伊藤園は、「第4回 伊藤園健康フォーラム」を9月3日に伊藤園公式YouTubeにて開催した。同フォーラムのテーマは『感染症時代における茶の効用』。私たちが普段から口にしているお茶は、この感染症時代においてどのような効用があるのだろうか。

  • 第4回 伊藤園健康フォーラムが開催。各分野の専門家が茶の効用について紹介した

いかに健康二次被害を防ぐか

伊藤園が『お茶で人生100年時代を豊かに生きる知恵』として実施している健康フォーラム。第4回は、前回(第3回)に引き続き新型コロナウイルス感染症をテーマに取り扱った。

冒頭に登壇した伊藤園 中央研究所 所長の衣笠仁氏は「外出自粛によって起こる生活習慣病、認知機能の低下、ストレスの増加、マスクの長時間使用による口腔内環境の悪化など、『健康二次被害』の問題も大きくなってきました。そこで、このような時代にお茶はどのように役立つか、有識者の方々と一緒に考えていきたいと思います」と挨拶した。

  • 伊藤園中央研究所 所長の衣笠仁氏は「本フォーラムが消費者の生活の質の向上に役立てば幸いです」と述べた

茶カテキンで免疫活性化へ

基調講演では、静岡県立大学薬学部の山田浩教授が登壇して「茶カテキンによる免疫機能の活性化と感染症予防」について解説した。これまで、茶カテキンによる院内感染予防に取り組んだり、緑茶による”うがい”でインフルエンザ予防を試みたり、お茶の成分に着目したユニークな研究を続けてきた山田氏。その代表格である茶カテキンについては「抗菌・抗ウイルス作用、抗炎症・抗アレルギー・免疫機能賦活化作用などの効能があることが分かっています」と説明。そして、すでにエビデンスのあるいくつかの研究について紹介していった。

  • 静岡県立大学薬学部 教授の山田浩氏

そのなかで、茶カテキンは急性上気道炎(鼻からのどの急性炎症)のウイルスを抑える効果があると説明した。急性上気道炎には、風邪、インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスなどが含まれている。山田氏は「例えばインフルエンザにおいては、茶カテキンがウイルスの宿主細胞への吸着を阻害すること、細胞内での増殖を阻害すること、細胞外への放出も阻害することが基礎研究で分かってきました」と説明する。

  • 茶ポリフェノールのインフルエンザウイルス感染阻害作用

実際、静岡県菊川市の全小学生(2,000名超)を対象にした2011年のアンケート調査では、緑茶の飲用機会が1日1杯(200ml)未満の小学生と比較したとき、1日3~5杯の緑茶を飲む小学生はインフルエンザの発症率が46%も減少していたと報告する。また同様に医療・福祉従事者を対象とした調査でも、カテキン・テアニンを摂取した人はインフルエンザの発症率が抑えられることが分かっている。

そこで俄然、注目度が増しているのが新型コロナウイルスに対する効果。山田氏は「お茶のカテキンが何か補助的な役割で役に立つのではないか。世界でも関心が高まり、研究が始まったところです」とし、緑茶によるコロナ予防の効果に期待を寄せた。

お茶の5つの効用とは

続くパネルディスカッションには衣笠氏、山田氏のほか、京都府立医科大学の松田修教授、静岡県立大学短期大学の仲井雪絵教授、みやま市工藤内科の工藤孝文院長が参加。「コロナ禍における”茶の効用”」について語り合った。

  • (左から)山田氏、京都府立医科大学大学院医学研究科 免疫学の松田修教授、静岡県立大学短期大学部 歯科衛生学科(小児歯科専門医指導医)の仲井雪絵教授、みやま市工藤内科の工藤孝文院長

山田氏は、感染症対策で重要なこととして「まずは細菌、ウイルスの侵入を防ぐこと。また、身体に入ってしまっても重症化を抑えるということです。カテキンには免疫機能を活性化させる効果があり、非常に注目しています」とする。

松田氏は、お茶を口に30秒くらい含み、口の中に行きわたらせてから飲む"含み飲み"をすることで唾液のなかのウイルスが不活化し、人同士の飛沫感染を防げる、つまり感染拡大の予防に役立つのではないかと説明する。「お茶に含まれるカテキン類が、ウイルスの表面にくっついて感染力を失わせることが分かっています。だから公衆衛生学的な観点から、世の中の人がお茶を含み飲むことで、感染症の拡大を抑制できると考えています」。ポイントは、少量で良いのでこまめに、口をゆすぐようにして飲むことだという。

また仲井氏は「皆さんも人生の中で、これだけマスクつけっ放し生活になったことはないと思います。マスクをすると鼻呼吸が大変なので、自然と口呼吸になります。すると知らず知らずのうちに普段から口呼吸するようになり、口腔内が乾燥してしまう。虫歯にもなりやすくなります。歯周病の方はコロナが重症化しやすいというデータもあり、口の中を健康に保つことは、実はコロナ禍においても非常に重要と言えます」と話す。

そして、口腔ケアの観点でも緑茶を活用すべきと説いた。「昔の人は、地方によってはお茶を使って歯の仕上げ磨きをしていました。まだ今後の研究を待たないといけない部分はありますが、茶カテキンによって、口内の虫歯菌の増殖が抑えられる効果があると考えられます。虫歯菌が歯にくっつきにくくなる。日常的に摂取する緑茶で、そうした効果が期待できるわけです」。

工藤氏は「体内リズムの乱れを直すため、レモン緑茶を薦めています。緑茶とレモンを合わせることで(生活習慣病の予防に有効な)アディポネクチンというホルモンが増えることが分かっています。水出しにすると、テアニンというリラックスできる成分も出る。クエン酸が身体の疲労を取り、テアニンが心の疲労を取る。緑茶とレモンはベストな組み合わせだと思います」と提案した。

衣笠氏は「コロナ禍になり、人はコミュニケーションする機会が極端に少なくなりました。生活環境が一変したことで、うつ病を発症したり、ストレス過多になったり、高齢者では認知機能の低下なども報告されています。脳の活性化という観点でも、コミュニケーションは人にとって大事なことなんです」と説明する。

そのうえで「お茶する」という言葉は「人とコミュニケーションを図る」という意味として使われているとし、コロナ禍の現在でも”コミュニケーションツール”としてお茶は非常に重要な役割を担っている、と衣笠氏はまとめた。

第4回 伊藤園健康フォーラムは「コロナ禍におけるお茶の効用」として、「インフルエンザ予防」「新型コロナウイルス感染拡大抑制~公衆衛生学的使い方」「口腔ケア」「体内リズムを整える」「コミュニケーションツールとしての使い方」の5項目を挙げて閉会となった。

  • コロナ禍におけるお茶の効用