今年の7月クール(6月28日~10月3日)の各局個人全体視聴率(ビデオリサーチ調べ・関東地区)を見ると、昨年のステイホームの反動で全体的に数字を落としているものの、東京オリンピックを連日中継したNHKはゴールデン(19~22時)・プライム(19~23時)・全日(6~24時)の3部門で前年比上昇。フジテレビも、ゴールデンとプライムでそれぞれ前年比+0.2ポイント上昇、全日も前年数字をキープした。

この要因として大きかったのが、8月28日・29日に計9時間にわたって生放送したバラエティ特番『FNSラフ&ミュージック』に加え、5番組・計11時間弱にわたって編成したアニメ『鬼滅の刃』だ。「タイムテーブルに非常に貢献していただきましたし、視聴率での恩恵は計り知れないです」と、コンテンツの力を改めて見せつけられた。

一方で、「『鬼滅の刃』はufotableさん、アニプレックスさん、集英社さん、皆さんのご理解とご協力のもとで編成できている企画ですので、引き続き深夜のアニメ枠を中心に、フジテレビとしてより主体的に関わっていける作品を開発していきたいと思います」と前を見据えた。

■地上波の中枢から離れて「Netflixばかり見ていたのはなぜか」

フジテレビに入社以来、編成・制作に長年携わってきたが、直近4年間はグループ会社のディノスに出向。地上波の中枢から離れた立場にあったその間、「いち視聴者になってみたら、地上波ももちろん見ていたのですが、Netflixのドラマやドキュメンタリーばかり見ていたんです」という。

そうした経験を踏まえ、「自分が自然とそちらのコンテンツに偏っていったのはなぜなのか、感覚的に理解していることを、自分の中で明確に言語化することで、どういうコンテンツを提供したら自分のような視聴者の皆さまが地上波コンテンツに戻ってきてくださるのか。ただ配信コンテンツの良さを全部持ち込めば良いということではないと思うので、そこは慎重に考えています」と話す。

視聴率戦略では、キー特性(13~49歳男女)を重点ターゲットの1つに掲げながら、個人全体を取りに行くことも目標に加えた。一見、離れた指標を追っているように見えるが、「実は円の大きさの話だと思うんです。キー特性という核のもうひとまわり大きな円が個人全体であるという図式で考えています。キー特性のお客様をターゲットにその層に面白いと思っていただけたら、自然に個人全体に浸透していくと思うので、別物ではないと考えています」と説明。

今後の方針として、「編成としてタイムテーブルを俯瞰(ふかん)で見ながら、提供するコンテンツに多様性があること、を目指したい。最初に申し上げた“笑う”とか“泣く” “驚く”など、感情に向けたメッセージがはっきりしているコンテンツを1つ1つ丁寧に作り上げていくということを、愚直にやっていきたいと思います」と意気込んだ。