おじぎハンコとは、部下が上司にお辞儀しているように、左に傾けてハンコを押すことをいいます。メディアなどでは、賛否両論のあるビジネスマナーとして取り上げられています。
この記事では、おじぎハンコの意味や使われるようになった理由、ハンコを押す際注意点などを紹介します。仕事でハンコを押す機会がある人であれば役立つ内容ですので、ぜひご一読ください。
おじぎハンコとは
おじぎハンコとは、稟議書など複数人の承認が必要な書類に押印する際に、左端の上司の印に対してハンコがおじぎをしているかのように、部下が左斜めに傾けて押印することを指します。
おじぎハンコをマナー講師がメディアで取り上げたのをきっかけに、その必要性に疑問の声が上がった慣習のひとつです。
おじぎハンコはどこの会社が取り入れている?
おじぎハンコは日本の金融業界など、ごく一部の企業で慣習になっているビジネスマナーです。このような企業でおじぎハンコになっていないと、上司の指摘されることもあるようです。
おじぎハンコは、書類にハンコを押すたびに傾ける角度を確認しなければならず、手間がかかってしまいます。そうした無駄を省くのを重視する多くの企業ではおじぎハンコが必要とされていません。
おじぎハンコは電子印鑑サービスにも導入されている
現在はリモートワークが普及していることもあり、電子印鑑サービスを導入する企業も増えています。企業向けに提供されている電子印鑑の中には、おじぎハンコの機能があるサービスもあります。
電子印鑑サービスにおいては、おじぎハンコを押す際の回転の角度を1度単位で指定できるなど、細かい調整が可能です。
おじぎハンコは明文化されないビジネスマナー
社内慣習として、明文化されないルールやマナーは存在するものです。おじぎハンコもそのひとつといえます。
就職や転職した会社のルールがどうなっているかわからない場合は、同僚に尋ねるなどして確認しておきましょう。
おじぎハンコが使われるようになった理由
ハンコを押す慣習は、日本特有の文化です。おじぎハンコが使われるようになった背景として、どのような理由があるのでしょうか。
日本特有の忖度文化が影響している
おじぎハンコを行う目的には「上司への敬意を表すため」「上司に不快な思いをさせないため」などがあります。おじぎハンコは明文化されているルールではありませんので、行わないことで注意を受けたり、懲罰の対象になったりするようなことではありません。
このように、おじぎハンコにも「目上の人に忖度する」という日本特有の文化があらわれているといえます。
また、おじぎハンコは、上下関係など縦の序列を強く意識する傾向にある社風の会社で必要とされる傾向にあるようです。
社風によっては呆れられることもある
おじぎハンコによる手間を避ける会社や上下関係がフランクな社風の会社などでは、余計な忖度と呆れられてしまうこともあります。
おじぎハンコを取り入れる際は、自分が勤める会社の風習や雰囲気から、必要かどうかを見極めて使うようにしましょう。
おじぎハンコは社外向けの書類で使わない
社外向けの書類では、忖度の意味を込めておじぎハンコを押すと、かえってだらしない印象を与えてしまう可能性があります。社外用の書類では、真っ直ぐハンコを押すようにしましょう。
ハンコを押すときの注意点
ハンコを押す際には、注意しておきたいポイントがいくつかあります。おじぎハンコを押そうとするあまり、ほかの点がおろそかにならないよう気をつけましょう。
印影の大きさ
一般的な会社であれば、ビジネス文書にハンコ(認印)を押す機会はよくあることです。
ビジネス上で使うハンコは、上司より大きいサイズにしないほうが望ましいといわれています。そんなつもりはなくても、生意気ととられてしまう可能性もありますので注意しましょう。
また、役職に就いている人は、部下に気を使わせないため、あらかじめ大きいサイズのハンコを押すのもひとつの手段といえます。
認印に用いる書体
ビジネス書類に押すハンコとして使用する認印は、次のような読みやすい書体のハンコを選びましょう。
- 隷書体(れいしょたい)
- 古印体(こいんたい)
など
篆書体(てんしょたい)などの難読字体が使われたハンコは、誰が押したのかがわかりにくいため避けるほうが無難です。
はっきりとした印影になるよう注意する
ビジネス文書にハンコを押す場合には、はっきりときれいに押しましょう。うまくハンコを押せていないと、書類によっては差し替えを求められる場合もあります。
ハンコを押すときは、平らな場所で、できれば捺印マットを活用して、かすれたりにじんだりしないよう注意しましょう。
シャチハタと朱肉タイプ両方準備しておく
日常業務でハンコを押すビジネス書類については、朱肉がなくても押せるシャチハタタイプのハンコがあると便利です。
しかし、官公庁へ提出する重要書類など、書類の種類によってはシャチハタが使えないこともあります。例えば、雇用契約書ではシャチハタは使用不可です。
ハンコは、ビジネスシーンはもちろん、日常生活でも必要になるものですので、シャチハタと朱肉タイプのハンコを両方準備しておきましょう。
おじぎハンコと同様に賛否両論があるビジネスマナー
おじぎハンコのほかにもと、賛否両論があるビジネスマナーがいくつかあります。
お酌マナー
日本のお酌マナーには、目上の人のグラスを空にさせてはいけないといった考え方があります。しかし、お酒は自分のペースで飲みたいと考える人がいるのも事実です。
また、女性を中心に、上司や男性社員にお酌を求められるケースもあるようですが、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントにあたると考える会社も増えています。
お酌の必要性に疑問を抱き、賛否両論あるマナーのひとつとなっているようです。
スマホにメモをとる
手書きでメモをとる代わりに、スマートフォンで写真を撮る行為が失礼にあたるとされるケースもあります。自分の手でメモをとるほうが、写真を撮るよりも記憶に残るという点には期待できますが、効率的とはいえません。
状況によっては写真で撮影するほうが合理的なこともあり、紙でメモを取ることにこだわりすぎなくてもいいと考える人も増えてきています。
ビジネスにおけるドレスコード
ビジネスの集まりに招かれた時に、ドレスコードとして軽装が指定されていたのでクールビズで出向いたら、自分以外はスーツ姿の人ばかりで浮いてしまった、という経験を持つ人も多いようです。
「ビジネスの場にスーツ以外はそぐわない」といった思い込みがあり、先方から指定されたドレスコードにもかかわらず、スーツの着用が無難と考える人は少なくありません。そのようなシーンになった際は、状況に応じて柔軟に対応しましょう。
おじぎハンコは必要に応じて取り入れましょう
おじぎハンコは「謎マナー」ともいわれ、賛否両論が分かれるマナーのひとつです。一部の会社では必須とされていますが、不要とする会社も多く、中にはハンコを真っ直ぐ押すことがマナーとする会社もあるようです。
おじぎハンコが必要かどうかは会社の社風によって対応が異なります。会社で過去の作成書類を確認したり先輩に聞いたりして、判断するといいでしょう。また、社外の人に向けた書類でおじぎハンコを使うと、だらしないと判断されることもあるため、避けるほうが無難です。
おじぎハンコを使う際は必要かどうかをきちんと判断して、必要に応じて取り入れましょう。