現在公開中の映画『MANKAI MOVIE「A3!」~AUTUMN & WINTER~』(通称『エームビ』)。同作は人気アプリ、イケメン役者育成ゲーム『A3!』を舞台化し、現在の2.5次元を牽引する人気を誇るMANKAI STAGE『A3!』シリーズ(通称『エーステ』)をさらに映画化した、新たな試みの作品となる。

ゲームでは主人公が劇団「MANKAIカンパニー」の主宰兼『総監督』となり、春組・夏組・秋組・冬組のメンバーを率いていく物語だが、今回の映画化は春組・夏組を中心とした『MANKAI MOVIE「A3!」~SPRING & SUMMER~』が昨年12月に公開され、現在は秋組・冬組を中心とした『MANKAI MOVIE「A3!」~AUTUMN & WINTER~』が上映中。今回は秋組リーダー・摂津万里役の水江建太、冬組リーダー・月岡 紬役の荒牧慶彦にインタビューし、映画化への思いやそれぞれから見たメンバーの姿について話を聞いた。

  • 左から水江建太、荒牧慶彦 撮影:友野雄

    左から水江建太、荒牧慶彦 撮影:友野雄

■荒牧慶彦、水江建太にお兄ちゃん目線

――最初に「映画化」と聞いた時はどう思われましたか?

荒牧:いや、驚きました。

水江:本当に!

荒牧:これだけの舞台キャストがほとんどそのまま映画に出演できるってなかなかないですし、舞台を見たことがない方が映画を観ることによって『エーステ』という作品を好きになってくれるんだったら、すごく嬉しいことだなと思ってました。

水江:僕もやっぱり映画化すると聞いた時に、『A3!』および『エーステ』はすごいなと思いました。僕自身、映画に挑戦させていただくのは初めてだったので、そのステージを『エーステ』に作ってもらったのが光栄で頑張ろうと思いました。まっきーさんはもちろん、素敵な仲間や先輩に出会って縁をたくさんいただいて、本当にありがたい作品だと思ってます。

荒牧:役者について改めて考えさせてくれる作品なんですよね。役者が考えていることやあるあるがふんだんに盛り込まれているので、実は役作りの参考にもなったり。各キャラクターが役に対して考えていることについて「あ、そういう考え方もあるんだ」という新しい発見もありました。

――春組リーダーの横田龍儀さん、夏のリーダーの陳内 将さんにも同じ質問をしたんですが、ご自身も含めて、ぜひ秋組、冬組メンバーのことを紹介していただけたら。

水江:それぞれの役者がキャラと重なるところも多いとずっと思っています。古市左京役の(藤田)玲さんはすごくあたたかい人で、役割的にも“ボス”というか、背中を押していただいたり、支えていただいたりしています。七尾太一役の(赤澤)遼太郎は本当に芝居や役にまっすぐ向き合うところが役とも重なって。撮影の裏でも他の役のポートレイトのシーンをずっと見ているんです。

伏見 臣役の(稲垣)成弥さんも、どんな空気でも笑いに変えてくれて、役と通じるあたたかさがある。兵頭十座役の(中村)太郎は役とのギャップが1番あって、十座の硬派とは重ならないんですけど、みんなを柔らかくしてくれるすごくいい仲間です。僕は…どうなんだろう? 秋組の中では支えられている側だなと感じます。自分のことで精一杯になってしまうことがよくあるので、全員に支えられて、立たせてもらっていると感じます。皆さんに甘えてばかりはいけないなと思うんですけど、誰よりも一生懸命やる姿を見せなきゃという思いがあって。「ついてこい」タイプのリーダーではなく、頑張っている姿を見せれたらと思いながら、ずっと演じていました。

――映像になったことで新たな発見はありましたか?

水江:舞台の時と戦い方が全然違ったので、改めて皆さんのことを尊敬しました。臨機応変に対応できるんだと驚きましたし、勉強にもなりました。玲さんは映像撮影の経験が豊富ですし、僕も含めてみんな玲さんに相談することは多かったです。

――荒牧さん、冬組についてはいかがですか?

荒牧:まず、雪白 東役の堪ちゃん(上田堪大)は本当に東のように寂しんぼです。集まっているときになぜか堪ちゃんが1人だけいないタイミングが多くて、4人で話して盛り上がっていたらどこかから戻ってきて「何の話?」って。1回やったくだりを堪ちゃんのためにもう1回やっていることがけっこうあります(笑)

水江:その様子が見える(笑)

荒牧:有栖川 誉役の(田中)涼星はちょっと動きが独特なんだけど、1番しっかりしています(笑)。人と人との間柄を見て自分が調整役に入ったりとか、しっかりとできた後輩です。御影 密役の植ちゃん(植田圭輔)は周りを見ていて、冬組で1番小さいけど1番お兄ちゃん。高遠 丞役の(北園)涼はすごくストイックでまともに見えるんだけど、実は1番変わっているんです。芝居やダンスには真剣に向きあってるけど、突拍子もないことを言い出す(笑)。実は面白い、クセのある役者だと思います。みんな大人なので、僕はその中での中間管理職じゃないけど、副部長みたいな感じで調整役に回れればと思っています。

――映像での発見などはいかがでしたか?

