「明日、伺ってもいいですか?」とビジネスシーンで聞かれたとき、何と答えますか。多くの人が「構いません」と答えるかもしれません。しかし「構いません」には相手に許可を与えるというニュアンスも含まれるため、上司や顧客などとくに丁寧に接したい人へ使うのはあまり適切とは言えません。

本記事では「構いません」の意味や類語、英語表現などをご紹介。ボキャブラリーが増えれば、ビジネスシーンのコミュニケーションもスムーズにすすみますよ。

  • 「構いません」とは?

    「構いません」の使い方や注意点を解説する記事です

「構いません」とは?

「構いません」とは、動詞「構う」の未然形「構わ」に、打ち消しの助動詞「ない」が付いた「構わない」の丁寧表現です。

「構いません」の意味

「構いません」について見る前に、まず「構う」の意味から確認していきましょう。ここでは主に4つの意味を紹介します。

「構う」の意味
1.気にする、気をつかう
2.ほかのことと関わって問題があると感じる
3.世話を焼く、相手にする
4.自分より弱い者や動物に対してふざける・からかう

「構いません」には相手を許容する意味がある

「構いません」と打ち消し表現にする場合は、上記の「1」「2」の意味で使うことが一般的です。

「気にする、気をつかう」「ほかのことと関わって問題があると感じる」を打ち消しているので、「気にしません」「問題ありません」という意味になります。

つまり「構いません」には、相手に対して許可したり、許容したりするニュアンスが含まれています。

  • 「構いません」とは?

    「構いません」は「気にしません」や「問題ありません」という意味です

「構いません」は「大丈夫です」の敬語表現? ビジネスで目上に使える?

「構いません」という表現は、上司や顧客などに対しても使うことができるのでしょうか。

「構いません」は「大丈夫です」の敬語表現ではない

「構いません」は「大丈夫です」の敬語表現だと思われがちですが、「大丈夫です」の敬語表現ではありません。「構いません」は「大丈夫です」と同じ意味で使用され、ビジネスライクで堅い印象にはなりますが、より丁寧な表現というわけではありません。

一方で、ビジネスシーンで「大丈夫です」というのはカジュアルな印象を与えるので、「大丈夫です」を使用するのであれば「構いません」に言い換えた方がいいともいわれています。

  • 「資料の提出は明日で大丈夫です」
    →「資料の提出は明日で構いません」

  • 「提案内容はこれで大丈夫です」
    →「提案内容はこれで構いません」

目上の人や上司、顧客に使うのは失礼にあたる

「構いません」は「気にしません」「問題ありません」という、相手を許容する表現です。「許容」とはよいと認めることです。

つまり、目上の人に対して「構いません」とするのは、その人に許可を与えるという意味になってしまいます。部下が上司に許可を与えるという表現はふさわしくありません。

目上の人に対しては「差し支えありません」「問題ございません」などが適しています。同僚や後輩に対しては「構いません」でよいでしょう。

メールに使う場合は相手による

「構いません」はメールにも使える表現ですが、少し素っ気ない印象があります。相手が付き合いの長い取引先ならともかく、まだ付き合いの浅い人とは「問題ございません」「差し支えございません」など、丁寧な言葉を選ぶのもよいでしょう。

  • 「構いません」を使うときの注意点

    「構いません」は目上の人に対しては避けましょう

「構いません」の使い方・例文

「構いません」の意味や注意点を確認したところで、次は具体的な例文を紹介します。2つのシーンに分けてみていきます。

相手に許可を与えるとき

相手が「〇〇してもいいか?」と許可や確認を求めるときの返事に使います。

A:今日の予約ですが、変更をお願いしたいのですが。
B:明日以降ならいつでも構いません。

A:●と□は、どちらがよいと思いますか?
B:どちらでも構いませんよ。お任せします。

相手のミスを許容するとき

相手からの謝罪やお詫びを受けるとき、許容する意味の返事に使います。

A:遅れて申し訳ありません。
B:いいえ、構いませんよ。

A:この度は〇〇の提出が遅れてしまい、大変ご迷惑をおかけしました。
B:構いません。お気になさらないでください。

「いつでも構いません」の丁寧な表現は?

ビジネスシーンでよく使用される「いつでも構いません」は、以下のように言い換えることで丁寧な印象になります。

  • 何日でも差し支えございません
  • いずれの日でも問題ございません
  • どの時間帯でも問題ございません

目上の人に「いつでも構わない」ということを伝える際は、上記の紹介したフレーズを使うようにしましょう。

  • 「構いません」の使い方・例文

    「構いません」は相手に許可を与えたりミスを許容したりするときに使います

目上に使える「構いません」の類語・言い換え表現

「構いません」の類語・言い換え表現についてみていきます。

差し支えありません

「差し支える」とは「都合の悪いことが起こる、妨げとなる」という意味。この打ち消し表現の「差し支えありません」は、「構いません」の類語だと言えます。

ただし「差し支えありません」には相手を許容するというニュアンスは含まれないため、目上の人に対しても使うことができます。

支障ありません

「支障」とは「物事を行う際に妨げとなるもの、差し支えるもの」という意味です。「支障ありません」も「構いません」の類語と言えます。

問題ありません

「問題ない」という言葉は「重要でない、取り立てて検討・解決する必要がない」という意味です。より丁寧な表現にするなら「問題ございません」を使うといいでしょう。

  • 「構いません」の類語・言い換え

    「構いません」の類語・言い換え表現も知りましょう

「構いません」の英語表現

「構いません」の元の表現である「構わない」は、「do’nt mind」や「do’nt care」と訳すことができます。

I’m sorry that I have lated to send a quotation.(見積書の送付が遅れてすみません)
I do’nt mind.(構いませんよ)

I have some urgent business to attend to, so I don't care if you're late. Please come with care.
(私も急用が入ったのであなたが遅れても構いませんよ。気をつけてお越しください)

  • 「構いません」の英語表現

    「構いません」の英語表現も覚えてビジネスシーンで活用しましょう

「構いません」は「いつでも大丈夫」の敬語表現ではない

「構いません」は、「それをしても問題ない」「気にしない」「差し支えない」などの意味があります。相手を許容するという意味では、目上の人に対して使うのは失礼にあたる場合も。

より丁寧な表現をしたいなら、「問題ございません」「差し支えございません」といった表現を選びましょう。