15歳で芸能界デビュー以降、鮮烈な輝きを放ち続けている俳優、山田孝之。Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』では、世界を視野に入れた作品づくりを行い、確かな成果を残した。38歳の誕生日となる20日には朗読CD付き詩集 『心に憧れた頭の男』(ワニブックス 1,980円)を発売。プロデューサー、映画監督、音楽活動、そして詩の創作と、役者以外の仕事にも精力的に挑戦している。

そんな彼が常々訴えかけているのが、役者や現場スタッフの労働環境のアップデート。そこには、映画が人々に与える力を信じ、より良い作品を作りたいと願う山田の純粋な思いがあった。

  • 山田孝之 撮影:島本絵梨佳

■映画『デイアンドナイト』で実感「僕らは成功した」

自身の活動について、「結局僕がやってるのって全部表現なんですよ」と話す山田。その原動力を尋ねると、「良いのか悪いのかは分からないですけど、人の気持ちを動かしたい」と答え、自身がプロデュースを手がけた映画『デイアンドナイト』(19)を通し、それを改めて実感したというエピソードを明かす。

「『デイアンドナイト』を上映している劇場に行くと必ず見かける女の子がいて。聞いてみたら、その子は高校生で、『デイアンドナイト』を観るのは50回目だと言うんです。高校生ですよ? チケット代も大変じゃないですか。僕や出演者の誰かのファンということでもなく、理由はわからないけど『デイアンドナイト』の世界観に惹きつけられて、『観られる場所全部で観たい』となったらしいんです。その人の存在を知った時に、興行収入とか動員数とか関係なく、僕らは成功したと思いました。一人の人をそれだけ動かしたから」

「映画って、職人の集まりだし、作ってる場所も結構マッドなんですよね。ただ、表に出る時には、どうしてもエンターテインメントビジネスになるから、何かちょっとアートとは違うものに切り離されている部分があるように感じるんです。でも、本に“私の人生を変えた一冊”があるように、映画にも絶対にそういう力があると僕は思っています」

■自らプロデューサー業を行う理由

山田は映画の力を信じている。だからこそ、アンバランスな業界の在り方を案じずにはいられない。役者である彼が自らプロデューサー業を行うのも、その必要性があるからだ。

「単純に目的だと思うんです。お金が目的だったら、やっぱり“安く作って高く売れ”なので。撮影日数も短いほうがいいので、1日の労働時間も増える。もちろんビジネスとしてそれは必要なことかもしれないけど、みんなで同じ目標に向かって、いい現場でちゃんといい仕事をして、いい作品を生み出して、それを届けることのほうが大事なんじゃないかな」