一般的に「ありのままの自分を肯定し、認めることができる感覚」を指す「自己肯定感」。自己肯定感に関する著書も多く、その第一人者といえる心理カウンセラーの中島輝さんは、自己肯定感の重要性は「自分の人生を充実させてくれる点にある」といいます。

では、どうすれば自己肯定感を高められるのでしょう。中島さんが、6つのワークを紹介してくれました。

■自己肯定感は「6つの感」で構成される

自己肯定感が重要であるのは、自己肯定感が「自分の人生を充実させてくれる」というシンプルな理由でしょう。考えてもみてください。「自分はなにをしてもどうせ駄目なんだ…」と考える自己肯定感が低い人と、「自分には価値がある!」「自分にはできるんだ!」と考える自己肯定感が高い人のどちらが幸せな人生を送れるでしょうか? 答えはいうまでもありませんね。

ただ、自己肯定感は自己肯定感というひとつの感覚でつくられているものではありません。自己肯定感は、わたしが「6つの感」と呼ぶ要素によって構成されています。

【自己肯定感を構成する「6つの感」】
1.自尊感情:自分には価値があると思える感覚
2.自己受容感:ありのままの自分を認める感覚
3.自己効力感:自分にはできると思える感覚
4.自己信頼感:自分を信じられる感覚
5.自己決定感:自分で決定できるという感覚
6.自己有用感:自分はなにかの役に立っているという感覚

これら「6つの感」をしっかり育むことができて、はじめて自己肯定感を高めることができます。

■ネガティブにとらえたものをポジティブにとらえ直す

◆自尊感情を育む「リフレーミング」
自尊感情は「自分には価値が思える感覚」のことであり、自己肯定感の土台にあたります。自尊感情が高まると、「自分って結構いいよね!」と自分に対して誇りを持つことができますから、生き生きと毎日を過ごすことができます。

おすすめするワークが、「リフレーミング」です。自尊感情が育っていない人は、自分自身のことだけでなくあらゆることをネガティブにとらえがちです。そこで、ものごとをとらえるフレーム(枠)を変えて「ネガティブにとらえたものをポジティブにとらえ直す」リフレーミングが有効となります。

たとえば、なにか大きな仕事を前にして「失敗しちゃ駄目だぞ…」と思ってしまっては、わざわざ自分を緊張させて失敗の可能性を高めているようなもの。そうではなく、「成功するぞ!」ととらえ直すという具合です。以下に、リフレーミングの例を挙げておきますので、これを参考にして自分のなかにどんどんポジティブな言葉を増やしていきましょう。

【リフレーミングの例】

◆自己受容感を育む「フォー・グッド・シングス」
自己受容感は「ありのままの自分を認める感覚」のこと。自己受容感が高まっていれば、たとえ失敗して落ち込むなど人生におけるネガティブな場面においても、「そういう自分も自分だ!」と前向きに考えられますから、「必ずなんとかなる!」というたくましさを発揮できます。

この自分を受け入れる感覚を養うには、自分を必要以上に責めないおおらかさを持つことが鍵となります。そのためのワークが「フォー・グッド・シングス」です。まず、ネガティブな出来事を紙の中心に書きます。そのまわりに、今日のよかったことやうれしかったことを4つ書き出します。その内容はどんなに些細なことでもかまいません。

たとえば、ダイエット中に我慢できずに大好きなケーキを食べてしまったという人なら、こんな具合でしょうか。

「ダイエット中なのに我慢できずにケーキを食べてしまった…」
1:たまっていた仕事のタスクをしっかりこなせた
2:先週提出した企画書を上司から褒められた
3:帰宅途中、近所のネコに会えた
4:ケーキが本当に美味しかった

こうして4つのよいことでひとつの悪いことを包み込むイメージを持つことで、「駄目なことばかりじゃない!」と自分を責めずに受け入れることができるようになるのです。

■習慣化の取り組みのなかで「できた!」を積み重ねる

◆自己効力感を育む「if-thenプランニング」
自己効力感は「自分にはできると思える感覚」です。自己効力感が高まっていると、「自分はなにかを成し遂げられる人間なんだ!」と思えるために、なんらかの問題に直面したとしても、「こうすればうまくいくだろう!」とつねに前進する勇気を得ることができます。

この自己効力感を高めてくれるワークが、「if-thenプランニング」です。これは、「もしXが起きたら、行動Yをする」と決めておくことで、習慣化を促すメソッドとしてよく知られています。資格勉強を習慣化したい人なら、「帰宅したら、まっすぐ机に向かってテキストを開く」というふうに決めるといった具合です。

みなさんになにか習慣化したいことがあれば、それを、if-thenプランニングを使って生活に定着させることを考えてみてください。あるいは、「夕食をとったら、フォー・グッド・シングスをやる」というふうに、先に紹介したワークを取り込んでもいいでしょう。

