トヨタ自動車が2022年に世界各地で発売する新型BEV(バッテリーEV=電気自動車)の「bZ4X」(ビーズィーフォーエックス)。SUVが豊富なトヨタ車ラインアップの中でも目立つほどの存在感で、写真で見た限りだと同社の人気商品「ハリアー」や「RAV4」よりもカッコいいとさえ思えたが、実車はどうなのか。実際に対面し、担当者に話を聞いてきた。

  • トヨタ「bZ4X」

    カッコいいのか? トヨタの「bZ4X」(本稿の写真は撮影:原アキラ)

今後のトヨタ製EVを占う存在?

「bZ4X」はトヨタとスバルが共同開発したBEVのミドルサイズSUV。スバル版は「ソルテラ」という。EV専用に両社が開発した新型プラットフォームを採用する初めての市販車だ。

  • トヨタ「bZ4X」
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  • 左がトヨタ「bZ4X」、右がスバル「ソルテラ」(ソルテラの写真は撮影:編集部)。

車名は「beyond Zero」(ゼロを超えた価値)の頭文字「bZ」にボディサイズを表す「4」とクロスオーバーSUVであることを示す「X」を組み合わせたもの。トヨタはbZ4Xを皮切りに、2025年までに「bZ」シリーズ7車種を投入する予定としている。となると、トヨタのbZシリーズは今後、BMWやアウディのように、車名に数字を取り入れていくのかもしれない。

bZ4Xのボディサイズは全長4,690mm、全幅1,860mm、全高1,650mm。ホイールベースは2,850mmと長く、床下には薄型大容量のリチウムイオン電池パックを平置きで配置する。モーターの最高出力はFWD(前輪駆動)モデルが150kW(204PS)、4WDモデルが前後各80kWの計160kW(218PS)。0-100km/h加速、航続距離、車重をFWD/4WDの順に示すと、8.4秒/7.7秒、2,195kg/2,275kg、500km前後/460km前後となっている。最小回転半径はどちらも5.7mだ。

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    ホイールベースの長さはEVならではの特徴だ

スバルと外観を比較!

bZ4Xとソルテラで大きく違うのは顔つき(フロントフェイス)だ。ソルテラが枠付きのグリルに蓋をしたような少しごちゃついたデザインであるのに対し、bZ4Xはナンバープレートまで同一面に埋め込むような、グリルレスでシンプルかつすっきりとした造形を採用。ヘッドライトもソルテラより薄型でシャープだ。

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    薄型ヘッドライトを備える「bZ4X」はシャープな顔つきだ

コーナーサイドの樹脂部分に空気が通り抜けるエアカーテンを設置しているのはどちらも同じ。ルーフ後端のスポイラーは、中央の出っ張りをなくすことにより、車体の安定を保ちつつエアの流れをコントロールするというユニークなデザインになっている。スポイラーのサイズには大小があって、オプションで選ぶことができるらしい。

  • トヨタ「bZ4X」
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  • 左がフロントコーナー部のエアカーテン。右は左右分割式のリアスポイラー

ルーフにはソーラーパネルを装着。発電能力は走行距離換算で年間1,800km分だ。撮影時は午前8時過ぎの日陰だったため発電量は3W程度だったが、快晴だった前日の日中は、日なただと100Wくらいを表示していたという。説明役の城隼人トヨタZEVファクトリー主幹によると、「プリウスなどでは、ソーラーパネル装着車であることをアピールするため、パネルの表側に配線を見せるデザインにしていましたが、bZ4Xでは当たり前の装備なのであえてそれをせず、黒一色としました。配線の影が影響しない分、こちらの方が発電能力がアップしています」とのことだった。

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    ルーフにはソーラーパネルを装着

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    ソーラーパネルの充電状態を表示中

充電に関しては、フロントフェンダー右側に普通、左側に急速の充電口がある。カバーに付いている「エレクトリックシナジードライブ」のロゴはトヨタ初採用。bZ4Xのロゴが給電口に挿すプラグのようなデザインになっているのはいいアイデアだ。

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  • 左フェンダーの急速充電口

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    充電プラグをイメージした「bZ4X」のロゴ

EVならでは? 室内には広大なスペースが

インテリアはステアリングホイールの上側からメーターを見る「トップマウントメーター」スタイルを採用しているのが特徴。プジョーのような構造だ。

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    コックピットのメーター部

bZ4Xには「ステアバイワイヤシステム」を採用した「異形ステアリングホイール」を装着するモデルもある。まずは中国市場向けに発売し、その後は順次、ほかの市場にも展開していく予定だ。航空機の操縦桿のようなハンドルで、どんな操縦感覚なのか楽しみになる。

展示車は円形のハンドルだったが、プジョーのものほど小径ではなかった。こちらは、丸い上端部がメーター表示部に少し重なる感じがあるのが気になった(チルト&テレスコでハンドルの位置は調整可能)。モジュール化されたコラムの形状は、羽衣のように前方に向かってすぼまっていくような新しい意匠で、手元からメーターへの視線誘導を促すものだとの説明があった。

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    展示車が装着していた円形のステアリングホイール

室内空間は2,850mmのホイールベースをいかしていて、本当に広い。シート間ピッチが1,000mmもあるので、実際に170cmくらいのパッセンジャーが前後に座ってみると、後席の足元には大きな空間が生まれ、足を組んでくつろぐことができた。当然、センタートンネルの出っ張りがないので床は全面フラットだ。

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  • 広い室内スペースを誇る「bZ4X」。シートヒーターやステアリングヒーターなど、BEVらしい装備が充実している

シフトセレククターはトヨタ初のダイヤル式に。押して右側に回すとドライブ(D)、左側がリバース(R)に入る。やってみると、それぞれの操作に少し硬めの感触があった。誤操作を防ぐための安全思想なのだろう。

セレクターの両側には左下端に四輪駆動の「Xモード」、右上端に「ワンペダル」のボタンが。前出の城主幹は「共同開発によって(スバルの)Xモードを導入できたことで、これまでのトヨタ車では走破できなかったスバルのハードなテストコースもクリアできるようになりました」と嬉しそうに語っていた。両社がWin-winの関係を構築できていて、それぞれの“美点”をうまく取り入れられている証拠なのかもしれない。

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    ダイヤル式シフトセレクター。スバルの技術を導入した「Xモード」ボタンが見える

ダークトーンをまとったbZ4Xは都会的なデザインで、使い勝手も良さそう。個人的には、ホイールベースが短くてオーバーハングが長い同社の人気SUV「ハリヤー」やオフロードに特化した「RAV-4」よりもカッコいいと素直に思った。EVでは出遅れたとされるトヨタだが、この会社が本気になれば巻き返しは時間の問題かも。少なくとも、bZ4Xはそう確信できる出来の良さだった。

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  • フルフラットにできるラゲッジは床面が低く、積載量が多い

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