「凌ぐ」という言葉は、少し硬い表現の言葉ですが、小説や教科書でよく見る言葉です。実際に、漢文にも使用されており、昔から使われていたことがわかります。

今回は「凌ぐ」という言葉の正しい意味や使い方、例文はもちろんのこと、類義語や少しずつニュアンスの違う英語表現についてくわしくご紹介します。

  • 「凌ぐ」とは?

    「凌ぐ」正しい意味や使い方、例文をご紹介します

「 凌ぐ」の読み方・意味とは

「凌ぐ」の読み方と意味を紹介します。

読み方は「しのぐ」

「凌ぐ」は「しのぐ」と読みます。「凌」は「りょう」とも読みます。

「押し分けて進む、乗り越える」

「凌ぐ」の「凌」という漢字には「おしのける」や「こえる」という意味があり、漢字の由来は諸説あります。一説によると、左側の部首で「氷」を表す「にすい」と、「丘」を表す右側の文字が合わさって「丘を登っていくようにして凍る様子」を表現しているとされています。

この「氷が頑張って丘を乗り越えていく様子」が転じて、「乗り越える・越える」という意味になりました。「氷が丘を登って凍っていく様子」からも氷の力強さがわかりますが、「凌」という字そのものにも同様に力強いパワーを感じます。

「辛抱してどうにか切り抜ける、堪え忍ぶ」

「凌ぐ」には「辛抱して切り抜ける、堪え忍ぶ」という意味もあります。ピンチや過酷な状況に陥ったときに、その状況が過ぎ去るまでじっと辛抱するという意味です。「夏の暑さを凌ぐ」「急遽テントを立てて、雨風を凌いだ」などと使います。

「能力などが他から抜きん出る、まさる」

「凌ぐ」には「能力や程度などが他の者から抜きん出ること、まさること」という意味もあります。「凌」という漢字を用いた「凌駕(りょうが)する」という熟語も同じ意味です。「彼女の実力はライバルたちを凌いだ」「あの会社には他社を凌ぐ勢いがある」

漢文における「凌ぐ」の意味

「凌ぐ」という言葉は古くから使われている言葉で、「奥の細道」や「万葉集」の中でも使われているのを確認できます。

『万葉集』の中で「凌ぐ」は、「木の葉しのぎ降る雪」と使われており、ここでは、「木の葉を押さえつけて降る雪」というように、「押さえつける」「押しふせる」という意味で使われています。

一方で、『奥の細道』の方では、「風雨をしのぐ」と記載されており、『雨や風を防ぐ』という意味で使われています。

「凌ぐ」の例文

「凌ぐ」は以下の例文のように使われます。

1. 嵐の中、山で遭難しかけたが小屋が見つかり、雨風を凌ぐことができました。

2. 彼は他のライバルを凌ぐ勢いで急成長を遂げており、今後の活躍に注目が集まっています。

3. 中国の宇宙開発は凄まじく、アメリカを凌ぐ勢いです。

  • 「凌ぐ」の使い方・例文

    「凌ぐ」の使い方をご紹介します

「凌ぐ」の類義語

ここでは「凌ぐ」の類義語をご紹介します。「辛抱して、どうにか切り抜ける・乗り越える」といった意味をもつ「凌ぐ」の類義語には、「くぐり抜ける」、「乗り切る」、「踏ん張る」などが挙げられます。

くぐり抜ける

「凌ぐ」の類義語として使われる言葉の1つ目は「くぐり抜ける」です。「くぐり抜ける」には、「ある物の下や隙間を物理的に通り抜ける」という意味もありますが、「凌ぐ」と同じ意味として使われる場合は、「困難な状況や危険を回避する・うまく逃れる」という意味になります。

乗り切る

「凌ぐ」の類義語として使われる言葉の2つ目は「乗り切る」です。「乗り切る」も「くぐり抜ける」と同様に、「物理的に(船などに)乗ったまま目的としていた場所までたどり着く・行き着く」という意味もありますが、「凌ぐ」と同じ意味として取り上げられる場合は、「困難や危険などを乗り越える」というような意味で使われます。

