出産と育児のために、その期間専業主婦を選択する方も多いと思います。子どものためにはできるだけ長く家にいたいけど、子どもの教育費や老後の資金などを考えると、そうのんびりもしていられないかもしれません。また、年齢が高くなるにつれて再就職の条件も悪くなるかもしれません。早く好きな仕事に従事したいと思っている方もいるでしょう。いろいろ考えると悩ましい問題です。どのようなことを考えて、再就職の時期を判断すればよいのでしょうか。
予定している復帰後の職種と働き方は?
復帰を予定している職種や働き方によっても状況は変わってきます。例えば…… - 元の職場に復帰or新規求職、フリーで働く等 - 正社員で勤務を希望orパートタイムで働く等 - 営業職や事務職or専門職(国家資格等を有する)等
事務や営業などのパートを希望するのであれば、時期の制約は少なくなります。元の職場に復帰し正社員としてバリバリ働くのであれば、会社が設定している期限はあるでしょうし、同僚と差が開きすぎるのも、働きにくくなるでしょう。フリーで働くのであれば、専業主婦の間もスキルアップや取引先との関係維持は大切でしょう。また資格があるからと言って、ブランクが長ければ復帰は簡単ではないでしょう。最初に希望する方向性を再確認してみましょう。
ライフプランニングから見た最適な時期
ライフプランニングは自分たちがどうしたいかが最も大切です。そうした自分たちの希望が将来にわたって健全に実現できるかを検証するのがライフプランニングです。
例えば、3年後にパートとして再就職を希望しているケースを考えてみます。下図はライフプランニングシートの5年分を抜粋したものです。
実際は平均余命程度までは作成してください。毎年の予定収入と支出を記入し、預金残高が極端に少なくなる時があれば、その時期が家計のリスクが高い時期となります。その時期に不測の事態が発生するとたちまち家計は破綻してしまいます。家計のリスクが高い時期までに、節約したり収入を増やしたりするなどで貯蓄額を健全化するか、保険などで対策を講じればリスクが少なくなります。
働く時期を1年早めたり遅らせたりして、先々の収支がどう変化するかを見てみると、最適な再就職時期が見えてきます。エクセルで簡単に作れますので、シートを変えて、1年遅くまたは1年早く再就職したと仮定したケースを比較してみてください。想像以上の違いが現れるはずです。
専門職はスキルの維持に要注意
以前、結婚を控えた若い女性医師の相談を受けたことがあります。内容は仕事のことではなく、住まいのことでしたが、子どもができた時のキャリア維持について悩んでいました。医療の世界は日進月歩で、あまり長く休職しているとリカバリーが難しくなるそうです。言われてみれば、私が所有しているFPと建築士の国家資格を考えても、毎年法律は変わり、新しい制度や基準ができ、新しい工法や製品、材料などが登場しますので、長く仕事から離れていると、とても追いつけないでしょう。
専門知識を生かして再就職する場合は、休んでいる間も何かしらの仕事に携わっていたほうがよいでしょう。現在はリモートワークも認知されてきました。いろいろな働き方があるので、その分野とのパイプをつないでおく方が再就職は楽になります。
住宅ローンの返済と復帰の時期
最近は夫婦共有名義で住まいを習得することが多いでしょう。ペアローンなどを利用するケースもあります。専業主婦の期間は収入がないとなると、ローンの返済は貯蓄を取り崩すか配偶者が肩代わりすることになります。厳密的にはその金額は贈与であり、年間110万円の基礎控除内の金額であっても、継続的な贈与の場合には贈与税が課せられることも考えられます。
自分の年金は確保しよう
これからの時代、夫婦それぞれ自分の年金を確保する方が望ましいでしょう。そもそも自営業の第1号被保険者と会社員の第2号被保険者で専業主婦の第3号被保険者の年金を、果たして今後とも負担していけるかはわかりません。離婚となれば年金分割したとしても、額は少なくなります。夫婦で生活できても、分割してそれぞれが生活できる金額とはならないかもしれません。
育児休暇中の年金保険料は届け出をすれば免除され、育児休業前の標準報酬額で保険料が支払われたものとして年金額が計算されますが、一旦完全に離職してしまえば、その得点はありません。ある程度最低限は自立して生活できるだけの年金額を確保することも考慮に入れておくことが必要です。
結局再就職のベストタイミングは、自分がどうしたいかという生涯設計次第であり、生涯設計を円滑に遂行するためのリスクを回避できるかどうかによります。生活設計がなく、一般論的基準に従っても安心・安全とは限らないでしょう。