「百舌勘定」は、他人と一緒に食事にいった際、自分では少しもお金を出さず、人に出させようとすることを意味する四字熟語です。「百舌」は鳥の「モズ」のことですが、あまりいい意味とはいえない「百舌勘定」という言葉に、モズという鳥が登場する理由は、昔話にあります。
今回は、「百舌勘定」の意味や由来、語源となった昔話についてくわしくみていきましょう。さらに、「百舌勘定」の使い方、例文、英語表現や、百舌という鳥の生態も解説します。
「百舌勘定」の意味・読み方
百舌勘定には、「勘定で自分ではお金を出さないで、他人にばかり出させようとすること」という意味があります。読み方は「もずかんじょう」です。自分も食事をしているにもかかわらず、支払いを他人に任せて帰ってしまうずる賢い態度をさす四字熟語です。
「百舌勘定」の百舌とは鳥のモズのこと。モズは漢字で「百舌鳥」と書くこともありますが、一般的には「百舌鳥勘定」ではなく「百舌勘定」という表記の四字熟語として使われています。
「百舌勘定」の由来は昔話
「百舌勘定」という四字熟語は、ある昔話が由来になっています。
このようにおしゃべりがうまいモズがハトとシギをうまくいいくるめ、自分は支払いをせずにすませたことが「百舌勘定」の由来といわれています。
百舌ってどんな鳥?
モズは「スズメ目モズ科」の鳥です。
この昔話のように、モズがシギとハトをいいくるめるほど話すのがうまいと考えられていたことは、モズの名前の漢字をみてもわかります。モズは他の鳥のモノマネがとてもうまいことから、「百の舌を持つ鳥」という意味あいで、「百舌」「百舌鳥」と表記されるようになりました。
昔の人は、モズの鳴きマネのうまさから、他の鳥をだましているといった発想をしたようです。しかし実際は、この鳴き声はモズのオスがメスに選んでもらうための求愛行動なのではないかといわれています。
百舌鳥の早贄
モズのくちばしはタカのようなカギ型で、バッタなどの昆虫、カエル、トカゲなどのほか、魚や小鳥を獲ることもあります。
モズには、捕らえた獲物を木々の枝先や棘、有刺鉄線などに突き刺しておくという変わった習性があり、この行動は「もずの早贄(はやにえ)」とよばれます。この習性の目的ははっきりとは解明されておらず、「食料確保のため」「食べきれないものがはやにえとなっている」または、「なわばりの目印」など、さまざまな説があるようです。
「もずのはやにえ」の習性は日本では古くから知られていて、歌や古書にも登場しています。小枝などに串刺しにするという行動から、かつては凶鳥と考えられていました。
「もずのはやにえ」は日本だけではなく海外でも知られています。イギリスではモズのことを「屠殺(とさつ)人の鳥」、ドイツでは「絞め殺す天使」とよばれています。
「百舌勘定」の使い方・例文
「百舌勘定」の使い方、例文を紹介します。
・あの人は百舌勘定だから、一緒に食事にいくのは嫌だな
・〇〇くんは、百舌勘定するつもりで飲み会に来るよね
・今回も百舌勘定して、支払わずに帰ってしまった
誰かを「百舌勘定だ」と表現する使い方もできますし、「百舌勘定する、した」のように、動詞のような使い方もできます。
「百舌勘定」の英語表現
「百舌勘定」を英語で表現すると以下のようになります。
直訳すると、「他の人が全額を支払うように請求を分割する」です。
直訳すると、「うまい言葉で他の人が全額を支払うようにする」です。
「百舌勘定」の意味を理解して知識を深めよう
「百舌勘定」は「うまいことをいい他人にお金を出させて、自分ではお金を出さない」といった、悪知恵を表現する四字熟語です。
誰かに「百舌勘定だね」と言われても意味がわからないと反応ができませんが、意味を知っていれば不名誉な言葉だと理解できます。日常生活の中で使うことはあまりない言葉かもしれませんが、意味と使い方をぜひ覚えておきましょう。