役者や現場スタッフの労働環境など、解決しなければならない問題は多い。そんな状況のなか、プロデューサーがまずすべきことは「現場の気持ちを考える努力」だと彼は考えている。
「プロデューサーは、現場が出来るまでと出来た後がメインの仕事なので大変なのはわかるんですけど……お金儲けが悪いことだとは思わないです。業界全体で言うと、みんなが気持ちだけでやってると成立しないので。ただ全体がそれを正解として、映画がお金を稼ぐための一つの道具になってしまうと、そこで心を病む人たちが間違いなくいる。もうちょっと心のことを考えて、バランスを取りながらやるべきだと思うので、僕はそういう風にします」
■「役になることはやっぱりツラい」
役者は自分の経験をもとに、他人の人生を生きるという途方もない作業を行っている。山田は「役になることはやっぱりツラい」と言い、過去のインタビューでも、俳優にとって1年間に取り組む作品の本数は2本がベストだと話していた。
「『自分ってなんなんだろう?』となるので、役者は気持ちが落ち込みやすい職業なのかなと思います。実際、病む人も多い。僕は基本、『自分がなんだっていい』『そんなものすら存在しない』と思っているので病みはしないのですが、精神力で自分の過去から何からを消して『こっち(自分が演じる役の人格)が本当だ』と変える作業を毎回やるのは、やっぱり相当な精神的ダメージがあります」
しかし現実として、「年2本」で生計を立てていくのは難しい。山田は「道を作っているという感覚はない」と前置き、静かに熱を帯びながらこう訴えた。
「僕らは明日『終わり』って言われたら終わりですから。お金のことをしっかり考えたプロデューサーが映画をビジネスとして捉えて、売りに行くなら売りに行くでいい。でも、売れたんだったら、それを分配すべき。対価もない、現場の気持ちも考えない、要は、作らせて売って、自分たちだけが儲かるっていうのはちょっとおかしいですよね。それが嫌だなと思っていても変わらないんで、僕がやっています。もうちょっと、みんなが気持ちよくやったほうが作品も良くなると思います」
山田孝之
1983年10月20日生まれ。鹿児島県出身。1999年に俳優デビューし、2003年に『WATER BOYS』(フジ系)でドラマ初主演。主演をつとめた映画『電車男』(05)は社会現象にもなった。その後『闇金ウシジマくん』シリーズ(12~16)、『勇者ヨシヒコ』シリーズ(11~16)などのドラマで存在感を発揮。主な出演映画は『クローズZERO』シリーズ(07~09)、『凶悪』(13)、『映画 山田孝之3D』(17)、『50回目のファーストキス』(18)、『ハード・コア』(18)、自身のドキュメンタリー『No Pain, No Gain』(19)など。2019年には主演ドラマ『全裸監督』(Netflix)が全世界に配信され人気を博す。近作の主演は映画『はるヲうるひと』(21)、『MIRRORLIAR FILMS Season1 さくら、』(21)がある。また、映画『デイアンドナイト』(19)ではプロデュース、映画『ゾッキ』(21)で長編監督デビューした。
スタイリスト:五月桃(Rooster)
ヘアメイク:灯(Rooster)
シャツ:64,900円/YOHJI YAMAMOTO(ヨウジヤマモト プレスルーム)