こうして、日々のなかで感じる「できた!」が積み重なれば、「自分にはできる!」と思えるようになり、あなたの自己効力感を高めてくれます。

■「自分を信じる心」を揺るがすストレスに対処する

◆自己信頼感を育む「コーピング」
文字通り「自分を信じられる感覚」です。自己信頼感が高まっている人は、自分を信じられるために行動の幅が広がります。そうして自分の世界を広げる積極性を手に入れることができます。

しかし、いつもは自分を信頼できている人であっても、つねにそうできるわけではありません。その要因が、ストレスです。なにか大きな失敗をしてしまった、理不尽な理由で自分の仕事内容を否定された…。そういったストレスが重なれば、自分を信頼する心が揺らいでしまうのです。

そこで、「コーピング」というワークでストレスに対処しましょう。やることはとてもシンプルです。先のif-thenプランニングではありませんが、自分がストレスを感じたときに、気晴らしになりそうな解消法を、あらかじめ書き出しておいてリスト化するだけ。ただし、すぐに実行できなければ意味がありませんから、「海外旅行に行く」といった事前の準備が必要なことは避けましょう。

そうではなく、「背伸びをする」「散歩する」「料理のレシピを考える」「お気に入りの本を再読する」「コーヒーを飲む」「好きな曲を大音量で流す」「歌を歌う」「パートナーとゆっくり話す」「マッサージに行く」「サウナに入る」など、身近で実行しやすいことをたくさんリストアップしましょう。

そうすることで、ストレスに対処すると同時に、「なにがあっても自分は大丈夫だ!」と思えますから、自己信頼感が高まっていきます。

■将来の自分をイメージし、やるべきことを自分で決める

◆自己決定感を育む「スモール・タイムライン」
「自分を決定できるという感覚」です。じつは、わたしたちが感じる幸福度は、「自分で決めた!」という「人生を自分でコントロールできる感覚」、すなわち自己決定感に大きく左右されます。自己決定感が高まっている人ほど幸せな人生を歩めるのです。

この自己決定感を育むワークが、「スモール・タイムライン」。これは、メンタルトレーニングの一種であり、近い将来の「なりたい自分の姿」を思い浮かべ、そのためにやるべきことを自分で決めることで自己決定感を高めてくれるものです。

まずは、現在を起点にして3カ月後、6カ月後、12カ月後になっていたい自分をイメージし、目標として書き出してください。加えて、その目標が達成したときに自分のなかによぎるはずの感情も書き出しましょう。

以下は、わたしのクライアントでヨガスタジオを経営する女性の例です。彼女は独立開業した1号店の経営が順調で、2号店、3号店の出店を計画中。しかし、自分にはヨガの知識はあっても経営実務に関する勉強が足りないと感じ、仕事のあとに勉強を習慣化することに取り組みはじめました。

【スモール・タイムラインの例】
3カ月後の目標:経営実務に関する資格試験に向けた勉強を継続している
3カ月後の感情:なかなか大変だ。でも頑張る!
6カ月後の目標:資格を取得。2号店の開店準備をはじめる
6カ月語の感情:やった! 次は新店オープンに向けて頑張ろう
12カ月後の目標:ついに2号店をオープン
12カ月後の感情:うれしい! よく頑張った

日常のなかにも自分で決める場面はいくらでもあります。朝食をなににするのか、どんな服を着るのか、それらを決めることもすべて自己決定です。しかし、多くの人がそれを「自分で決めている」とは意識していません。そこで、スモール・タイムラインによって自分の目標とやるべきことを明確に「自分で決める」ことで自己決定感を高めることを考えましょう。

■周囲から「ありがとう」の言葉を得る

◆自己有用感を育む「ピア・プレッシャー」 最後は「自分はなにかの役に立っているという感覚」です。社会生活を営む人間にとって、「自分は役に立っているんだ!」と思える感覚は、生きていくうえでの大きな力になります。

自己有用感を育むには、「ピア・プレッシャー」というワークをおすすめします。ピア・プレッシャーは「同調圧力」と訳され、一般的には三日坊主を防ぐ習慣化のメソッドとして知られています。語学勉強を習慣化しようとしている人がひとりで勉強しているとどうしてもサボりたくなるときもありますよね。

でも、語学教室に通えば、そこで出会った仲間の存在によって、「みんなも頑張っているんだから」と思えて勉強を習慣化できるということです。

しかし、ピア・プレッシャーの効果はそれだけにとどまりません。そうした仲間との活動のなかで、自分が得られた知見があったなら、積極的に仲間に伝えてあげましょう。そうして周囲から「ありがとう」という言葉を得られたなら、あなたの自己有用感は一気に高まっていくはずです。

ここまで6つのワークを紹介しました。もちろんすべてをやる必要はありません。人には合う、合わないがあります。合わないものを「これもやらなければ…」と考えて無理にやろうとした結果、「できなかった…」なんて思ってしまえば、逆に自己肯定感を下げてしまいます。自分に合うものを選んでしっかり取り組んでください。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/川しまゆうこ