スポーツジャーナリストの増田明美が11日、解説を担当する『奥村組スポーツスペシャル 第41回大阪国際女子マラソン』(カンテレ・フジテレビ系、30日12:00~)の取材に大阪・カンテレ本社で応じ、今大会の見どころや独特の解説スタイルの裏側、そして今回挑戦するYouTube裏生実況への意気込みなどを語った。

  • 増田明美

――今大会の見どころは?

なんといっても世界選手権への代表争いです。パリオリンピックに向けてのMGCの第一歩ですから、そこが一番のみどころです。選手たちもそこを目標にしている人が多いと思います。

――注目の選手は?

松田瑞生(ダイハツ)さんは特に注目しています。そして、佐藤早也伽(積水化学)さん。この2人がおもしろいんじゃないかなと思います。松田瑞生さんはこの2年間、波乱に満ちた競技人生でした。2020 年の大阪国際女子マラソンで優勝して、東京オリンピック出場が決まったと思ったら、名古屋ウィメンズマラソンで一山麻織選手(ワコール)に記録を抜かれてしまって。東京オリンピック代表に選ばれませんでした。補欠として福島で記者会見があった時に「私は本当は(この場に)来たくなかった」って泣いて。彼女は正直だから。そんな彼女を応援したくなってしまって「瑞生さん頑張れ」って思っていたら、2021 年の名古屋ウィメンズマラソンでまた 2 時間 21 分台で走りました。普通だったら諦めてしまうところも諦めずに、「次頑張る、次頑張る」という、そういう松田瑞生さんが、さらに強くなって大阪国際女子マラソンに帰ってきました。彼女は大阪が大好きなので「帰ってきたなにわの女王」です。2020 年の大阪の大阪国際女子マラソンの時、腹筋すごくて「腹筋女王」と言われていましたけど、針やマッサージをしている彼女のお母さんが「瑞生の腹筋がライオンに見える」って言ったんですよ。今回は寅年なんで、虎に見えると思います!本人が「松田瑞生旋風を起こす」と言っているように、どんな走りをするのか楽しみです。大会記録はもちろん日本記録も狙っているような勢いがあります。世界陸上、パリオリンピックに向けて「松田瑞生ここにあり」という走りをするでしょう。

佐藤早也伽さんは、龍ですね、龍。彼女は宮城県出身で、宮城といえば伊達政宗。独眼竜で龍です。ですから、「龍虎相まみえる」戦いになるでしょう。佐藤さんは、2021 年のクイーンズ駅伝(全日本実業団対抗女子駅伝競走大会)で3区を走りましたが、東京オリンピックの大舞台で日本記録作った廣中璃梨佳選手(日本郵政グループ)と同じ区間を走って、彼女に5秒しか負けていません。区間2位です。あのスピードをもって、宮崎でのマラソン練習もとても順調で、野口(英盛)監督いわく「2時間22分台が出たらいいね、うまくいくと2時間21分台かな」とおっしゃっていました。

――松田選手、佐藤選手の性格は?

松田瑞生さんは、「やる気、根気、元気、瑞生」がキャッチフレーズですが、そのままです。大阪薫英女学院高校の頃、鉢巻にお母さんに書いてもらった、その言葉がキャッチフレーズになったそうです。松田家はとても仲がいいです。4 人兄弟の末っ子の男の子が今 11 歳なんですけど、彼と遊んだりの彼の写真を見るのがリフレッシュ法だそうです。夢は「家族のために一軒家を建てる」こと。そういうハングリー精神があって、とにかく家族への愛が強いです。

佐藤早也伽さんは、うさまるが大好きで、うさまるグッズを集めるのが趣味。彼女と話しをしていると、アニメから登場してきたみたいな、雰囲気がかわいらしくて。性格も対照的で、松田瑞生さんは元気。佐藤早也伽さんは内に秘めている感じです。あんまりしゃべらなくて、おとなしいのですが、レースになると負けず嫌い。佐藤さんはピアノも好きで、コロナ禍では子供時代に習っていたピアノを弾き始めてリラックスしていたそうです。

――選手の性格や趣味など、よいネタを引き出す取材の極意を教えてください。

合宿しているところに取材に行った時などは、軽い練習の日の気持ちに余裕がある時、例えば昼食時に聞くなど、選手の負担にならないタイミングを心がけています。あとは、日本選手権とか大会を見に行くのが好きなのですが、すると選手のご両親がサブトラックとメイン競技場の通路のあたりにいらっしゃることが多いんです。そこで、お母さんに会ったら、お母さんの携帯電話の番号は必ず聞きます。その人を一番知っているのはお母さんだと思うので、お母さんの話を聞くのが私の取材の基本です。

――YouTube裏生実況(※地上波放送30分前の11:30スタート)に森脇健児さんと一緒に初挑戦されますが、意気込みは?

YouTubeは放送コードにひっかからないんですね、じゃあ、思いっきりできますね(笑)。今、記者のみなさんに話している、こういう感じでしゃべりたいです。地上波よりも自由にお話できるかなと思っています。歳を重ねる中でチャレンジし続けていないと歳を取っちゃうなと思っているので、今回は私にとってもチャレンジです。

今、若者は YouTube なので、話芸がすばらしい森脇健児さんのいいところを吸収しながら、どういう解説ができるかは、まさにチャレンジですね。「基本的に選手である前に人である」というモットーで解説していますが、ちょっと小ネタが多すぎると地上波では言われたことがあります(笑)。YouTube では遠慮なくできるのかと思うとワクワクします。

――最後に大会と放送、増田さんの解説を楽しみにしている方へのメッセージをお願いします。

大阪国際女子マラソンは歴史もありますし、選手たちも楽しみにしている舞台です。中継ではぜひ、競技のすごさを見ていただきたいです。高橋尚子さん、有森裕子さん、野口みずきさんら、オリンピックのメダリストたちが解説します。そして素晴らしい選手たちのおもしろエピソードなどにも興味を持っていただけるのなら、YouTube の裏生実況も見ていただけたらと思います。森脇健児さんと一緒に、私たちも競技者目線での解説もしつつ、おもしろいエピソードも織り交ぜたいと思います。ぜひ、両方の放送を楽しんでいただけたらと思います。