2021年1月にアーティスト活動をスタートした声優の芝崎典子が、12月15日に2ndミニアルバム『てん、てん、てん』をリリース。本ミニアルバムは「和」をテーマとした楽曲を中心に構成された一枚に仕上がっているという。今回はミニアルバムのことに加えて、アーティストとしてデビューした2021年がどのような一年だったのか。インタビューが到着した。

  • 芝崎典子

●みなさんと再びつながれた一年

──アーティスト活動がスタートした2021年は、どんな一年でしたか?

コロナ禍ということもあり、何ができるのかを常に考えなければいけない一年でした。その中でもネットサイン会や直接お客さんの顔を見られるイベントも時々実施できて、再び応援してくださるみなさんとつながれた一年になった気がします。

──アーティストとしてデビューすることで、音楽に対する意識に変化はありましたか?

他のアーティストさんがどんな活動をしているのか気にするようになりました。同じ声優として活動しているお友達がデビューしたとき、配信ライブやネットサイン会を拝見して、「いいな」と思うところがあれば、自分も取り入れるようにしています。特に岡崎美保ちゃんが無観客ライブでも全力で歌うことを楽しんでいる様子や、れいれい(近藤玲奈)がネットサイン会で「らしさ」を発揮している姿が素敵で印象に残っていますね。自分らしさや楽しい・嬉しいという気持ちを私も素直に伝えていきたいと思いました。

──プライベートはいかがでしたか?

寝る時間が増えました(笑)。あとは映画をたくさん見た気がします。ここ1、2年で表に出て話をする機会が増えたのですが、私はインプットの時間がないと、みなさんに何かを出せないタイプなんですよ。それに、心を満タンにしてから人前に出ないと、気持ちが追い付かない、上手く表現できない性格でもあって。だから、映画を見るなどして、心を豊かにしていました。

──ご自身の冠番組である「芝崎典子のたまにはいいよね」をはじめ、2020年あたりからパーソナルな一面を見せる機会が増えた気がします。

そうですね。以前はキャラクターではなく、自分自身で喋ることに緊張していました。出演する1週間前からドキドキしているくらいでしたが、最近ようやく慣れてきて。今は日常生活のなかで話したいと思うことがあれば、メモするようにしています。話せることをちょっとでも増やせればと思いながら、色々なところにアンテナを張って情報を集めるようになりました。……結局は家族の話ばかりになっちゃった気がしますけど(笑)。いつも家族の話題になってしまいちょっと恥ずかしいのですが、大好きなのでみなさんにもついつい話しちゃうんですよね。

──そんな一年の締めくくりとなる12月に2ndミニアルバムがリリースされます。約1年ぶりのリリースとなりましたが、率直なお気持ちを教えてください。

またこういう機会をいただけたことに、まずは感謝の気持ちでいっぱいです。再び曲をリリースできたことで、応援してくださっているみなさんがいらっしゃること、伝える相手がいることを実感できたのが、素直に嬉しいですね。

──タイトルの『てん、てん、てん』がとても印象的です。

ありがとうございます。このタイトルには「典子」の「典」の音読みをしたときの「てん」や、私たちの上にある「天」、起承転結の「転」、囃子の太鼓の音を表す「てんつくてん」の「てん」など、さまざまな意味が含まれています。また、番組などを行ったときに「典子……」とコメントで書いてくださる方が多いのも印象的で。「……」がどういう心情を表しているのかは謎なのですが、何だかそれを見ると嬉しくなるんです。そういうみなさんとのつながりも含めたくて、このタイトルにしました。

●作詞・作曲した「(機種依存文字)」へ込めた想い

──ミニアルバムに収録される楽曲について教えてください。まずは「(機種依存文字)」。ご自身で作詞・作曲された一曲です。

作曲には初めてチャレンジしたのですが、もう何から手をつければいいのか見当もつかなくて。最初はとりあえずピアノのアプリをダウンロードしてみたのですが、複雑すぎて逆に時間がかかりそうだったので、別の方法を探すことにしました。学生時代にギターを弾いていたのでそれでやってみようかとも思いましたが、忘れていることが多く、指も痛くなるので、その手段も諦めて……。となると、残されたのは鼻歌しかありませんでした。

──そこに行きついた。

はい。思いついたメロディを日々録音しながら、ちょっとずつ曲を作っていきました。そうして一旦は完成したのですが、実は提出日の当日に色々と変えたんですよ。元々はサビの部分とAメロが逆になる予定でしたが、何か違うなと思い入れ替えました。

──なんと!

そうなると、詞の尺や語尾も合わなくなってしまったので、歌詞も変えることになりました。提出ギリギリまで何日も考えたわりに、結局は最終日に色々と入れ替えちゃいました(笑)。

──よくアーティストの方が「降りてきた」と表現されますが、まさにそんな感じ?

確かに、それに近い感覚だったかもしれません。

──詞にはどういう想いを込めましたか?

スマホって、機種によって絵文字が変わっちゃったり、文字が正しく表示されなかったりするじゃないですか。私も自身の公式LINEで送った絵文字が、一部ユーザーの方々には自分の意図とは違う形で表示されてしまったことがあったんです。それと同じように、文字だけでは自分の思った意図とは違う伝わり方をしてしまうことがあると思って。自分の手から離れてしまうと相手の解釈次第になるのが、言葉や文字。それをテーマに歌詞を書きたいと思い、自身の経験も踏まえて曲のタイトルを決めました。

──SNSなどでも、文字だけで発信したときに意図とは違う形で伝わってしまうことがある気がします。

そうなんですよね。ただ、誰にでも伝わるような文章を心掛けて書くと、それはそれでつまらない文章になってしまいそうで。そういうモヤモヤや葛藤を私以外の人も抱えているんじゃないかなと思ったんです。とは言え、意図していない風に伝わるのは、先ほども言った通り自分の手から離れてしまった段階でしょうがないことなのかなとも思っていて。ただ、それを受け入れつつも、そうなってしまった時に寄り添えるようにはしたいんです。あまりポジティブな歌詞ではないかもしれないですが、自分を認めつつ、一緒に生きていこうねという気持ちを込めました。

──自身で作詞・作曲した楽曲のレコーディングはいかがでしたか?

ディレクターの方からは「芝崎さんがやることが正解になる」と言っていただいたのですが、本当にそれでいいのか、最初は悩んじゃって……。ただ、この曲のデモ音源を録ったときに、一緒に暮らしている両親に聞こえないよう、声をひそめて歌ったことを思い出したんです。当時は配慮してのことでしたが、個人的にはあの声を張らない歌い方が曲と合っていると感じたので、レコーディングもお布団の中にもぐりながら、小声で歌っているようなイメージで臨みました。上手く表現できていたらいいな。