「くぐり抜ける」もそうですが、比喩的な表現で使われている場合に、「凌ぐ」の類義語ということができます。

踏ん張る

「凌ぐ」の類義語として使われる言葉の3つ目は「踏ん張る」です。「踏ん張る」も上記でご紹介した2つの類義語と同様に、「足を開いて、力を入れて地面などに突っぱるようにすること」という物理的な意味と、「気力を振り絞ってこらえる。再び耐える・頑張る」という比喩的な意味があります。

「凌ぐ」の「切り抜ける」という意味に近いのは、後者の意味になります。

  • 「凌ぐ」の類義語

    「凌ぐ」の類義語をご紹介します

「凌ぐ」の言い換え表現

「凌ぐ」という言葉は、単体で会話に登場することも多々ありますが、よく聞く言い回しとして、「凌ぐ勢い」という言葉があります。

「凌ぐ勢い」は、「○○を凌ぐ勢いだ。」というように使われますが、この場合は、「他の人たちをぐんぐん追い抜いて、すぐにみんなの上に立ってしまうほどの勢い」を表現する言い回しとして使われます。

ポジティブな場面でもネガティブな場面でも使われる言い回しですが、どちらにせよ「後から出てきたものが、前にいたものや人を抜いて1番になりそうである」という意味に変わりありません。

  • 「凌ぐ」とは?

    「凌ぐ」は、辛抱して、どうにか乗り越えるという意味の言葉です

「凌ぐ」の英語表現

「(困難や危険を)乗り切る・乗り越える」という意味を持つ「凌ぐ」を英語で表現しようとするとどのような言い回しになるのでしょうか。実は、「凌ぐ」の英語表現はレパートリーが多いため、文脈やニュアンスに合わせて表現を選ぶことができます。

exceed 「exceed」は、「超える・超過する・勝る」という意味の英単語です。「凌ぐ」のような「下から上にいた人たちをじわじわ抜いて突き出てきた・超えてきた」というようなニュアンスはありませんが、結果として「超えた」ことを伝えたい場合は、「exceed」を使って表すことができます。

surpass 「exceed」では表しきれなかった「凌ぐ」特有の「誰かを追い抜くこと、勝ること」というニュアンスを持たせたい場合に使える言葉が「surpass」という表現です。「surpass」には、「上回る・(~を)しのぐ・(~に)勝る」という意味があるので、「凌ぐ」の直訳として使うことができます。

stand 「stand」は、「立っている」という意味の他に「立場・立ち位置」、「立ち止まる」などさまざまな意味がありますが、今回の場合は、「耐える」という意味の「stand」が「凌ぐ」一番近い意味になります。困難や問題に対して「耐える」といいたいときに「stand」を使うことができます。

get through ; pull through 「get through」 、「pull through」は、類義語の「くぐり抜ける」、「乗り切る」の直訳になる表現といえます。「物理的に(…を)通り抜ける」という意味で使われることもありますが、「凌ぐ」と一番近い意味である、「(困難を)切り抜ける」という意味でも使うことができます。

  • 「凌ぐ」の英語表現

    「凌ぐ」の英語表現は、「get through」 「pull through」「surpass」などです

凌ぐの意味を理解し、正しく使えるようにしましょう

「凌ぐ」は万葉集にも登場するほど古くから使われている言葉で、読み方は「しのぐ」、意味は「我慢して切り抜けること、堪え忍ぶこと」です。

「凌ぐ」の英語表現の選択肢は豊富で、伝えたいニュアンスによってそれぞれ一番近い意味の単語を使うと選ぶとよいですが、本来の「凌ぐ」と同じ意味をもつ単語は「surpass」です。また、英語に留まらず中国語で表現するときも、文脈によって使う言葉が異なるので、都度確認が必要です。