ファーストリテイリングは、同社のサステナビリティに関する主要領域での2030年度目標とアクションプランを策定、12月2日に発表を行った。

ファーストリテイリングが目指す「新しい服のビジネスモデル」

ファーストリテイリングでは、「あらゆる人の生活を豊かにする『究極の普段着』」として「LifeWear」という考え方を掲げている。今回はこの「LifeWear」の考え方を進化させ、品質やデザイン、価格にとどまらず、環境・人・社会の観点も含めた「よい服」の定義に応える服づくりを進めていくという。

今回の発表では、「LifeWear」のコンセプトに基づき、ファーストリテイリンググループ全体で目指していく「新しい服のビジネスモデル」が発表された。

同社はこれまでも、消費者が必要とするものだけをつくり販売する「有明プロジェクト」を実施しているが、今回はこのプロジェクトと連動し、服の生産から輸送、販売まですべてのプロセスにおいて温室効果ガスや廃棄物を徹底的に排除した環境負荷の少ないモノづくりを実現する。またすべてのプロセスで、人権に配慮され、消費者が安心して商品を購入できるサプライチェーンを構築、さらに販売後もリユースやリサイクルなどを通して「LifeWear」をより長く活かし続けるための新たなサービスや技術の開発に取り組んでいくという。

冒頭に「LifeWear」の事業モデルについてファーストリテイリング 取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏より紹介が行われた。このビジネスモデルは大きく4つから構成される。

  • ファーストリテイリング 取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏

まずは「LifeWearを生み出す」。消費者の声を活かして企画し、トレーサビリティにも配慮して原材料を調達する。また生産するときのCO2排出をいかに削減するかを考慮したり、店舗に運び販売する際も、廃棄物を減らす取り組みを行う。

  • ファーストリテイリングが目指す「新しい服のビジネスモデル」の全体像

次に「あらゆる人の多様性を尊重する」ことを挙げ、「グループの店舗はもちろんのこと、社外の方にも人権や多様性を尊重するブランドにならなければならないと考えています」とコメントを寄せた。そして3つ目は「コミュニティを支え社会に貢献する」。これは同社が20年間やってきた社会活動をより積極化、推進するという。最後に挙げた「LifeWeearを活かし続ける」では、従来行っていた衣服の回収から、より回収量を増やすという。「ワンシーズン着て終わるのではなく、一日でも長く着てほしいという思いも込めています。しかし服には寿命があるので、寿命を終えた時に第二の服の人生を活用することが、我々に求められていることではないかと思っています」と柳井氏は述べた。

環境、そして人と社会に「よい服」づくりの取り組み

続いてファーストリテイリング グループ執行役員 新田幸弘氏より、"環境に「よい服」づくり"、"人と社会に「よい服」づくり"の取り組みが紹介された。

  • ファーストリテイリング グループ執行役員 新田幸弘氏

同社はパリ協定の目標を支持し、2050年にカーボンニュートラルを目指す。2030年度までに、店舗やオフィスなどの自社領域では温室効果ガス排出量を2019年度比の90%削減、取引先工場などのサプライチェーン領域では2019年比で20%削減するという。

具体的には、自社領域ではロードサイドの店舗での電力使用量の約4割、モール型の店舗では約2割の削減を目指す。2023年中にはエネルギー効率の高いプロトタイプ店舗の出店を行う予定だ。また、2030年度までに全世界の店舗・オフィスで使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを掲げた。

商品については、2030年度までに全素材の約50%をリサイクル素材など温室効果ガス排出量の少ない素材に変えていくという。なお2019年以降段階的にリサイクル素材の導入は進めており、ユニクロにおいては2021年秋冬シーズン商品で全ポリエステル素材の約15%がリサイクル素材になっているそうだ。また、商品パッケージや輸送途中の段ボール、ハンガーと言った資材においても再利用を進めて廃棄物ゼロを目指す。

消費者が安心して長く着られる「よい服」を提供するため、サプライチェーンで働く人々や自社従業員を含め、同社では事業に携わるすべての人々の健康と安全と人権が適切に守られた環境づくりも推進していく。これまで監査を実施している縫製工場、素材工場に加え、さらに上流の紡績工場から原材料調達レベルまでいたる、サプライチェーン全体のトレーサビリティ確立を目指す。また第三者機関による監査の定期的な実施、主要事務所におかえる労働環境のモニタリングや指導を行うチームの設置や、直接匿名で通報できるホットラインの設置といった理組も行い、人権デューディリジェンスの実施と人権リスクの早期把握を推進していくという。

社会貢献活動のグローバル推進も

同社のソーシャルコミュニケーションチーム リーダー シェルバ英子氏からは、ダイバーシティ&インクルージョンと社会貢献に関する発表が行われた。

  • ファーストリテイリング ソーシャルコミュニケーションチーム リーダー シェルバ英子氏

ダイバーシティ&インクルージョン促進の領域では、すべての従業員が性別を問わず、ライフステージに合わせた働き方を選択してキャリアを形成できるよう、人制度の改革や施策を実施するという。また2030年度までに、グローバルで全管理職における女性比率を50%に引き上げる。障がい者雇用については、同社は1990年代から積極的な雇用を行っているが、それに加えて障がいのある方も購入しやすいユニバーサルデザインの店舗設計や、予約制のお買い物フルアテンドサービスなど、あらゆる人に最高のお買い物体験を提供できるようサービスを拡充していく。

社会貢献に関しては、同社とファーストリテイリング財団、柳井正財団との協働により、 服の事業を通じた社会貢献活動をグローバル規模でさらに広げるそうだ。社会貢献活動への投資額は2025年度までに100億円規模、そしてグローバル全店舗での地域貢献活動や、難民や社会的に脆弱な立場の人々、次世代、文化芸術、スポーツの領域で1,000万人を支援することや、年間1,000万着の衣料支援を目標に掲げた。