黄金時代を築きつつある王者・川崎フロンターレからまた一人、期待の若武者がヨーロッパへ羽ばたいた。順天堂大から加入して2シーズン目を戦い終えた24歳で、昨シーズンは日本代表にも初選出された旗手怜央が、スコットランドの名門セルティックへ完全移籍した。FW登録ながら左サイドバック、インサイドハーフとしてフル回転し、連覇へ貢献した昨シーズンはベストイレブンを初受賞。セルティック移籍へまだ多くを語れない時期に応じたインタビューでは、川崎での2シーズン目で胸中に秘め続けた覚悟や、ひと足早く昨夏に旅立ったMF田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)、FW三笘薫(ユニオン・サンジロワーズ)へ抱く思いを熱く語っていた。

  • 旗手怜央 撮影:蔦野裕

――連覇を達成し、個人としてもベストイレブンを初めて受賞しました。

2020シーズンは試合にあまり絡めず、結果も出せていなかったので、自分は関係ないだろうなと思っていました。2021シーズンも取れるという確信はありませんでしたが、開幕からの積み重ねに対する手応えはありました。しっかりやってきたという自信と、受賞の報告を受けた時に素直にうれしいと感じられた2つの思いがありました。

――圧倒的な強さで優勝した2020シーズンは、大卒ルーキーとして31試合に出場。そのうち先発が14回、プレー時間が1480分だった中で、ベストイレブンには川崎フロンターレから9人もの選手が選出されました。歴代で最多となる人数です。

本当にすごいと思うのと同時に、その中へ入れなかった悔しさも確かにありました。ただ、それよりも受賞できる自信そのものがなかったので、そこは自分だけにベクトルを向けて「仕方がないと思うよりも、もっともっとやれ」と言い聞かせました。

――2021シーズンは出場した30試合がすべて先発で、プレー時間も2523分と大きく伸ばしました。おそらくFW登録されている関係でFW部門の受賞だったと思いますが、個人的にはどのポジションで最も評価されたと思っているのでしょうか。

どこなのでしょうか(笑)。前半戦は左サイドバックで、後半戦はインサイドハーフでプレーした中で、ほとんどプレーしていなかったFWで選んでもらっていいのかなという思いも正直ありましたけど、選ばれること自体はすごく光栄であり、たとえ出ていないポジションだとしても「僕だったらできる」という自信が今はあるので。

――ちなみに、3つのポジションで一番自信があるのは。

後半戦のインサイドハーフが、自分を一番出せるんじゃないかと。

――日本代表も10月から川崎と同じく、中盤にインサイドハーフを置くシステムを採用しています。その中で初招集された11月の2試合をあらためて振り返ると。

フォーメーションは同じでもやっているサッカーは違いますし、その中で2試合ともベンチ入りできるメンバーの中へ入れなかった屈辱を味わいました。いい経験をしたという思いもありますけど、それ以上にあの時は屈辱的な気持ちになった方が強いですね。みんなが試合へ向けて準備をしている中で、いざ試合になってベンチ外というのは選手ならば誰でも悔しい気持ちを抱くと思うので。それは今でも持ちあわせています。

――川崎での2021シーズンを振り返りたいと思います。まずは素朴な疑問として、背番号をルーキーイヤーの「30」からチーム内で最も大きな「47」に変えました。実績を残して若い番号に変えるのが一般的な中でちょっと驚かされました。

高校の3年間、練習試合用のユニフォームで着けていた背番号が「47」なんです。僕自身、今年は勝負だと思って、かなりの覚悟を決めて実は臨んでいました。今の僕があるのは高校3年間のおかげだし、その意味で初心に返るわけじゃないですけど、高校時代の番号を付けてもう一回頑張ろうという思いがありました。

――加入2年目なのに勝負の年と位置づけた理由は何なのでしょうか。

1年目の試合数であるとか結果という部分を、まぐれにしたくなかったというか。1年目だから出られたのではなくて、1年目がああならば2年目もそうなるよな、というシーズンにしたいという思いがありました。加えて東京オリンピックもありましたし、個人的には、報道されているような(海外移籍の)チャンスが巡ってくるかもしれない、という可能性もあったので。なので、ここは覚悟を決めようと。