日本テレビ系ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(毎週水曜22:00~)の脚本を担当する根本ノンジ氏が、同作の魅力を語った。

  • 根本ノンジ氏=日本テレビ提供

モーニング連載中の人気漫画が原作の『ハコヅメ』は、通称“ハコヅメ”こと交番勤務に配属された新人警察官・川合(永野芽郁)が、“パワハラ”で飛ばされてきたという刑事課の元エース・藤(戸田恵梨香)とペアを組むことにより、徐々に絆を深め成長していくストーリー。原作の泰三子氏は元警察官で、交番勤務の警察官の実情がリアルに描かれている。

「漫画であれ小説であれ、原作があるからドラマ化なり映像化の話がある。必ず原作に敬意を払い、原作の世界観を大事にしています」という根本氏は、これまで『監察医 朝顔』『フルーツ宅配便』など原作のある作品を多く手掛けてきたが、そんな人気脚本家をして「今までで一番難しい」と言わしめるのがこの『ハコヅメ』だ。

「原作のコミックスがめちゃくちゃ人気なんですけど、初期のころは1話完結の“交番の日常”みたいな話が続くんです。それをドラマ化すると各話だいたい10分を切るくらいになってしまう。そうなると残りの40分はオリジナルのエピソードで作ることになって、漫画の世界観と変わってしまうことがある。もちろん面白くなる場合もあるし、そういうドラマもいっぱいあるけど、『ハコヅメ』に関しては面白いエピソードがたくさんあるので、いろんなエピソードを1つのストーリーとしてつなげた方がいいな、と。その上で、登場人物たちの気持ちの流れがきちんと起承転結できるように構成していく。だから話のつながりが難しかったりするんです」

ドラマの第1話で描かれた話題の“通常点検”のシーンも、原作では第6巻に登場する。「初めに書いたのはもっと長かったので、打ち合わせのときに、やっぱり長すぎるんじゃないか、ストーリーに関わるシーンじゃないのにそもそも必要なのか、と議論になりまして。原作でも6巻くらのエピソードなのに1話に入れることないじゃん、という意見もあった」そうだが、あえて第1話に組み込んだ理由とは…。

“通常点検”とは、警察官の規律を保つために、身に着けている装備品の状態や動作の確認などをする恒例行事。絶対に笑ってはいけない状況下で、主人公の藤や川合だけでなく、その場にいるみんなの“発してはいけない心の声”が飛び交う演出が笑いを誘った。

「それもまたドラマのセオリーとしてあり得ない、と議論になりました。みんなの“心の声”なんて、普通はあんまりやらないんですよ、主人公の目線で見ていくから。いきなり全員が、ってないんです。だけど面白いじゃないですか。こういうことをやろうとしてるんだな、とドラマの見方も分かってもらえる。だから絶対にやったほうがいい、と」

結果、無事に収録されたシーンは予想どおり大反響。「仕上がりを観たら超面白くて。藤が警笛を吹いたときのあの顔、あの目、素晴らしすぎましたよね。あれを1話でやったことによって、いつでも“心の声”ができるようになったので、よかったな、と」と手応えを感じ、登場人物たちの本音ダダ漏れの“心の声”は、第2話以降も『ハコヅメ』にとって欠かせないお楽しみ要素の1つとなっている。

さらにもう1つ、根本氏が「どうしてもやりたかった」と言うのが、あの第4話の“添い寝”シーンだ。

「原作にもあるんですけど、あんなの警察ドラマで見たことない。でもおそらく実際にこういうシーンがあったんだろうな、と。どうしても寝なきゃいけないから寝よう、って。一方の男たちはおじさん刑事に囲まれて寝る。あれもたぶん本当にある話なんだろうな。今までの警察ドラマではあんなシーンないですよ、前代未聞だと思います。こういうところが『ハコヅメ』。ああいう、なんともいえないリアルなものは必ず入れたいと思っています」

「僕は普通に生きている人たちの細やかな日常を描くことが好きなので、どんな原作でもそこは大事にしています。ごはんは何を食べるとか、どうやってお風呂に入るとか、日常の細やかなことでも事件は起こると思うので。だから食べ物のメニューも台本に細かく書き込んじゃう。“こういうのを食べる人って、こういう性格だよね”ってあるじゃないですか。ごはんの食べ方だけでもキャラクターが出るので。細かく書いちゃって嫌がられるんですけど(笑)」

そんな根本氏にとって『ハコヅメ』は、まさに自身が一番描きたいことと合致する作品だった。

「原作でも『警察官なんて、しょーもない普通の人間だよ』というセリフがあるんですけど、まさにそこ。今までの警察ドラマは刑事の推理がすごいとか、熱血とか、正義感が強いとか、わりとそういう描かれ方をしていたけど、『ハコヅメ』に出てくる警察官たちはすごく人間臭くて、普通の人なんですよ。文句も言うし、愚痴も言う。そこが魅力なんです。扱う事件も、普通の警察ドラマは殺人事件で人が死んで、誰が犯人で、と描いていくけど、そうことを全く描いてない。もっと身近な事件、誰にでも起こるような出来事、警察官はこんなこともしてるんだな、って。警察官を正義の味方として描くのではなく普通の人として、悩みながら事件にあたっている、解決するために頑張っている、そこを見てほしいですね」

W主演の戸田と永野、原作の世界観そのままの演技をみせる2人については、「原作があるので当て書ではないけど、お2人がよりリアルに、より魂を吹き込んでくれている。戸田さんの凛としてる顔と、優しい顔と、ちょっとキュートになるときの、あの感じが素晴らしくて。心奪われてしまいました。永野さんも、川合というキャラクターはちょっと失礼だし、急にタメ口聞いたりするし、やる気もなさそうだし、嫌われる要素があるんだけど、永野さんが演じることによってそれが全くない。また髪型がいいですよね、あれでもう川合そのもの。ほんとに感動します」と印象をコメント。

2人の演技で特に印象に残っているシーンは、「1話で川合が犯人を走って追いかけて、でも転んで追いつけなかったのを、藤が捕まえた。それが4話では、転んだ川合に藤が『立て!走れ!』って言う。あそこは好きですね。川合が一生懸命立ち上がるところ、1話から4話の間でちょっとだけ成長しているところとか」といい、「でも5話以降、さらにいいシーンが出てきちゃう…」と予告した。

第4話で、川合は似顔絵が評価され、正式に似顔絵捜査官としての研修を受けることに。物語はここから新たな展開をみせる。

「5話からは川合が似顔絵捜査官として開花して、“これから成長していくぞ”っていう、第2章と言っても過言ではない。面白いシーンが山盛り。川合と藤の合コンがあり、さらに川合は恋に落ちる。これは面白いです。真面目な事件も取り扱いながら、5話は楽しい回。それ以降も原作で人気のエピソード、僕が好きなエピソードをどんどん使っていくので、楽しみにしていてください」