「個人年金保険料控除」は、生命保険料控除という所得控除の一種です。本記事では、所得税や住民税が節税できる「個人年金保険料控除」について注意点や申請条件、実際にいくら戻ってくるのかなどをまとめてご紹介します。この機会に「個人年金保険料控除」についての知識を深め、「個人年金保険料控除」を賢く利用しましょう。

  • 「個人年金保険料控除」

    「個人年金保険料控除」について注意点や申請条件をご紹介します

「個人年金保険料控除」とは

「個人年金保険料控除」とは、「個人年金保険」の保険料としてその年に支払った合計金額に応じて一定の金額を所得から差し引くことで、所得税や住民税の節税ができる制度のことです。

そもそも「個人年金保険」とは、保険会社が老後資金の積み立てのために販売している保険商品で、任意加入の年金保険です。「個人年金保険」に加入することにより、国民年金などの公的年金とは別に受け取れる年金が増えるので、老後生活の資金にすることができます。

「個人年金保険料控除」のメリットは?

「個人年金保険料控除」を受ける最大のメリットは、何といっても所得税、住民税の節税ができることです。一定の条件を満たしていれば「個人年金保険料控除」を受けることができ、1年間の保険料に応じた控除額が所得から差し引かれ、結果的に所得税や住民税の節税になります。

年収に対して、1年間で控除される金額はあまり大きくないと思うかもしれませんが、毎年の積み重ねと考えると、なかなか無碍にはできないのではないでしょうか。

  • 「個人年金保険料控除」

    「個人年金保険料控除」を受ける最大のメリットは、節税できることです

「個人年金保険料控除」を受けるための条件は?

「個人年金保険料控除」は、「個人年金保険」に加入していれば誰でも受けられるという訳ではなく、一定の条件を満たしている必要があります。その条件とは、以下の通りです。

  • 個人年金保険税制適格特約が付けられる保険であること
  • 年金の受取人が契約者またはその配偶者であること
  • 年金の受取人が被保険者と同じであること
  • 個人年金保険の保険料の支払期間が10年以上であること
  • 年金の受給開始が60歳以降で受取期間が10年以上あること

これらのすべての要件をカバーしている場合に、「個人年金保険料控除」が受けられます。

  • 「個人年金保険料控除」

    「個人年金保険料控除」受けるには、一定の条件を満たしている必要があります

「個人年金保険料控除」を受ける上で知っておきたい注意点

続いて、「個人年金保険料控除」を利用する上で知っておくべき注意点をご紹介します。「個人年金保険料控除」を受ける前にきちんと「個人年金保険」のリスクを知っておくことで、想定と違った! と後でトラブルとなるのを防げます。

利回りが低いこと

注意点の1つ目は、利回りが低いことです。現在は全体的に低金利の世の中なので、予定利率も低めです。そのため支払保険料総額に対して、年金受取総額が大きく増えることはありません。

インフレに弱いこと

注意点の2つ目は、インフレに弱いことです。契約時に将来受け取る年金額が既に決まっている商品なので、インフレが起こった際には目減りする可能性があるというデメリットがあります。

途中解約すると元本割れすること

注意点の3つ目は、途中解約すると元本割れすることです。年金の受給開始前に解約をする場合は、解約返戻金を払ってもらえる場合がありますが、基本的には今まで払い込んだ保険料総額よりも少ないか、全くない場合もあります。

そのため、保険料を無理なく支払える金額に設定するなどして、途中解約しなくてよいように注意しておく必要があります。特に加入直後は解約返戻金の払戻率が低めに設定されているので、きちんと「個人年金保険」の仕組みを理解し、納得した上で申し込みをするようにしましょう。

個人年金保険料税制適格特約を付加する場合、契約内容の変更ができない

注意点の4つ目は、個人年金保険料税制適格特約を付加する場合、控除の要件を満たさなくなるような契約内容の変更はできないということです。

当たり前ですが、先ほどご紹介した「個人年金保険料控除を受けるための条件」がそろっていなければ「個人年金保険料控除」が受けられなくなってしまいます。年金受取人を別の人にするなどの変更は認められません。

年金額を減額したとしても解約返戻金が受け取れないこと

注意点の5つ目は、年金額を減額したとしても解約返戻金が受け取れないという点です。減額した分は、生命保険会社側で積み立てが行われ、年金の受給が開始されたタイミングで給付される年金の増額にあてられます。

配当金があっても年金開始日以前には受け取れないこと

注意点の6つ目は、配当金があっても年金受給開始日以前には受け取れないことです。こちらも、注意点5つ目の項目と同様に年金の給付が始まるその日までは、保険会社から受け取ることができません。

そのため、仮に配当金がでた場合には、保険会社の方で積み立てられ年金給付開始日以降に元々給付されるはずだった年金に上乗せされた状態で給付されます。

  • 「個人年金保険料控除」

    「個人年金保険」のリスクを知っておくことが大切です

「個人年金保険料控除」の上限額は? 控除額の計算方法

「個人年金保険料控除」を受ける場合、具体的にいくら控除されるのか気になりますよね。ここでは、個人年金保険料控除額の求め方と上限額についてご紹介します。

「個人年金保険料控除」の計算方法

「個人年金保険料控除」の金額は、1月1日から12月31日までの1年間で支払った個人年金保険料の総額を算出し、それが規定の金額のどの部分に当てはまるかを確認することで求められます。

ちなみに、配偶者の個人年金保険の料金も一緒に支払っている場合は、合算して申告できます。なお、「個人年金保険料控除」は加入時期によって旧制度と新制度に分かれており、それぞれ控除額が異なります。ここでは新制度(2012年1月1日以後に契約した個人年金保険)の場合で説明するものとして、年間支払保険料合計額と控除額は以下の通りです。

<所得税の場合>

1年間で支払った個人年金保険料の合計金額 控除額
2万円以下 支払った保険料全額
2万円超~4万円以下 支払った保険料÷2+1万円
4万円超~8万円以下 支払った保険料÷4+2万円
8万円超 一律 4万円

<住民税の場合>

1年間で支払った個人年金保険料の合計金額 控除額
1万2,000円以下 支払った保険料全額
1万2,000円超〜3万2,000円以下 支払った保険料÷2+6,000円
3万2,000円超〜5万6,000円以下 支払った保険料÷4+1万4,000円
5万6,000円超 一律 2万8,000円

「個人年金保険料控除」に上限はある?

上記の表からも見て取れますが「個人年金保険料控除」の金額には上限があります。所得税の場合は、上限が4万円、住民税の場合は、上限が2万8,000円と定められています。

  • 「個人年金保険料控除」

    「個人年金保険料控除」には上限があります

「個人年金保険料控除」を利用して、上手に節税しましょう

「個人年金保険料控除」は、所得税や住民税を節税できる制度です。年間で見ると控除額が最大でも数万円で、人によっては大した金額ではないと思う方もいるかもしれませんが、60歳まで毎年継続していけばかなりの節税になります。

しかし、「個人年金保険」を契約する際には注意するべきことが多々あります。上記でご紹介した注意事項を参考に加入を検討し、申し込む際にはきちんと継続して支払い続けられる保険料を設定するように気を付けましょう。