ダブルバーガー」を現代風にアレンジしている。通常の「モスバーガー」では、パティ(肉)、オニオン、ミートソース、輪切りトマトをバンズで挟んでいるが、「なりもす・ダブルバーガー」では輪切りトマトの上にパティ、オニオン、ミートソースをもう1段乗せ、レタスを添えた上で、バンズで挟んだバーガーになっている。価格は660円(税込)。
見た目の通り、バーガーはずっしり重みがあり、食べごたえも抜群。ミートソースの濃い味わいとオニオンの食感、特有の辛みが印象に残った。じっくり味わうことで、オニオンの辛みに隠れていた肉のジューシーな旨味にも気づく。パティ、オニオン、ミートソースの組み合わせが、輪切りトマトを挟んで2段重ねになっており、ひとつ食べるだけでお腹が満足しそうなほど、ボリュームのある商品だった。
ただし、ボリュームがある分、バーガーはかなり厚いので、上から下まで一度にかぶりつくのは難しい。食べ進めている最中にオニオンとミートソースがあふれ、バーガーの上半分か下半分のどちらかが先に減ることもあるので、完食まで意外と時間がかかった。店側もそのことを想定しているようで、注文時にはスプーンも添えて提供される。「なりもす・ダブルバーガー」を食べる際は、バーガーを包み紙から出さないようにしつつ、包み紙の中にこぼれた具材を後からスプーンですくって食べることで、最後まで美味しく楽しめるのではないかと思う。
東武鉄道でのモスバーガーコラボレーション企画と「なりもす・ダブルバーガー」の販売は4月3日まで。「モスバーガーなりもす店」(成増店)の呼称は4月30日までの予定。これに合わせ、隣接するビルの屋上に50周年記念看板が掲出され、店舗入口に50周年記念フォトスポットも設置された。なりますスキップ村商店街の街灯下にも、50周年記念オリジナルフラッグが約60本、4月30日まで掲出される。
「モスバーガー50周年記念乗車券」も発売。東武東上線の池袋駅、下板橋駅、大山駅、上板橋駅、成増駅、和光市駅、朝霞台駅、志木駅、ふじみ野駅、川越駅、川越市駅、若葉駅、坂戸駅、東松山駅、森林公園駅、小川町駅、武州長瀬駅の計17駅にて、1,000円(税込)で発売される。