京都鉄道博物館では、本館2階の企画展示室にて、2022年3月6日まで大阪環状線開業60周年記念企画展「大阪環状線 ~大阪まあるく60年~」を開催している。その一環として、奈良線など走行する103系が12月17日に入線。その模様が公開された。

  • 館内への入線を待つ吹田総合車両所奈良支所所属の103系

大阪駅や天王寺駅などを経由し、大阪市内をぐるりと1周する大阪環状線は、市民の要望により、1961(昭和36)年4月に開業。市内の移動に欠かせない交通手段となり、今年で開業60周年を迎えたことから、記念企画展を開催する運びとなった。

企画展示室で目にとまるのは、実際に使われた大阪環状線全19駅の駅名看板(大阪駅はレプリカ)と、各駅の移り変わりを紹介したパネルだろう。大阪環状線では、2013(平成25)年から「大阪環状線改造プロジェクト」を実施し、2015(平成27)年にリニューアルされた森ノ宮駅を皮切りに、各駅でリニューアルが進められてきた。リニューアル以前・以後の写真を見比べることで、大阪環状線が確実に進化していることがわかる。

  • 「大阪環状線」の幕を表示し、一旦4両のまま館内へ入線

  • 奈良方3両を切り離し、隣線へ

  • 奈良方の先頭車1両を切り離し、京都方先頭車に連結した

  • 館内では先頭車2両と中間車2両に分けて103系が展示されている。運転台も見学できた

また、大阪環状線の全駅に導入されている発車メロディーが流せるというしかけも。2016(平成26)年にデビューした大阪環状線・JRゆめ咲線(桜島線)の車両323系の展示と合わせ、大阪環状線の「今」が感じられる。

一方で、大阪環状線の「過去」が感じられる展示品にも注目したい。1970年代、奈良駅から大阪環状線への快速に掲出されていたヘッドマークや、1983(昭和58)年に車内で貼られていた京阪神近郊電車路線図などが展示されている。大阪環状線の前身にあたる城東線や西成線の時代も紹介され、パネルや展示品を使ってわかりやすく解説している。

  • 行先方向幕の駅名対照表には「大阪環状線」もある

  • 電話の受話器のような103系のマイク

  • 更新されたとはいえ、昭和の香りを感じる103系の車内

  • 扇風機も健在

  • 企画展示室で特別展も開催。各駅の移り変わりがわかる

  • ボタンを押すと大阪環状線各駅の発車メロディーが流れる

本館1階では、多くの鉄道ファンらが見守る中、奈良線などで現在も活躍する103系(吹田総合車両所奈良支所所属)の入線シーンが公開された。先頭車2両と中間車2両に分けて展示するため、一旦は4両のまま館内に入線した後、奈良方3両分を切り離し、入換作業を経て隣線へ。続いて奈良方先頭車だけ切り離し、京都方先頭車に連結した。

103系は48年にわたり大阪環状線で活躍し、2017(平成29)年に惜しまれつつ引退した。今回展示された編成はおもに奈良線で活躍しているが、ラッシュ時に大和路線(関西本線)経由で大阪環状線に乗り入れた実績もあるとのこと。大阪環状線の開業当初に導入された101系と比べて、103系は加速性能が良く、駅間距離の短い大阪環状線では重宝したという。運転手目線だと、編成ごとに微妙にブレーキの利きが異なり、単線区間が多く遅延回復の難しい奈良線では苦戦したとのことだ。

  • 逆三角形のヘッドマークは、1970年代に奈良駅から大阪環状線へ運転された「快速」に掲出された

  • 上が1983年、下が1991年に車内に貼られていた路線図

103系の特別展示は12月21日まで行い、12月18・19日の11時と15時に前面行先方向幕の幕回しの実演も行われる。さらに、103系グッズ付き入館券を3月6日16時30分まで、予約サイト「アソビュー!」にて各種420枚限定で販売する。