獺祭といえば言わずと知れた日本を代表する銘酒だ。だが、最近はお酒以外の「獺祭」が話題になっているのを知っているだろうか。それが、酒米と同じ山田錦を原料に作られる手指消毒用「獺祭エタノール」。これは、「売ろう!」「作りたい!」そんな想いからできたものでもなければ、作れば作るほど損をしてしまう赤字商品だという。ではなぜそんな商品が誕生したのか、その背景と実際に筆者が試してみた感想も交え紹介していこう。

  • 手指消毒用 獺祭エタノール(1,650円)

生産者を支えるために作られた「獺祭エタノール」

はじまりは世界中を混乱に陥れた新型コロナ。今なお猛威をふるう感染症の影響は「獺祭」を造る旭酒造にも例外なくやってきた。

2021年9月期は140億円と過去最高売上をたたき出す同社だが、2020年3月の状況は全く違った。これまでの売上が半分になる危機的状況に頭を悩ませながら、桜井会長は売上計算の報告を待っていたという。売上がこれまでの半分となり、前年比何パーセントまでだったら会社が持つのかギリギリを計算する日々だったという。

  • 旭酒造会長 桜井博志氏

それでも何とか生き残れる道筋が見えてきたその矢先、今度は製造部から翌年の米の仕入れを半減する必要があると言われた。生き残るためには仕入れの半減は必要。だが、米を買い控えてしまえば、山田錦の生産農家への打撃は計り知れないものとなる。苦渋の決断を迫られた同社。

そして、恥を捨て出した決断が、酒米の山田錦を飯米やエタノールに変え販売する道だった。もちろん、その決断に社内からは厳しい声もあったそう。だが結果、旭酒造は例年通り約束した価格で約束した量の酒米を農家から買い取った。

「一蓮托生でやってきた農家を守りたい。当たり前のことですよ」と桜井会長は言う。農地は一度荒らしてしまうと元に戻すことは難しい。だからこそ、どんな手を使っても守り抜くと強い覚悟で誕生したのが「獺祭エタノール」だったのだ。

エタノールの香りや使い心地はいかに⁉

では、農家へのリスペクトから生まれた「手指消毒用 獺祭エタノール」(1,650円)の使い心地はどうなのか早速レポートしていこう。

主原料は、酒米の帝王と呼ばれる山田錦。この玄米をエタノール(750ml)1本あたり約1.6kg使用しているのだが、これは獺祭の磨き二割三分(720ml)に使用する玄米の量と一緒だそう。

そんな貴重な酒米を多く使用した高濃度エタノールからは、お酒の香りがしっかりするのかと思いきやほのかにふわっと香る程度。言われなければ気づかないというのが正直なところだが、家や医療現場などシーンによってはその方が使いやすい。また、手のひらにのせてみるとさらっとした手触りで、肌に馴染むような感覚が印象的だった。

ちなみにエタノールなので、どれだけ酒好きだったとしても絶対飲んではいけない。

お酒ではない獺祭商品とは?

ここまでエタノールの話ばかりをしてきたが、実はお酒ではない獺祭商品はほかにもある。今回はフェイシャルマスクや酒粕アイスも試してみたので、最後に紹介していこう。

・獺祭 フェイシャルマスク(2,750円/1箱)

  • 獺祭 フェイシャルマスク(2,750円/1箱)

「純米大吟醸 磨き二割三分」と、その醸造過程で出された獺祭酒粕エキスを配合した贅沢なフェイシャルマスク。まずは、袋を開けて香りを嗅いでみるとお酒独特の匂いはしない。

厚手のシートにとろっとした美容液がたっぷりしみ込み、顔にピタッと張り付くのが特徴。いやなベタつきはなく、使用後は肌がしっとりもちもち。心なしか次の日のメイクのりが良かったように感じた。

・獺祭 酒粕アイス(350円/1個)

  • 獺祭 酒粕アイス(350円/1個)※画像提供:旭酒造

「純米大吟醸 磨き三割九分 遠心分離」の酒粕を搾りたての状態で使用したというアイス。相性が合うのか疑問に思いながら食べてみると、驚くほどに好相性。なめらかな口あたりとクリーミーでコクのある味わい、獺祭の華やかな風味は酒好きの大人が楽しめる一品だ。

その他、お酒が苦手でも獺祭を楽しんでみたい人におすすめの商品が多数取りそろえられている。ぜひこの機会に、獺祭の魅力を知ってみてはいかがだろうか。