「損して得取れ」とは、「目先の損失のみに気を取られず、将来の利益を確保するような長い目で物事をみよ」という意味のことわざです。一時的な損をしても投資をし続けることで、より大きな利益につなげるという意味でビジネスシーンでもよく使われています。大きな結果をなす事業家にはこの言葉を人生の座右の銘にしている人もいるようです。

この記事では、「損して得取れ」の意味や使い方、類義語などを解説します。

  • 損して得取れの意味

    「損して得取れ」について解説します

「損して得取れ」の意味

「損して得取れ」とは、目の前の損失よりも、将来的に大きな利益を得るために長い目で物事をみるべきだという意味の言葉です。

目先の利益や損失に囚われてしまうと、後に大きな利益を得られない可能性があります。最初の損失を投資だと捉えて、大きな利益となって返ってくることを期待するような状況は、「損して得取れ」と表現できるでしょう。ビジネスのみでなく、人間関係においても使えます。ビジネスの心構えや座右の銘として使われることがある言葉です。

初めは損をしても将来は利益を得るようにせよ

「損して得取れ」の「損」には、利益を失うという意味があります。「得」とは、利益自体や理解して自分のものにすることをさします。短期的な目線で損失を嫌い、目の前のことばかりに目を向けるのではなく、将来の利益まで考慮して、現在の損失を投資として考えることも必要であるということを示しています。

由来

「損して得取れ」の由来は、「損して徳取れ」です。「徳」とは、すぐれた品性をあらわしています。徳が高い人は他者からの信頼を得られます。損をしたり苦労したりしても、人のために尽くして懸命に努力していれば、将来的には人から信頼を得て社会的な価値も上がっていくという意味です。

  • 損して得取れの意味

    「損して得取れ」は目先の損よりも将来の利益を確保することです

「損して得取れ」の英語表現

「損して得取れ」の英語表現は、「You must lose a fly to catch a trout」などがあたります。

You must lose a fly to catch a trout
ニジマスを捕まえるには毛針を失わなければならない

Sometimes the best gain is to lose
時には損をすることで最高の利益を得る

  • 損して得取れの英語表現

    「損して得取れ」の英語表現は「You must lose a fly to catch a trout」です

「損して得取れ」の類義語

「損して得取れ」にの類義語は、「長い目で物事をみること」や「一時の損失を気にしないこと」の大切さをとく言葉になります。

負けるが勝ち

「負けるが勝ち」とは、つまらない争いは避けて相手に勝ちを譲ることは、結果的に自分の勝利へとつながるという意味の言葉です。その時々の勝ち負けにこだわるのではなく、一時的に負けたとしても、将来の総合的な勝利を得るという考え方です。

将来的な目線で物事を捉えるということで、「損して得取れ」と似た表現となっています。「負けるが勝ち」は利益に関することよりも、勝負事に使われやすい言葉です。

損せぬ人に儲けなし

「損せぬ人に儲けなし」とは、損失を恐れていては儲けを得ることもできないという意味の言葉です。ビジネスの場面では時に目先の損失を気にせず、将来的な利益を追求することが大事になることがあります。

設備投資や増員は一時的には損失となりますが、いずれ大きな利益が返ってくる可能性があります。しかし、これらを行わなかった場合は、将来的に大きな利益を得ることは難しく、現状維持以上の結果は出せないでしょう。「損せぬ人に儲けなし」は損失を恐れず長期的に考えることであり、「損して得取れ」と共通している考え方です。

急がば回れ

「急がば回れ」とは、何事も急ぐと危険性が増すため、急いでいるときほど遠回りでも確実な選択をする方がいいという意味です。急いでいるときは慎重な判断が下せず失敗してしまうリスクがあるため、遅くても間違いのない安全な選択をすることで失敗を避けた方がいいという考え方を示しています。確実に安全な判断を下す方が、結果として目的を早く達成できる場合もあるでしょう。

負けるが勝ちのように、矛盾しているような表現をすることで深く考えさせる逆説的表現といえます。

投資

「投資」とは、将来の利益獲得のために資金を投入することを意味します。事業や不動産、証券、人材などに対して、今後のことを見こして資金や力をつぎ込み、生産能力を増加させることで、より利益を得られます。

「損して得取れ」の考えは、将来のことを考えて適切に投資をするべきであるという意味が込められています。

  • 損して得取れの類義語

    「損して得取れ」の類義語は負けるが勝ちや損せぬ人に儲けなし

「損して得取れ」の対義語

「損して得取れ」の対義語は、「損失を気にして将来的な利益を見こめないこと」や「損をしてしまうこと」を意味する言葉になります。

一文惜しみの百知らず

「一文惜しみの百知らず (いちもんおしみのひゃくしらず)」とは、「目先のわずかな金銭を惜しんだ結果、後に大きな損失を受けることにまで考えが至らないこと」を意味しています。

一文は江戸時代の貨幣であり、金銭的な価値の低いことの比喩になります。目の前のことや小さな支出にこだわってしまうと、先がみえなくなり、大きな利益を得る機会を失って損失を出してしまいます。「一文惜しみの百損」とも言われます。

「一文惜しみの百知らず」は、目先の損失に囚われて長期的な目線で物事を考えられないことをさしており、「損して得取れ」と反対の意味といえるでしょう。

小利大損

「小利大損 (しょうりだいそん)」とは、わずかな利益のために大きな損害を受けてしまうことをさす言葉です。小利とは小さな利益で、大損は大きな損害を意味しています。

わずかな利益を追ってしまうと、大きな利益を得られないばかりか大きな損害を受けてしまう可能性があることを示唆している言葉ともいえるでしょう。小利大損にならないためにも、「損して得取れ」の精神が大切です。

  • 「損して得取れ」の対義語

    「損して得取れ」の対義語は「一文惜しみの百知らず」や「小利大損」です

「損して得取れ」の使い方

「損して得取れ」は、利益を確保するための心構えとして使われるような言葉です。人を励ましたり、自分への戒めであったり、ビジネス以外にもさまざまな場面で使うことができます。

ビジネスシーンにおいて

「損して得取れ」は、ビジネスの場面で使われたり、マーケティング手法として使われたりすることがあります。ビジネス用語ではありませんが、ビジネスに関わる幅広い範囲で座右の銘や心構えとして浸透している言葉です。

例えば、「新製品のサンプルプレゼントキャンペーンにかなりの予算を投入し、結果的に商品の購入につながった。まさに損して得取れである」のように使われます。

人間関係において

「損して得取れ」は、人間関係や信頼を構築する上でも使える言葉です。例えば、「日頃から社内で損して得取れの精神で人の手助けをしてきた結果、自分が困ったときに周りが手を差し伸べてくれた」のような表現ができます。

  • 損して得取れの使い方

    「損して得取れ」はビジネスや人間関係の考え方で使える言葉です

「損して得取れ」は目先の損よりも将来の利益を確保すること

「損して得取れ」は、目の前の損失は度外視して、将来の大きな利益につなげようという意味の言葉です。短期的な目線ではなく、投資をするように長い目で物事をみた方が結果的には利益が大きいことをさしています。

ビジネスをする上での心構えや人間関係のおける座右の銘など、さまざまな場面で大切にされてきている表現といえるでしょう。新しく始めたことがうまくいかなくても、「損して得取れ」の精神で長期的な目線で物事を考えてみましょう。