オウンドメディアとは、自社で所有・運営するメディアのことです。オウンドメディアを立ち上げる企業も多いですが、なぜ自社でメディアを運営する必要があるのでしょうか?

今回はオウンドメディアを運用する目的、メリット、手順、具体例などについて解説します。これからオウンドメディアを立ち上げようか検討している方も参考にしてみてください。

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オウンドメディアとは?

オウンドメディアを英語表記にすると「Owned Media」であり、自社で所有・運営するサイトという意味です。

メディアとは本来、自社パンフレットやカタログなども含みますが、ここでのメディアとは情報発信をしているWEBサイトやブログのことを意味するのが一般的です。

また、 オウンドメディアの対比で自社所有していないメディアについて、広告出稿するTV・雑誌・WEBメディアなどを「ペイドメディア」(Paid Media)といい、SNSや口コミサイトなどを「アーンドメディア 」(Earned Media)といいます。

オウンドメディアを運営する主な目的は、自社の商品・サービスを認知(理解)させて、自社のファン(リピーター)にすることです。

公式サイトのようなフォーマルな表現より、ややカジュアルな表現を利用することもあります。

自社を知ってもらう、カジュアルな表現ができるという意味では、アーンドメディアであるSNSも活用できますが、どうしても最新情報が中心になります。

自社の商品・サービスの全体を知ってもらうにはSNSだけでは不十分で、オウンドメディアが有効ということです。

1.広告への依存度を減らすことができる

ネット広告はマス広告に比べると費用は安いものの、それでも施策を充実させるほど費用が膨らみます。たとえばリスティング広告で上位に表示させるには、単価を上げなくてはなりません。広告を止めれば売上も減ってしまう恐れがあります。

オウンドメディアでコンテンツを作成していけば、次第に自然検索(オーガニック)での流入が増えます。Googleコアアップデートもあるものの、よほど大きな問題がなければ基本的には一定のアクセス数を見込めます。

オウンドメディアが順調に育てば、多額の広告費用をかけなくても、自社へのアクセスを確保できます。

2.広告より安い費用で運営できる

広告を利用し続ける限り、ずっと費用が発生します。長期間利用したからと言って大幅なディスカウントを受けられるケースはそれほどありません。

オウンドメディアは立ち上げのコストはかかるものの、一度メディアを立ち上げれば、コンテンツの更新が基本になります。立ち上げのときに比べれば手間とコストは格段に減ります。

コンテンツの制作・更新にかかる費用は、1本あたり多くても数万円程度、安ければ1万円以下であり、広告より安いコストで運営可能です。

3.顧客との関係性の構築に役立つ

オウンドメディアを通じて、顧客との良好な関係を構築できるのもメリットです。ユーザーの役に立つ情報を発信し続けることで信頼を獲得し、自社のファンになってもらうことができます。

顧客のロイヤルティを高めることは、ビジネスのさまざまな面で大きなメリットをもたらします。また、SNSなどでファンが高評価の口コミを投稿すれば、さらなるファンの獲得も期待できます。

4.自社のブランディングができる

オウンドメディアによって、自社のブランドを構築することもできます。ブランドとは高級という意味ではなく、他社や他社商品と区別されるあらゆる要素のことです。

オウンドメディアで専門的な情報発信を続けていくうちに、他社とは違う独自の視点を持ったサイト・ブログと評価されるようになります。商品やサービスの差別化にもつながり、自社のブランディングに役立ちます。

オウンドメディアの立ち上げ・運営の方法

ここからは、オウンドメディアを立ち上げる方法について解説します。

1.オウンドメディアの戦略を構築する

まずオウンドメディアを運営する目的や目標を設定します。次のようなステップを設定することが多いです。

1.自社商品の認知・好感度の向上
2.見込み客の獲得と育成
3.顕在顧客との契約成立
4.ユーザーのリピート促進・ロイヤルティ向上
5.自社に関する良い口コミ・評判の拡散

いつまでに・何を・どの程度達成するのか、具体的な数値で定めましょう。

2.ターゲット像やペルソナの設定

どのようなユーザーを獲得したいのか、ターゲットを明確に定めます。オウンドメディアはただ情報を発信するのではなく、想定する読者のためのコンテンツを企画・制作しなくてはなりません。

読者像は「ペルソナ」で設定するのも有効です。ペルソナとはターゲットを象徴するような架空の人であり、性別・年代・年収といった外的な要素に加えて、・趣味・ライフスタイル・悩みといった内面の要素まで細かく設定します。

ターゲットやペルソナが明確になると、サイトのコンセプトの方向性も定まります。

3.サイト構築と情報発信

WEBサイトの制作、コンテンツの制作を始めます。オウンドメディアの初期は1~3名の少人数で始めることが多く、規模が大きくなると複数のチームに分けて制作を進めるようになっていきます。

コンテンツ制作で重要なのは、読者の役に立つ情報を提供することです。最初から商品やサービスのセールスに走るのではなく、読者が何を求めているのかを徹底的に考えましょう。

情報発信ではSEOも重要な要素になります。読者のニーズに応えることに加え、Googleにも評価されるコンテンツとなるように配慮しましょう。

Googleに評価されると、自然検索からの流入も次第に増加します。サイトの専門性が認められると、関連キーワードでの検索順位も上がります。

4.反応の分析と改善

サイトやページのPV数、ユニークユーザー数、滞在時間、コンバージョン率といった数値を分析し、想定どおりの成果が出ているかを確認します。

サイトを立ち上げて間もない頃にいきなりコンバージョンが急増することはまずないので、最初はPV数やユニークユーザー数などを中心に見ていくことになります。

多くのユーザーを集めたページがあれば、うまくいった要因を分析し、可能な範囲で他のコンテンツにも横展開をしていきます。

オウンドメディアの成功事例

オウンドメディアとして成功し、数多くの読者を獲得しているサイトを紹介します。

1.サイボウズ式

サイボウズが運営する、「チーム作り」が中心テーマのオウンドメディアです。会社や組織の在り方、個人のワークスタイルなど、会社員にとって共感できるコンテンツが揃っています。

コンテンツの中でサイボウズのサービスが紹介されることもありますが、セールス要素は控えめです。それよりも読者とサイボウズとの関係性の構築に重点を置いている様子が見られます。

2.トウシル

楽天証券のオウンドメディアで、投資に関する情報を中心に発信しています。著名人による推奨銘柄や売買タイミングなど、公式サイトよりも一歩踏み込んだ、具体的な投資方法について解説しています。

トウシルで特に多いのは、株式投資に関するコンテンツです。「配当狙い」「値崩れしにくい」といったさまざまな観点で株式の銘柄を紹介しています。

楽天証券の利用者は40代以下が7割を占めているそうで、 投資や資産形成をこれから実践したい若年層に向けた情報が中心となっています。


以上、オウンドメディアの目的やメリットなどをご紹介しましたが、オウンドメディアの運営の継続は、大手企業を含めて苦戦することもあります。

オウンドメディアは、広告費よりも安く運用できるメリットがある一方で、記事の執筆や更新には人件費が伴います。

購買欲求が比較的高いユーザー向けのランディングページや商品紹介ばかりを掲載するのではなく、読者の役に立つ情報を発信する必要があり、すぐに顧客獲得して売上に反映されるわけではありません。

ペイドメディアやアーンドメディアと連携する目的や、まずは売上よりもPV数を目標にするなどし、運用予算を決めて継続できるように取り組むといいでしょう。