介護医療保険料は、年末調整で控除の申告をすることができます。2012年以降に新設され、保険料の控除金額が大きく変わることになりました。しかし従来の保険料控除との違いや、計算方法について把握しきれていないという方も多いでしょう。そこで本記事では、年末調整や確定申告で介護医療保険料控除に対応するための情報をまとめました。

  • 介護医療保険料控除とは?

    介護医療保険控除について知りましょう

介護医療保険料控除とは?

介護医療保険料控除は、生命保険料控除の項目の一つです。年末調整や確定申告の際に控除申告できますが、どのような控除なのかを知っておきましょう。

介護医療保険料控除は生命保険料控除の項目の一つ

介護医療保険料控除は、年末調整の書類で見かける「生命保険料控除」の項目の一つです。支払った介護医療保険料に応じて、一定の金額をその年の所得から控除することができます。

年間で支払われる給与は税金を概算で天引きされています。そのため、すでに給与から天引きで支払っている税金の総額と、本来納めるべき税金の総額との間に生じる差額を精算するために、年末調整を行います。生命保険料や介護医療保険料の控除を受けると課税所得が減るため、所得税と住民税が軽減されることになり、支払い過ぎた税額が戻ってくるのです。

従来の控除の対象は、生命保険料と個人年金保険料の2種類のみでした。2012年の税制改正によって、2012年1月1日以後に締結された契約から、介護医療保険料控除の項目が追加されています。

介護保険とは別物

40歳以上の国民には公的介護保険への加入が義務付けられていますが、こちらの保険料は介護医療保険料控除の対象にはなりません。介護医療保険料控除の対象となるのは、民間の生命保険会社で加入することのできる介護医療保険です。

所得税や住民税の減税も可能に

介護保険や医療保険に加入している場合は、生命保険料控除と個人年金保険料控除とは別に、介護医療保険料控除を年末調整時に申請でき、所得税や住民税の税額を軽減することができます。

  • 介護医療保険料控除とは?

    介護医療保険料控除は生命保険料控除の項目のひとつです

介護医療保険料控除の手続き

介護医療保険控除を受けるための手続きを簡単にご紹介しましょう。サラリーマンと自営業、働き方によって若干異なるため、注意が必要です。

介護医療保険料控除に必要な書類

介護医療保険料控除を申請するときには、生命保険料控除と同様に生命保険会社が発行する「生命保険料控除証明書」が必要になります。年末調整がはじまる10~11月くらいに生命保険会社が発行することがほとんどで、紛失した場合も連絡すれば再発行が可能です。

また、サラリーマンの場合は会社から配布される給与所得者の保険料控除申告書、自営業やフリーランスの場合は確定申告書に記載します。

サラリーマンが介護医療保険料の控除を受ける場合

介護医療保険料控除について、サラリーマンの場合は「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記載して控除証明書を添付し、勤務先に提出すれば、勤務先の企業が対応してくれます。本人は生命保険料控除証明書をもとに保険会社名や保険種類、支払保険料の金額等を転記し、控除額を計算する必要がありますが、給与所得者の保険料控除申告書に控除額の計算方法が簡単に記載されているので迷うことも少ないでしょう。

万が一年末調整に間に合わなかったとしても、還付申告を行えば払い過ぎた税額は戻ってきます。

自営業・フリーランスが介護医療保険料の控除を受ける場合

自営業やフリーランスの方は企業が年末調整をしてくれるわけではないので、自分で確定申告をする必要があります。サラリーマンと同様に生命保険料控除証明書を添付して、確定申告書に保険料控除に関する必要事項を記載して提出すれば申請は完了です。

介護医療保険料の控除額の返金タイミング

介護医療保険料控除を申請したあと、支払った税額が多過ぎた場合は返金されます。サラリーマンの場合は企業によって異なりますが、年末の給与に上乗せされて返金されるのが一般的です。

自営業やフリーランスの場合は、介護医療保険料控除が適用されたあとの課税所得金額によって所得税が計算されるようになります。

  • 介護医療保険料控除の流れ

    介護医療保険料控除は年末調整や確定申告のタイミングで申請します

介護医療保険料控除を年末調整で書くときのポイント

年末調整で介護医療保険料控除を申請するときのポイントをまとめました。2012年から新制度が適用され、加入している保険の保障内容によって介護医療保険料控除が適用されるかどうかが変わってきます。

介護医療保険料控除の対象となる商品は?

介護医療保険料控除の対象となるのは、介護保障・医療保障に関して支払われる保険料です。一つの契約に「介護・医療保障」が特約で付加されている場合、その特約の保険料は、一定の条件に該当する場合に「介護医療保険料控除」の対象となり、該当しない場合は「一般生命保険料控除」の対象となります。商品名ではなく保障内容によってどの保険料控除に該当するかが異なります。

そのため契約する前に何に対して支払われる保険なのかを自分で把握しておく必要があるでしょう。保険会社によっては企業のホームページで明記していることもあります。

介護医療保険料控除の年末調整での書き方は?

