ものまねタレントとして、長く第一線に立ち続けてきたコロッケさん。その活躍を支えてきたポリシーや、大事にしてきた視点についてお聞きしました。

デビュー以来、故郷の熊本からいつも気遣い続けてくれたという母親からの言葉や、芸を追求するなかで感じた「マネる」ことの奥深さ。そして、芸を高いレベルに進化させる「継続」することの意味、相手を尊重することの重要性など、コロッケさんがものまねを通じ心に留めてきたことは、多くの人の人生にヒントをもたらしてくれます。

■前編はこちら「コロッケさんに聞くものまね人生—チャンスを摑む3原則」

■人生を支えてくれた母からの金言、「あおいくま」

——自分のやりたいものまねをするために、道がなければ自ら切り拓いていく—。コロッケさんがそうやって人生を歩んできたなかで得られた、「気づき」についてうかがいます。芸能界で生きてきて、思うように結果が出ない時期などもあったと推測しますが、そんなときはどのような意識を持って活動されていましたか?

これはいろいろなところでお話ししてきたのですが、尊敬する母親から「人生は、この5つ」と教えられた心掛けがあります。それは、「あせるな」「おこるな」「いばるな」「くさるな」「まけるな」という5つの心掛けです。それぞれの頭文字をとって、「あおいくま」と覚えるようにいわれていたのですが、この言葉にはずっと支えられてきましたね。

人生を重ね多くの場面に直面するたびに、言葉の持つ深い意味がわかってきたというのもあります。例えば、「まけるな」は「人にまけるな」ととらえることもできますが、母は「自分にまけるな」ということを伝えていたようです。これに気づいたのは、デビューから7年目に一流のものまねタレントが集うテレビ番組『ものまね王座決定戦』で初優勝したことがきっかけでした。

目指していた優勝を手にしたうれしさの一方、「これからはなにを目標にしていけばいいのだろう……」という迷いが生じたとき、母の「まけるな」という言葉を思い出し、「これからは自分にまけないように芸を磨いていけばいい」という答えにたどりつくことができたのです。夢を叶えたあとにさらなる高みを目指せたのは、「まけるな」のおかげでした。

——頂点に立つことで感じた不安を払拭してくれたのが、「まけるな」という言葉だったのですね。

もちろん、芸能界にたくさんいるライバルにまけないように頑張ることは大切なことです。でも、その気持ちが強くなり過ぎた結果、彼ら彼女らを「邪魔だ」と思ってしまうのは寂し過ぎますよ。ステージやテレビ番組では、演者同士が力を合わせることで大きな笑いを生むことだってたくさんあるのですからね。

競い合っているものまね芸人から、「一緒にライブをしましょう」と声をかけてもらったときも積極的に向き合えましたし、才能を持った新人が現れたとしてもネガティブな思いが湧くどころか、「俺たちの仲間が増えた!」とポジティブに受け入れることができました。

■「マネる」とは、見て学ぶこと

——「人気」という不確かなものに左右される芸能界の第一線で活躍し続けながら、芸を磨き、新たなネタもつくり続けるのは大変なことだと思います。それを続けるモチベーションの源泉はどこにあるのでしょう?

僕の生業である、「マネる」こと自体の奥深さでしょうか。一言でものまねといっても、顔まね、声まね、形態模写など様々なかたちがありますし、それらをどういう配分で組み合わせるかも、ものまねをする人それぞれで異なります。それが結果として、個性や面白さの違いになっています。

そして、もっとも大きな違いを生み出すのが、マネる対象をどのように見ているかという「観察眼」だと考えます。

職場の上司や先輩に対して「この人のようになりたい」と憧れを抱いたとき、その仕事の仕方や日頃のふるまいなどを観察して、同じようにやってみようとしますよね? でも、そう簡単にその人と同じような仕事はできないはずです。そこで、あらためて観察してみると、最初は見えていなかった部分が少し見えてくる。

それは裏を返せば、最初の観察が甘かったということを意味します。なにかをしっかり見るというのは、本当に難しいことなのです。

——目を向けるだけでも入ってくる情報はありますが、それは本質のほんの一部なのかもしれません。

僕の場合は、この難しい観察という行為を徹底的に行っていくと、インスピレーションが生まれて発想が飛躍しはじめ、ものまねという芸にオリジナリティをもたらしてくれます。ちょっと大きな話になってしまいますが、これは人間が文化を発達させてきた過程と重なるとも思うのです。

徹底的に先人の知恵に学び、それを再現できる地点に到達できた人たちが、そこにまたオリジナリティを加えていく—。その繰り返しが、文化を豊かで高いレベルのものにしてきたのでしょう。

とはいっても、芸術のような分野ではなく、普通の社会生活で「マネる」ことを生かそうとする場合はもう少し力を抜いてもいいかもしない。丹念な観察は欠かせませんが、それを実際に自分の体を動かしマネていくときは、あまり完璧を求めないことも大事なことです。

完璧主義でいては、「思うようにできない……。無理だ」と可能性をシャットアウトしてしまうことにつながりかねません。最初はマネをしたい対象をしっかり観察し、試行錯誤を続けていく。そのうち、徐々にでも再現できるはずです。

