「椿事」は「ちんじ」と読みます。同音語の「珍事」と混同しやすいですが、それぞれ意味が異なるので注意が必要です。

本記事では「椿事」の意味や語源、「珍事」との違いについて解説します。また、由来や例文、類語も紹介するので、正しい理解を深めて使いこなせるようになりましょう。

  • 椿事の意味

    「椿事」の意味や語源、類語などを紹介します

椿事(ちんじ)の意味

「椿事(ちんじ)」は「思いがけなく起こった重大な出来事」を意味する言葉です。

「椿事」と「珍事」の違い

同じ読み方をする「椿事」と「珍事」は混同しやすいので、意味の違いを確認しておきましょう。

  • 珍事:珍しい出来事や困り事
  • 椿事:思いがけない重大な出来事

「珍事」は単に珍しい出来事を指しますが、「椿事」は「思いがけない重大な出来事」を指します。また、「珍」という字には「変わっている」や「異様」という意味があるため、「椿事」に比べると面白おかしいニュアンスで使われることが多いです。

「珍事」に「椿事」の意味合いを含めて使われるケースもありますが、それぞれの意味は明確に異なるため、正しく使い分けられるようにしましょう。

椿事の由来

「椿事」の由来には諸説あります。

ひとつは、「出来事」と言う意味がある「樁事(とうじ)」(「椿」の「日」が「臼」)が由来という説です。「樁」という漢字が一般的でないので「椿」と誤記され、それが一般化したとされています。

また、荘子(そうし)に登場する伝説の大木「大椿(だいちん)」の花が滅多に咲かないところからきているという説などもあります。

「椿事件」と「珍事件」は意味が異なる

1993年に起きたテレビ局の放送法違反が疑われた事件に「椿事件(つばきじけん)」があります。「ちんじけん」とは読まないので注意しましょう。

一方、「珍事件(ちんじけん)」は、普通では考えられないような事件や、滅多に起こらない事件のことを指します。

「椿事件」と「珍事件」は意味だけではなく読み方も違うので、混同しないように気をつけましょう。

  • 椿事の意味

    「椿事」と「珍事」の違いを覚えて、適切に使いわけられるようにしましょう

椿事の使い方と例文

「椿事」には「思いがけない重大な出来事」という意味があるため、単に珍しい出来事に対しては使いません。いくつか例文を紹介するので、正しい使い方を確認していきましょう。

・大臣が逮捕されるとは、政局を揺るがす椿事だ

「大臣の逮捕」は、政局を揺るがすほどの重大な出来事なので「珍事」ではなく「椿事」を使います。「大臣が寝坊をして議会が進行しなかった」というケースでは「珍事」の方が適しているでしょう。

・それはまさに、学校創立以来の椿事だった

「椿事」が使われているので、「思いがけない重大な出来事があった」ということがわかります。「珍事」を使うと「学校創立以来の珍しい出来事が起きた」という意味合いになってしまうので、漢字の使い分けには注意しましょう。

椿事の類語

「椿事」の類語を紹介します。

一大事(いちだいじ)

一大事(いちだいじ)には、「重大な出来事」や「容易ならぬ出来事」という意味があります。

・会社の業績を左右しかねない一大事だ

上記は会社の業績を左右しかねない「重大な出来事」や「容易ならぬ出来事」が起きたときの例文です。「椿事」の類語である「一大事」を用いることで事の重大さが明確になります。

変事(へんじ)

変事(へんじ)には「変わった出来事」という意味だけではなく、「思いがけない事件」という意味もあるので「椿事」の類語として使えます。

・こんな変事が起こるなんて信じられない

上記はあまりにも思いがけない出来事が起きたときに使える例文です。「変事」は日常会話の中で使う言葉ではありませんが、語彙力を高めるためにも覚えておきましょう。

  • 椿事の類語

    椿事の類語には「一大事」や「変事」などがあります

椿事の対義語

「椿事」の対義語には何があるのか、チェックしておきましょう。

日常茶飯事(にちじょうさはんじ)

日常茶飯事(にちじょうさはんじ)は「日々のありふれたこと」や「いつものことで取り上げるまでもないこと」を意味する言葉です。「椿事」の「思いがけない出来事」という意味の対義語として使えます。

そんな出来事は日常茶飯事だ

例文のように、何かが起きてもそれがとくに珍しくもない出来事である場合に、よく使われる表現です。

月並み(つきなみ)

月並み(つきなみ)は「新鮮みがなく、ありふれていること」という意味がある言葉です。「思いがけない出来事」という意味とは真逆になるので「椿事」の対義語といえます。

・どの話も月並みだ

「話」や「出来事」に対して「月並み」を使うと、「たいして面白くない」という否定的な意味合いになります。相手や場面を考慮し、用いるようにしましょう。

並大抵(なみたいてい)

並大抵(なみたいてい)は「普通に考えられる程度であること」という意味の言葉です。一般的には、下記の例文のように打消しの語を伴って使用します。

・このプロジェクトにかける彼の情熱は並大抵ではない

  • 椿事の対義語

    「椿事」の対義語には「日常茶飯事」や「月並み」などがあります

「椿事」と「珍事」の使い分けをマスターしよう!

「椿事(ちんじ)」の意味や例文、類語などについて紹介しました。「椿事」は「思いがけなく起こった重大な出来事」という意味の言葉です。同じ読みの単に珍しい出来事を表す「珍事」と混同しないように注意して使い分けましょう。