第34回東京国際映画祭のジャパニーズ・アニメーション部門、今年(2021年)は「仮面ライダー50th 仮面ライダーアニバーサリー in TIFF」と題され、生誕50周年を迎える「仮面ライダー」シリーズの大特集が行われている。11月3日は『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』(2018年)の上映に合わせた「仮面ライダーアマゾンズ トークイベント」が開催された。出演者は、人工生命アマゾンを駆除する仕事を請ける「駆除班」のメンバー俊藤光利、田邉和也、宮原華音、高木勝也の4人。そしてトーク中盤からサプライズ登場した仮面ライダーアマゾンアルファ/鷹山仁役・谷口賢志である。
Amazonプライム・ビデオにて2016年4月1日から6月24日まで全13話(Season1)、2017年4月7日から6月30日まで全13話(Season2)を配信した連続ドラマシリーズ『仮面ライダーアマゾンズ』とは、人間社会に暗躍している危険な人工生命「アマゾン」をめぐって戦いを繰り広げるさまざまな登場人物の激しいぶつかり合いを描き「人が生きるとはどういうことか」「人の命はどうして大切なのか」といった根源的なテーマと熱きドラマが追求されている。
配信作品という特性を活かし、日曜日の朝に放送されている従来の「仮面ライダーシリーズ」ではとてもオンエアできないような強烈すぎるバイオレンス描写や、刺激的なハードアクションも目いっぱい展開。1974年に放送された『仮面ライダーアマゾン』をモチーフにしつつ、「仮面ライダー」シリーズが本来持っていた"怪奇・恐怖"の世界の再構築が試みられている。
まずはイベントの前に『劇場版 仮面ライダーアマゾンズSeason1 覚醒』と『劇場版 仮面ライダーアマゾンズ Season2 輪廻』を上映。観客からの熱気うずまく中、シリーズ完結編となる『仮面ライダーアマゾンズTHE MOVIE 最後ノ審判』上映に先立ち「駆除班」メンバー(俊藤光利、田邉和也、宮原華音、高木勝也)がステージに現れ、トークイベントが開始された。
ぶっきらぼうで怖いイメージだが、実は情に厚く仲間を大事に思うリーダー・志藤真を演じた俊藤光利は「『アマゾンズ』の思い出といえば僕たちの撮影が始まる前、ホン読み(台本読み合わせ)の段階で、石田秀範監督からまず構想を聞かされた上で、一度解散になったこと。その間、メンバーそれぞれが自分のキャラを作ってくるよう指示があったんです。監督から事前に『こんどの作品はこういうキャラクター、こういう構想、こういう画にしたい』ってことを聞くというのはなかなかないんですよね。これは何か面白い作品になりそうだし、自分も“挑戦”できるぞと思いました」と、石田監督と出会った最初の段階から『アマゾンズ』というドラマに一味も二味も違う魅力を感じていたことを明かした。
深い悲しみを背負いながら努めて感情を表さず、寡黙にふるまう駆除班の名スナイパー「フク」こと福田耕太を演じた田邉和也。『アマゾンズ』で強く印象に残っている出来事としては「シーズン1もシーズン2も、福田は自分が愛するひとに対して“命を奪う”行動を取るんです。脚本を書かれた小林靖子先生は、よほど僕のことをいじめたいんだなって思いました(笑)。まあ役者としては、シーズン2でも福田の悲しみを示すシーンが来るぞと覚悟していたので、台本をもらったときは、さあ来た!と思って、本気で挑もうとしました」と、精神的に追い込まれるような局面に立たされる福田を全力で演じ切る覚悟を決めたと当時をふりかえった。
