日本には日常生活から生まれたことわざがたくさんあります。そのひとつが「紺屋の白袴」です。ここでは、「紺屋の白袴」意味や語源・由来を解説します。

また、「紺屋の白袴」の例文や類語・似たことわざもご紹介。さらに英語表現も説明しますので、ぜひ目を通して参考にしてください。

  • 「紺屋の白袴」とは

    「紺屋の白袴」の意味や似たことわざ、英語表現、例文を解説する記事です

「紺屋の白袴」とは

「紺屋の白袴」は「こうやのしろばかま」と読むことわざです。「こうや」は「紺屋(こんや)」の音が変化したとされています。ここでは意味や由来を紹介します。

「紺屋の白袴」の意味

「紺屋の白袴」とは、「人のことばかりに忙しくして、自分のことには手が回らない」という意味です。紺屋とは「染物屋」を指します。紺屋が人の袴は染めるのに自分の袴は染めず、いつも白袴をはいていることから生まれたことわざだとされています。

また、他人のことばかりかまけて自分の技術が役に立たないという意味もあります。このことから、「紺屋の白袴」は他人に対してはやかましく口を出すのに、自分のことになるとすっかりダメな人間のことも指すようにもなりました。

「紺屋の白袴」の読み方

紺屋は「こんや」と読んでも間違いではありませんが、「紺屋の白袴」ということわざにおいては紺屋は「こうや」と読みます。白袴も「しろはかま」ではなく、「しろばかま」と読みます。

「紺屋の白袴」の語源・由来

紺屋はもともと藍を使って布を紺色に染める者でしたが、染物屋全般のことを指すようになりました。染物屋という仕事は染色の専門技術を扱うだけではなく、そのときの流行をキャッチして染め物に対応しなければならず、大変忙しい職業だったといわれています。

江戸時代において染物屋はとても繁盛しており、顧客の袴を染めるのに忙しく自分の袴を染める暇がないほどだったとされています。ここから「紺屋の白袴」ということわざが誕生したのが由来だとされています。

  • 「紺屋の白袴」とは

    「紺屋の白袴」の正しい読み方や意味、由来を把握しましょう

「紺屋の白袴」の類語・似たことわざ・対義語

ここでは、「紺屋の白袴」の類語や同じ意味のことわざをご紹介します。また、対義語もあわせて確認しましょう。

「紺屋の白袴」の類語・似たことわざ

「紺屋の白袴」の類語・似た意味のことわざを紹介します。

■医者の不養生(いしゃのふようじょう)

「医者の不養生」は、「医者は患者に対しては健康を勧めるのに、自分の健康には注意しないこと」という意味です。正しいことだとわかっていても、自分では実行しないときの例えとして使われます。また、「立派なことを言いながらも実行が伴っていない」の例えとしても使われます。

■髪結い髪結わず(かみゆいかみゆわず)

「髪結い髪結わず」は、「髪結いという職業の人は他人の髪ばかり結って、自分の髪には無頓着である」という意味です。他人にばかり持っている技術を使い、自分に対して手が回っていないときの例えとして使用します。「髪結いの乱れ髪(かみゆいのみだれがみ)」とも言います。

■易者身の上知らず(えきしゃみのうえしらず)

「易者身の上知らず」は、「占いを職業にする人は他人の身の上は占うが、自分の身の上はわからない」という意味です。「陰陽師身の上知らず」とも言います。

「紺屋の白袴」の対義語

「紺屋の白袴」の対義語として考えられるのが、「我田引水(がでんいんすい)」です。「我田引水」には次のような意味があります。

  • 他人のことを考えずに、自分に都合がいいようなことを言ったり行動したりすること
  • 自分に好都合なように取り計らうこと

人のことばかり気にかけて自分自身を後回しにする「紺屋の白袴」とは、反対の意味をもつと考えてもよいでしょう。

  • 「紺屋の白袴」の類語・同じ意味のことわざ・対義語

    「紺屋の白袴」の同じ意味のことわざや対義語も覚えて理解を深めてください

「紺屋の白袴」の英語表現

ここでは、「紺屋の白袴」の英語表現を解説します。「紺屋の白袴」は以下のように表現されます。

  • Dyers’ pants are never dyed.
    (染料屋の袴は決して染められない)

「dye」とは染料という意味です。これと似た表現に以下のようなものもあります。

  • The cobbler’s wife goes the worst shod.
    (靴の修繕屋の妻はいちばん悪い靴をはいている)
  • The shoemaker's children go barefoot
    (靴屋の子供たちはいつも裸足だ)
  • the cobbler always wears the worst shoes
    (仕立屋の女房は最悪の服を着ている)

以上のような英語表現を含んだ英語の例文は以下の通りです。

She is a very popular therapist, but she has been very busy and has been in poor health lately. This is just "Dyers’ pants are never dyed”.
(彼女はセラピストとして引く手数多ですが、多忙を極めて最近体調を崩しがちだそう。まさに紺屋の白袴だ)

  • 「紺屋の白袴」の英語表現

    「紺屋の白袴」の英語表現と、似た意味のことわざを確認してください

「紺屋の白袴」の例文

ここでは、「紺屋の白袴」の例文をご紹介します。

  • 田中さんはいつも成績がトップだったのに、友人の勉強の面倒ばかりをみていたため、今度の期末テストで上位から陥落してしまった。まるで紺屋の白袴だね。
  • 彼女は自分の意見を口に出せない性格なので割り振られた仕事をほとんど受け入れてしまう。紺屋の白袴にならないか心配です。
  • 私は栄養士の資格を持っているが、仕事で疲れて帰宅するために自宅ではほとんど自炊せずコンビニやスーパーで惣菜を買っています。今の状態はまさに紺屋の白袴です。
  • 中間管理職には業務の全体的な把握や整理、部下の人材育成、上司と部下の仲介など幅広い役割があります。加えて、個人の業務も抱えることがあるため、紺屋の白袴になりがちです。
  • スポーツ力学の知識を持っていても、紺屋の白袴で自分のアキレス腱を切ってしまうこともあります。
  • 「紺屋の白袴」の使い方・例文

    「紺屋の白袴」の使い方を把握して、日常的に使えるようになりましょう

「紺屋の白袴」の使い方を理解しましょう

「紺屋の白袴」は、染物屋である紺屋が忙しすぎて自分の袴を染める暇がない様子を指します。他人のことばかり忙しくして、自分のことには手が回らないことの例えです。正しい読み方は「こうやのしろばかま」となりますので気をつけてください。

また、「紺屋の白袴」と似たことわざに「医者の不養生」などがあります。一緒におぼえておきましょう。