ニュースや新聞などでよく使われる「輩出」という言葉。
「人材を輩出する」などといったフレーズを聞いたことがある人は多いと思いますが、誤用している人は決して少なくありません。
今回は、輩出の正しい意味や使い方を例文つきでくわしく解説。また、誤用を避けるためのポイントや排出との違い、類語などに関してもあわせて紹介します。
輩出とはどんな言葉?
輩出とは、すぐれた人物を次々と送り出すことを意味する言葉です。
学校や団体などから傑出した人物が続いて世に出ている状態を表す単語で、主に企業や大学の実績を示す資料や、ニュース・新聞などのメディアにおいて使用されています。
■現在は自動詞としても他動詞としても使われている
輩出とは本来「五輪選手が輩出した団体」のように、自動詞として使われていた言葉でした。
しかし現在は「有名選手を輩出した大学」のように他動詞として使われることが多くなっており、辞書にも他動詞として使う例文が掲載されています。
新聞などでも他動詞として使用されている例が頻繁に見受けられるので、現代では広く浸透している用法であることを覚えておきましょう。
輩出の使い方と例文
優秀な人材が次から次に世に出ることを表す輩出という単語。
団体や企業などが過去の功績を紹介する時や、自社や自分の取り組みによって傑出した人物が世に出たことを伝えたい時などに使われ、ビジネスシーンはもちろん日常生活でも見聞きする機会が多い言葉です。
ここからは輩出を使った例文をいくつか紹介しますので、具体的な使用シーンや用法を確認しておきましょう。
■例文
あの大学は、有名な政治家や官僚を何人も輩出した名門校である
当校はこれまでに多くの芸術家を輩出した実績を誇っています
オリンピックにも出ている花形選手たちが輩出したスクールで学んでみたい
優秀な人材を輩出している○○社の教育制度は業界で注目されている
輩出の誤用を避けるためのポイント
企業や学校のホームページだけでなく、テレビのニュースや新聞などでもよく使われ、日常生活でよく見聞きする言葉ですが、誤用してしまっている人は決して少なくありません。
ここからは使用する上での注意点を紹介しますので、正しく使うためのポイントを理解しておきましょう。
■ 1人や少数人に対しては使わない
輩出は次々と優秀な人材が世に出ることを表しており、1人や少数人に対して使う言葉ではありません。
したがって、特定の人をさして「○○さんを輩出した学校」などというのは間違いとなります。
この場合は「○○(団体や学校名)出身」などと言い換える必要がありますので、覚えておくようにしましょう。
■排出との混同に注意する
輩出と同じ読みをする言葉に排出がありますが、それぞれの言葉の意味は大きく異なっています。
排出は内部にある不要なものを外に押し出したり、生物が有害な物質を体外に排除したりすることをさす言葉です。
したがって、輩出とすべきところで排出を使ってしまうと不自然な表現となってしまいます。特に文章を記載したりメールの本文で使用したりする場合は誤用に注意する必要があるでしょう。
ここからは排出を使った例文をいくつか紹介します。輩出との使用シーンや用法の違いを確認しておいてください。
■例文
ストレッチやヨガなどで体をほぐすと、血行が良くなり体内の老廃物が排出されやすくなる
地球温暖化対策として、温室効果ガスの排出を可能な限り減少させることが求められている
貯水池にたまった土砂をダム下流へ排出させることを排砂という
輩出の類語
言葉の意味をより深く理解したり使い方のポイントを把握したりするには、類語を知ることが効果的です。
輩出にも似た類語がいくつかあるので、それぞれの意味や輩出との違いを確認しておきましょう。
■世に出る / 世に出す
「世に出る」は「世の中に出る」という意味で、学校や団体などで育った人物を社会に出ることをさす言葉です。
たとえば、「あの高校から文学賞受賞者が世に出た」「あの劇団は有名な女優や俳優を世に出した」といったような使い方をし、輩出の言い換え表現としてそのまま使用できるシーンも多いでしょう。
ただし、「世に出る / 世に出す」には輩出のように「次々と送り出す」というニュアンスがないため、たった1人に対しても使える点が輩出とは異なっています。
したがって、特定の誰かを送り出したことなどを表現したい場合は、輩出ではなく「世に出る / 世に出す」を使う必要があることを覚えておきましょう。
■巣立つ / 巣立たせる
「成長して巣から飛び立つ」という意味の「巣立つ」という言葉。「世に出る」とほぼ同じ使い方ができ、輩出と言い換えられる場面も多いです。
たとえば、「あの映画スタジオから巣立った助監督の多くが、名監督として成功している」というような使い方ができます。
「巣立つ / 巣立たせる」も「世に出る / 世に出す」と同じく特定の1人に対しても使用できる言葉のため、文脈や会話の流れによっては置き換えられない場合があることに注意しましょう。
輩出の英語表現
次に、輩出の英語表現を紹介します。
輩出は、「生じさせる」とか「産出する」などといった意味を持つ「produce」や、「外に出す」という意味の「turn out」、「世に送る」を意味する「throw up」などを使って表すことができます。
なお、基本的に学校や養成所が芸術家・選手などを輩出する場合は「turn out」、国が有名人・指導者などを輩出する場合は「throw up」を使用します。
ここからはそれぞれの表現を使った例文を紹介しますので、具体的な用法を確認しておきましょう。
■例文
This university has produced a lot of well-known politicians and lawyers since its founding
(この大学は、創立以来有名な政治家や弁護士を多く輩出している)Italy has thrown up some brilliant opera singers into the world
(イタリアは素晴らしいオペラ歌手を数多く世界に輩出している)I’m going to apply to the academy that has turned out a great number of marvelous artists next year
(私は素晴らしいアーティストをたくさん輩出した学校に来年出願するつもりです)
正確な意味と使い方を理解して誤用を避けよう
輩出とは「すぐれた人物を次々と送り出すこと」という意味で、基本的には自動詞としても他動詞としても使える言葉です。
団体や企業などが過去の功績を紹介するシーンなどでよく使用されますが、特定の1人や少数人を世に送り出すことを意味する場合は使えないので、覚えておくようにしましょう。
また、よく混同しやすい言葉に読み方が同じ「排出」がありますが、意味はまったく違います。
輩出を使った例文や類語・英語表現などもあわせて確認しておき、どんな場面でも自信を持って使えるようになりましょう。