ヤマハ発動機の「YZシリーズ」が当初の想定を上回る人気だが、今回はシリーズの中から「YZ85」をピックアップし、試乗したレーサー・近藤香織さんのコメントも合わせて紹介したい。子供でも乗れて競技用バイク入門にもぴったりな1台だが、女性でも楽しめるのか。プロの評価は?

  • ヤマハ「YZ85」

    ヤマハ「YZ85」は全長1,820mm、全幅760mm、全高1,135mmで重さが73kg。販売価格は56.1万円だ

小さなボディに十分以上のパワーが

最新の2022年モデルが発表になったばかりの「YZ85」で、まず注目したいのがリアまわりだ。従来のモデルが採用していたシートをとめるためのボルトを外し、「後方ストレート吸気構造」を実現している。これにより、エンジンは2021年モデルと同じものを搭載していながら、テストライダーからは「高回転時のパワーフィーリングが向上した」との声が上がるほど、戦闘力が増している。

  • ヤマハ「YZ85」

    吸気システムが「後方ストレート吸気構造」となったことで、リアのインテークも1カ所になっている

次の見どころは車体のスリム化だ。横に張り出すシュラウドの最大幅を15mm削ることで、スマートな車体を実現した。気になるのはシュラウドの小型化により冷却性能に影響がないかという点だが、これについてヤマハ OV開発部 YZグループ YZ85/125/250プロジェクトリーダーの上村正毅さんは、「シュラウドのルーバー形状を変えることで、同等の冷却性能を実現しました」と説明する。

  • ヤマハ「YZ85」

    シートは最低高が12mmアップ。よりフラットな形状に近づいた

  • ヤマハ「YZ85」

    マスターシリンダーはリザーブタンク一体型に変更

  • ヤマハ「YZ85」

    2021年モデルではスチール製だったリアフレームはアルミ製に変更。570gの軽量化を達成した。アルミリアアームも新開発し、従来は3ピースだったリンク周りを一体化している。あわせて継手構造を最適化し、縦剛性と捻じれ剛性のバランスを再調整した

デモ走行直後の女性レーサーを直撃!

ヤマハが「スポーツランドSUGOモトクロスコース」(宮城県)で開催したプレス試乗会では、レーサーの近藤香織さんが「YZ85」のデモ走行を実施。プロの目から見た「YZ85」の特徴や感想などを聞いてみた。

  • ヤマハ「YZ85」

    「全日本エンデューロ選手権 ウィメンズクラス」などにも参戦している近藤さん。デモ走行では「YZ85」を駆り、見事な走りを披露した

――YZ85の2022年モデルに乗ってみて、印象はいかがですか?

近藤さん:シートやタンクまわりがすっきりした分、コーナーで倒しやすい感じがあります。また、エンジンも高回転時の伸びがすごくあって、ギアを上げなくても走っていく感じです。昨年モデルと比べて、このあたりは明らかに変わっていますね。スロットルの開け始めからレスポンスがいいので、すごく乗りやすいです。

――「YZ85」は子供向けということですが、例えば大人の女性が乗っても楽しめるものなのでしょうか?

近藤さん:今までのYZって、けっこうピーキーなモトクロッサーという印象だったんですけど、2022年モデルはそのあたりがだいぶ“やんわり”しているので、女性でも乗りやすいと思います。車体もフルサイズに比べれば小さくて足つきがよく、重量も軽いのでいいんじゃないでしょうか。

――今回はモトクロスコースでのデモ走行でしたが、クロスカントリー/エンデューロでも使えそうですか?

近藤さん:そのままエンデューロコースに持って行って、ゴロゴロした岩が転がっているような道を走るとなると、ちょっと話が変わってきますね(笑)。ただ、サスペンションを緩めるなどエンデューロ仕様にすれば大丈夫です。私も「YZ85」をハードエンデューロで使っているので、全然いけると思いますよ。

――モトクロスを楽しまれる人が増えているそうですが?

近藤さん:特に、エンデューロに関してはここ数年ですごく増えていますね。レースでも、多いときだと600台くらい参加しています。その中には女性や小学生のお子さん、60歳を過ぎているような年配の方などが走っていたりするので、年齢層も幅広いです。

――オフロードを始めたいと思ったら、まずはどうしたらいいでしょうか?

近藤さん:最近だと、バイクもウエアも全てレンタルできるというコース場があったりします。最初はそういうところで、お友達同士、アウトドア的な感じで始めてみるというのがいいかもしれないですね。

――コースで初心者向けイベントなどを開催していたりもしますか?

近藤さん:SUGOさんは今年の春くらいから「SUGO学園」というイベントを開催しています。そこでは危なくないように、4ストロークの小排気量バイクを使っています。

三重県のいなべ市では「いなフェス」(いなべオフロードフェスティバル)というイベントがあって、申し込めばいろんなメーカーのバイクに試乗できますよ。オフロードは初めてという方も参加されているので、こういう機会を活用して始めてみるのも手ですね。

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