■継続がインスピレーションを生み、進化を生み出す

——他者をマネるには、ある程度の時間を要するということですね。「できない」とすぐにあきらめずに、観察をおこたらず努力を継続する必要がありそうです。

「継続する」ことは本当に本当に大切なことです。僕自身も、思いついたものまねをステージで披露するまでには相当な時間をかけますし、披露したあとも改善を繰り返しています。1回で満足がいくものに仕上がったことなどまずありませんし、ものまねというのは、周囲の反応をうかがいながら、長い時間をかけて磨きあげていくのがあたりまえだととらえています。

継続のなかでインスピレーションが生まれ、進化をもたらしてくれることも珍しくありません。歌手の五木ひろしさんがロボットのような動きをしながら歌う、「五木ロボット」の芸などはその代表格でしょうか。五木さんのものまねは僕のなかでも古くからやらせていただいているレパートリーです。その継続が、よくわからないオリジナルな方向へと進化を起こしてしまった……(苦笑)。

長く続けていくうちにそういったブレイクスルーが生まれたことは何度もあります。むしろ、ブレイクスルーを生み出すには、継続が必要です。

もちろんすべての人ではありませんが、若い芸人さんを見ていると、少しネタに対する見切りが早い気がします。舞台でやってみて何度かウケなかったりすると、そのネタをすぐにやめてしまうのです。

「長い時間をかけながら、結果につながらなかった」という失敗を恐れているのかもしれませんが、もっとしつこくこだわって芸を磨き続ければ、その過程で自分の芸を進化させてくれる新しい発想に出会えるかもしれません。そのあたりは、もったいない気がしています。

■「相手が一番、自分が二番」がコロッケの芸風を支えている

——ものまねを通じて笑いをもたらす道を切り拓いてきたコロッケさんですが、「笑いをつくり出す」うえでもっとも大事なことは、どんなことだとお考えですか?

笑いに限りませんが、僕は「相手が一番、自分が二番」という言葉を大事にしています。いい笑いは「自分はこうしたい」という思いからは生まれず、いつでも見にきてくださるお客様を気遣いながら「これで大丈夫だろうか?」「楽しんでもらえているだろうか?」「これでいいのか?」と謙虚に想像し模索することから生まれると考えているのです。

よって、ネタを考えているときは、僕のなかに「これでよろこんでもらえるかな?」という気持ちがあるかはいつも意識しています。それがコロッケとしての芸風を支えてくれていて、ここまでやれた要素だと思うのです。もちろん、「自分のためだけに頑張る」という時期があってもいいのかもしれませんが、僕の場合、それだけではここまでものまねに夢中になり、続けることはできなかったと確信しています。

■「地道な努力」がしにくい時代。そこにチャンスがある

——いま、エンターテインメントの世界を目指す若者などを見ていて、なにか感じていることはありますか?

僕はYouTubeもよく観るのですが。YouTubeに対して「楽して稼げる」というイメージを抱いたり、それを見て自分でもはじめてみたりする人もいると思います。でも、そういう想像はまったくの誤りで、トップにいる人たちは努力に努力を重ねていますよ。

僕も出演させていただいたのですが、人気YouTuberグループのFischer'sは多くの参加者を集めて鬼ごっこをする企画を実施して動画にしていますが、あれは20台くらいのカメラで撮影していて、それをリーダーのシルクロードが編集しているそうです。

それはいわば、普通の番組制作における数人分の役割をひとりでこなしているということですから、途方もない手間がかかっていて、楽どころかハードそのものです。本当に凄いなと、感心どころか感動すらしてしまいました。

——いまもむかしも変わらず、一流になる人にはしっかりとしたこだわりがある。

いまって、SNSなどの発達もあり誰もが夢を描きそれを叶えるためのチャンスは摑みやすい時代になっていると感じます。それ自体は素晴らしいことですが、その「もしかして……」「うまくいくかも……」という選択肢が多いために、地道な努力がしにくくなっていると懸念もしています。

ただ、逆の見方をすれば、それこそがチャンスをつくり出しているとも思います。地道な努力をする人が減っているということは、競争相手が減っているということでよね? 基礎から技術をつけていけば、以前よりも時間をかけずに階段をどんどんのぼれるはずです。

そう考えたとき、人によっては「この人は信頼できる」という目標とするメンターを見つけてついていくという道を選ぶのもありではないでしょうか。

——師匠と弟子、先輩と後輩といった関係はかつてより減りつつありますが、そうした関係を通じて確かな技術を身につけるのが、「近道」になる。

懐に入り込んでいくのは簡単ではありませんが、その人のことをよく調べて深く知ったうえで近くにいるようにすれば、そのうち「また君か。しょうがないなあ」といってイロハを教えてくれる人だっていますよね。

僕は極端にデフォルメしたものまねでたくさんの人を怒らせてきましたが……(苦笑)、リスペクトし心から学ぼうとしたり、真剣に観察したりすることだけは手を抜かずにやってきたつもりです。それは相手にもしっかり伝わるものだということも、経験から学ぶことができました。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/秋山健一郎 写真/石塚雅人

■前編はこちら「コロッケさんに聞くものまね人生—チャンスを摑む3原則」