荒牧:冬組は舞台の頃から繊細さを求められることが多かったので、映像にもはまっていたように思います。客席から見ているのとはまたちょっと違うのかもしれないですけど、僕らは間近で芝居をしていたので、「こういう表情してたよね」みたいな懐かしさがありました。劇中劇も、より神秘的なものになっていると感じました。

――ちなみに、水江さんから見た冬組の荒牧さん、荒牧さんから見た秋組の水江さんはどう見えているのでしょうか?

水江:まっきーさんもおっしゃってたけど、冬組はすごく大人なので、その中でのリーダーとしての立ち位置を取られている風に見えています。

荒牧:そうでありたいですね。建太は、秋組になじめて良かった〜! と思います。だいぶお兄ちゃん目線になってしまって(笑)。「うちの子がなじめてるよ!」みたいな気持ちになります。秋組はやっぱり仲が良いので。

水江:(笑)

―― いつから「うちの子」感を持っていたんですか?

荒牧:いつからなんだろうなあ。でもAUTUMN & WINTER 2019公演の最初の頃から「建太笑ってる、よかった」みたいな感じで見守っていました。

――見守ってる中で、「立派に成長したな」といった思いは?

荒牧:成長しましたね〜!

水江:本当ですか!? よかった。

荒牧:芝居の柔軟性が、もう初期の頃から段違いで。もともとできてはいたんですけど、(演出の)松崎史也さんや倉田(健次)監督から細かな調整などを求められることで、どんどん柔軟性が付いてきたのかなと思います。

水江:逆に僕から見たまっきーさんはずっと上にいて、目標としている方です。役者としてもすごいし、人としても立ち居振る舞いも素敵な方で。本当に最初からずっとお世話になってるし、今もずっとお世話になっています。

■「これからも生きていこう」と思ってもらえたら

――改めて、この作品がいろいろな方に愛されている魅力はどこにあると思いますか?

荒牧:人が夢に向かっていく熱い思いを体験できることが魅力なんじゃないかなと、個人的には思っています。人って夢を持つ生き物だし、もし夢を持っていないという方でも「夢を持つことはこんなにエネルギッシュなことなんだな」と思わせてくれる作品なんじゃないかな。

水江:キャストが魅力的で、春・夏・秋・冬組とそれぞれのキャストの色があって、戦い方や見せ方が彩り豊かなところもすごい。

荒牧:演じてても感じるよね。

水江:役の姿もそうだし、劇中劇や目指すものがそれぞれにあるのが素敵なんじゃないかなと思います。

荒牧:あとは「役者をやっていてよかった」と思える瞬間やシーンも多いです。

水江:僕は、自分自身のスタートでもある作品ですので、思い入れはすごく強いです。

――映画化で期待することはありますか? 「映画を見て舞台に来てほしい」とか「役者のことを知ってほしい」とか、「こうなってくれたらいいな」ということがあれば教えてください。

荒牧:もちろん舞台は観に来てもらいたいんですけど、『エーステ』はやっぱり観終わった後に元気が出る作品なんです。今はコロナ禍で皆が大変な時期だと思うので、この映画を観てまずは元気になっていただいて「よし、これからも生きていこう」と思ってもらえたら、それが1番幸せなことなのかなと思います。

水江:素敵ですね……本当にその通りです。『エーステ』に元気をもらえる感覚は、出ている僕たち自身もすごくわかっていて、多くの人に伝わればいいなと思いますし、落ち着いたら舞台にもまた来てもらえたらすごく嬉しいです。

■水江建太
1995年11月2日生まれ、東京都出身。2018年より俳優として活動し、MANKAI STAGE『A3!』 シリーズ(19年〜)、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage シリーズ(19年〜)などで活躍。「BANANA FISH」-The Stage -(21年〜22年)、ドラマ『たびくらげ探偵日記』(22年)などに出演する。ミュージカル『CROSS ROAD〜悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ〜』上演を控える。

■荒牧慶彦
1990年2月5日生まれ、東京都出身。舞台を中心に活躍し、『ミュージカル・テニスの王子様』(12年〜13年)、舞台『刀剣乱舞』シリーズ (16年〜)、MANKAI STAGE『A3!』シリーズ(19年〜)、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage シリーズ(20年〜)など人気シリーズに数々出演。映像出演は日本テレビ系ドラマ「あいつが上手で下手が僕で」、『映画演劇 サクセス荘』(21年)主演や、舞台「ゲゲゲの鬼太郎」上演を控える。