美しい容姿を備えるが、格闘戦はメンバー随一の実力を誇るクールビューティ・高井望を演じた宮原華音。男性メンバーの中で1人だけ女性が加わったことについて宮原は「始まったばかりのときはみんなと話すのが怖くて、ロケバスの中で1人『どうしよう』と不安でした。でも、最初のアクションシーンで俊藤さんの背中と頭を蹴ったことがきっかけで“大丈夫だ!”と思えて(笑)。アクションでみんなとの絆が深まったと思います」と、初のドラマ出演である本作に挑む際、少し不安があったことを打ち明けた。さらに「石田監督からは『お前は特攻隊長だ』と言われ、ここにいる強そうなメンバーに負けないよう、アクション練習に気合いを入れすぎて倒れてしまったこともありました」と、迫真のアクションを武器に男性メンバーを上回る気迫で撮影に臨んだと話した。
元詐欺師で話術が上手く、チームのムードメーカー的存在である三崎一也を演じた高木勝也。『アマゾンズ』で印象に残った出来事として「シーズン1の最後のシーン」を挙げた高木は「マモル(演:小林亮太)の大事なシーンでもありましたし、これで最後だと思っていろいろな感情が混ざっていましたが、あまり“演じよう”と思ってなくて、ものすごく自然体であの場所に立っていた。演じなくても、自然に言葉がすっと出ていました」と、駆除班の大切な仲間・マモル(モグラアマゾン)との切ない別れを回想し、しみじみと語った。
MCからの「他の役を演じるなら誰を演じたい?」という問いについて、宮原は「他の役はやりたくない。もう一度、高井望がいいです。今ならもっと上手く演じられるから」と、他の役柄は演じないときっぱり言い切った。さらに、田邉が「せっかくなら、変身したいですよね」とふと言ったことがきっかけで、4人に「変身ポーズ」を披露してほしいという流れになってしまった。田邉は「口は災いのもとだな~」と言いながら、照れくさそうに立ち上がり、ちょうど前日に『仮面ライダーリバイス』で共演している前田拳太郎(仮面ライダーリバイ/五十嵐一輝役)から直々に教わったというリバイの変身ポーズをクールに決めてみせた。続いて高木、宮原、俊藤も、この「無茶ぶり」に対して大いに照れまくり、恥ずかしそうにしながらアマゾンズドライバーによる変身のかけ声「アマゾン!」を独自のアレンジを交えつつ、なんとかこなしていた。
続いて『仮面ライダーアマゾンズ』のドラマの中核を担う2人のライダー、すなわち仮面ライダーアマゾンオメガ/水澤悠役の藤田富と、仮面ライダーアマゾンアルファ/鷹山仁役の谷口賢志の話題に。
高木は谷口について「話せないことしかない場合はどうしたらいいんですか(笑)」、そして田邉は「話したくありません(笑)」と、何やら複雑な思いがありそうなコメントで牽制し、会場の笑いを誘った。改めて高木は「谷口さんは姿で引っ張ってくれた、生き様とか背中とかで……」と、『アマゾンズ』という作品自体やキャストを引っ張る兄貴分的存在だったと谷口の存在を称えた。
一方、田邉は「(谷口とは)飲みの場で口論になる」とこぼし、俊藤もこれを受けて「賢志は必ずフク(田邉)とケンカしますね。芝居への愛が熱い男ですから。撮影のとき一緒になっても駆除班のところには近寄らず、鷹山仁のキャラを貫いていた。そのへんに座っていても、よどんだオーラを出してるんですよ。そこまでして鷹山仁を演じてくれたので、こっち(駆除班)は彼とどういう接点を持つかという感じで、おのおの動くことができました」と、過酷な運命を背負って生きるか死ぬかの闘いを繰りひろげる鷹山仁を、谷口がいかにのめりこんで演じていたかを回想し、その役者魂を絶賛した。
藤田について俊藤は「最初に会ったときの富は新人のオーラを出していて、ピュアな感じがまさに“養殖”のキャラにピッタリだった。彼が石田監督からよく“お前、仮面ライダーを演ろうとするな”って言われていたのを覚えています。富は監督の要求に必死で応えてきたし、そこに賢志が“はっはっは、そんなんじゃ俺に勝てないぞ”とあおる、みたいな環境づくりを毎日していました。経験を重ねた結果、シーズン2のときの富は顔つきがすごく違っていた。そして映画『最後ノ審判』になったら、完全に主役の顔になっていた。人はここまで変わるんだなあという印象です」と、ハードな撮影を幾度も経験したことによって藤田が俳優として大きく成長を遂げたことに驚きと喜びを感じたことを明かした。