昨年に続きコロナ禍で無観客開催となった日本テレビ系大型特番『24時間テレビ44』(21~22日)。“新しい日常”での2回目の放送として、「想い~世界は、きっと変わる。」をテーマに掲げた今年は、“笑顔”にあふれ、“復興”のメッセージを強く打ち出す内容となった。

  • 『24時間テレビ』

■昨年のテーマ「動く」をより実践

昨年と違い、緊急事態宣言下での開催となった今年。島田総一郎総合プロデューサーは7月14日に行われた制作発表会見で、「昨年の経験をしっかり生かして、今年はなお一層、出演者とスタッフの安全対策をやっていける準備を整えております」と説明し、ワクチン接種、検査体制、制作体制の管理を徹底することを強調。それを踏まえ、1年経ってコロナ対策のノウハウが蓄積されたことで、一部の企画で例年のような取り組みが戻ってきた。

例を挙げると、昨年は傑作選やリモート取材で構成した「日本列島ダーツの旅的 全国一億人インタビュー」では、新規撮影を実施。また、志村けんさんの物語をドラマとドキュメント映像素材を活用した「スペシャルヒューマンストーリー」として放送したが、ドラマスペシャル(『生徒が人生をやり直せる学校』)が復活した。全体を通して、一般の人をフィーチャーする企画も増え、昨年のテーマである「動く」を、より実践した格好だ。

■どのランナーも笑顔だった「募金リレー」

また、島田総合Pは「ご覧になった皆さんが、“我々の日常も変わるんじゃないか”、“明るい兆しが持てるんじゃないか”といった想いを感じていただけるような内容に」と方向性を示していたが、それを反映するかのように画面から伝わってきたのが“笑顔”だ。

メインパーソナリティーのKing & Princeは、いわゆる天然キャラが多く、制作発表会見からその魅力を存分に発揮。チャリティーパーソナリティーの菅野美穂も天真爛漫さで知られるだけに、本番では彼らの言動によって周囲が笑顔になる場面が多く見られた。

放送の中で特に印象に残る笑顔が見られたのが、恒例のチャリティーマラソンに代わって行われた通し企画「復興への想いをつなぐ募金リレー」だ。

従来の真夏の炎天下で100km前後の長距離を1人で走りきるという孤独な闘いから、基礎体力のあるアスリート経験者を中心に10人がチームとなって1人10kmをリレーするという構造に転換。当然、1人あたりの負担は少なく、どのランナーもリレーをつなぐ際に笑顔を見せる。ランナーにピンマイクを付けていたため、その時の楽しそうな声も聞こえてきた。

1人が困難な偉業を達成する過程を番組を通して見つめることで、その集大成が訪れるエンディングは毎年大きな盛り上がりを見せてきたが、みんなで楽しく力を合わせてゴールを目指すという形は、SNSでも概ね好評。“寄り添う”姿勢が好まれる今の時代にマッチしているようだ。昨今、真夏の屋外運動が危険と言われる中で、コロナ禍が明けたときに従来の1人100kmマラソンを復活させるという判断は、簡単にはできないという見方もあるが、来年はどうなるか。

■様々な角度から“復興”関連企画を放送

そして、今年は東日本大震災から10年ということで、“復興”の関連企画が強く打ち出された。「伝統を守る人々~福島 復興へかける想い~」「スッキリ 熊本復興にかける想い 高校生ダンス部 ひと夏の挑戦」「福島への“感謝の想い”渡辺・東野ペア第二の故郷へ」「震災から10年…羽生結弦 想いを込めたSPアイスショー」、そして、福島のJヴィレッジで行われた「復興への想いをつなぐ募金リレー」とラインナップした。

この最終ランナーは、東日本大震災発生時に『ザ!鉄腕!DASH!!』の「DASH村」ロケ中で、それから様々な形で福島の復興支援をしてきたTOKIO・城島茂。島田総合Pは、長年にわたり『鉄腕DASH』のプロデューサーを務めているだけに、“復興”への想いの強さが、今年の『24時間テレビ』からは随所で伝わってきた。

東日本大震災10年について、マイナビニュースの取材を受けた島田総合Pは「福島の皆さんは『DASH村に戻りたいね』とか『あの頃が懐かしいね』という話ではなく、『来年はこんな米作りがしたいね』とか『こういうのを育てたいならこうしたほうがいいよ』とか、未来に向かった話をしているんです。それは、亡くなった三瓶明雄さんもそうで、『こうしていったほうがいいぞ』『諦めたらダメだぞ』と、常に前を向く姿勢を教えてくれました」と話していた。

今年の『24時間テレビ』で“笑顔”があふれていたのは、そうした考えも背景にあったのかもしれない。