介護医療保険料控除を年末調整で申請するには、保険会社から届く 「保険料控除証明書」を参照します。記載する内容は下記のとおりです。

  • 保険会社名
  • 保険種類(介護・医療・がんなど)
  • 保険期間(終身・10年など)
  • 保険の契約者名
  • 保険金等の受取人の氏名と続柄
  • 本年度中に支払った保険料の金額
  • 控除額

なお、介護医療保険料控除は新制度になるため、「新・旧の区分」は記載不要です。

介護医療保険料控除金額の上限は?

所得税の計算における介護医療保険料控除金額の上限は40,000円です。年間の支払保険料が80,000円を超えていた場合、控除金額は一律40,000円になります。

住民税の計算においては、介護医療保険料控除金額の上限は28,000円です。年間の支払保険料が56,000円を超えていた場合、控除金額は一律28,000円になります。ただし、住民税の場合は、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」を合計した全体の生命保険料控除額で70,000円が上限となります。

  • 介護医療保険料控除を年末調整で書くときのポイント

    基本的には保険料控除証明書を見ながら書けば大丈夫です

介護医療保険料控除の計算方法

介護医療保険料控除の計算方法を、パターン別に紹介します。同時に計算する「生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」は2012年以前から適用されていましたが、介護医療保険料控除が新たに加わることで計算式に入れる金額が異なります。

2012年前後それぞれの契約がある場合は注意しましょう。

例1: 新旧制度を併用している人

例えば加入している保険が、下記のように新旧併用となっていたとします。

一般生命保険: 2005年契約

個人年金保険: 2010年契約

介護医療保険: 2020年契約

この場合、生命保険料控除と個人年金保険控除には旧制度の計算式、介護医療保険料控除には新制度の計算式を当てはめることができます。

また一方で、保険の加入時期が下記のようになっていたとします。

一般生命保険: 2005年契約

個人年金保険: 2020年契約

介護医療保険: 2010年契約

この場合、生命保険料控除には旧制度、個人年金保険控除には新制度の計算式が適用されます。医療保険の契約は2012年より前のため、介護医療保険料控除ではなく一般生命保険料控除の対象となり、2005年契約の一般生命保険料と合わせて計算します。

また、「一般生命保険」「個人年金保険」で新・旧制度の両方に契約がある場合には、旧制度の控除額によって適用される控除額と計算結果が変わります。

一般生命保険/個人年金保険

旧制度の控除額が4万円以上の場合:限度額5万円で旧制度適用契約の控除額のみで控除する

旧制度の控除額が4万円以下の場合:限度額4万円で新旧制度適用契約の控除額合計で控除する

介護医療保険

控除額に関わらず、4万円を上限に適用契約の控除額のみで控除する

加入時期だけでなく、適用基準もきちんと把握しておきましょう。

例2: 前年に保険の更新があった人

もともと2012年より前に定期保険特約付終身保険に契約していて、旧制度の「一般生命保険料控除」を受けていたとします。2020年8月に「定期保険特約部分」と「医療関係特約部分」を更新し、月々の保険料が10,000円から18,000円になりました。このうち5,000円は医療関係特約の保険料です。

この場合、新旧制度は下記のように適用されます。

2020年1~7月までの払込保険料: 旧制度

2020年8月以降の主契約・定期保険契約分: 新制度(一般生命保険料控除)

2020年8月以降の医療関係特約契約分: 新制度(介護医療保険料控除)

契約を更新した月によって計上する金額が異なるため、契約期間と保険料の内訳はきちんと把握しておきましょう。

  • 介護医療保険料控除の計算方法

    新旧制度の計算に気をつけましょう

介護医療保険料を控除するときの注意点

介護医療保険料控除を受けるときの注意点についてまとめました。控除の対象となるにはいくつかの条件があるため、当てはまっているかどうか事前にきちんと確認しましょう。

保険の契約内容を確認

介護医療保険料控除の対象となるのは、2012年1月1日以降に契約した保険です。2021年11月現在ではほとんどの方が更新しているかもしれませんが、念のためいつ契約したものなのか確認しましょう。

また、介護医療保険料控除の対象となるのは入院・通院等、介護保障・医療保障に関して支払われる保険料です。名称はよく似ていても、内容が異なると介護医療保険料控除の対象とならないため注意が必要です。

特約保険料も控除対象

介護医療保険料控除は、特約保険料も対象になります。特約は、主契約部分にさらにプラスできる保険で、がん特約や女性疾病特約など、特殊な保障に特化しているものが大半です。主契約にプラスして何かしらの介護・医療保障特約に加入している場合は、その保険料も控除対象となります。

適用されない保険のタイプ

保障の種類によっては、介護医療保険料控除ではなく生命保険料控除の対象となるものもあります。また、災害に特化した特約は対象とならないこともあります。自分の加入している保険に控除が適用されるかどうかは、保険会社に確認してみるといいでしょう。

  • 介護医療保険料を控除するときの注意点

    介護医療保険料控除の対象かどうか確認しましょう

年末調整の前に介護医療保険料控除の対象か確認しよう

本記事では介護医療保険料控除についてまとめました。年末調整や確定申告で、介護医療保険料の控除を受けることができます。2012年以降の保険は適用されるので、年末調整や確定申告で申請する前に保険の契約内容を確認しておきましょう。